ターンオーバーの中での快勝と相手の隙を突くしたたかさ【2019年天皇杯3回戦栃木SC戦マッチレビュー】

2019年天皇杯3回戦、鹿島アントラーズVS栃木SC。マッチレビュー。

試合結果

4-0

【得点】

37分 小田 逸稀

45分+2 伊藤 翔

55分 レアンドロ

88分 有馬 幸太郎

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スタメン

鹿島のスターティングメンバーは以下の通り。

GK 曽ヶ端準

DF 伊東幸敏 チョン・スンヒョン 町田浩樹 小田逸稀

MF 永木亮太 レオ・シルバ レアンドロ 山口一真

FW 遠藤康 伊藤翔

ハイライト

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見どころ

このゲームの見どころは、ターンオーバーをする中でもきっちり勝利を掴めるかということ。

復帰戦となる伊東、久々の出場となる小田や山口、レオなど、やや不安要素が多い中でのゲームとなる。内容まで求めるというよりは結果さえ出せればOKというゲームだろう。

この試合でターンオーバーの判断をした大岩監督の判断は支持したい。今年のプライオリティはJリーグに置くべきだ。

とはいえ、この天皇杯も獲得したいタイトル。一戦必勝で臨みたい。

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試合レビュー

ポジション

▼鹿島を赤紺、栃木を白で表現

鹿島は遠藤をトップ下に入れる4-2-3-1のようなポジションを取った。

守備時は5-2-3となる栃木

栃木は攻撃時に3-4-3となるが、守備時はWBが下がって5-2-3のような形になる。

この配置でポイントを握るのは、以下の2点だ。

  • 相手のボランチの脇
  • 鹿島のSB

相手の5-2-3に対し、鹿島が4-4-2のポジションのまま配置を取ると、上手く守られてしまう。

「5名のDFで鹿島のFWとSHを、2枚のボランチで鹿島のボランチを、3枚のFWで鹿島のDFを見る」という具合だ。

そこで鹿島としては、相手ボランチの脇に空くスペースを、ボランチ以外の選手が上手く使いたい。加えて鹿島のSBが高い位置を取る事で、「相手のFWでは鹿島のSBを見きれない」という状況にしたい。

相手の基本配置をズラして動かしていく中で、配置のズレや連動のズレを狙っていくのがセオリーだ。

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ファウルに表れる力量の差

栃木は序盤、5-2-3の配置から上手く守れているように見えたが、両者の実力差はファウルとなって表れた。

栃木は”配置としては”上手く守れていた。鹿島の選手に対してタイトに、厳しくマークに付いた。

普通であれば「奪いきれる」あるいは「相手がミスをしてくれる」という距離感でタイトな守備を繰り返すが、鹿島の選手はそれぞれの選手が身体を入れるのが上手く、ミスをしてくれない。

そうなると栃木の選手は少し無理をしてボールを奪いに行った。それがすべてファウルとなって表れた。

今回のスタメンは鹿島にとってベストメンバーではないとはいえ、J1レベルで充分に戦える選手たちが揃っている。栃木としては「ハメられそう」と手応えのあるプレッシャーも、鹿島にとってはまだ甘いと感じたに違いない。

それはそうだ、彼らは日頃から三竿・永木・レオと練習しているのだから。並大抵のプレッシャーで焦るような事は無いだろう。

遠藤・レアンドロが突いたボランチの脇

前述の通り、前半は5-2-3から栃木に”配置的には”上手く守られる展開から始まった(その多くがファウルだったものの)。

しかし徐々に鹿島はペースを掴み始める。キーパーソンは遠藤康。

遠藤康が相手の”5枚”と勝負するのではなく、1列下りて”2枚”(ボランチ)の近辺に位置を取り始めた。

すると栃木は遠藤をフリーにするわけにはいかないので、ボランチを動かされる。栃木のボランチが動かされるならば、鹿島のボランチは自由度が増す。そのようなカラクリだ。

いつも土居がやってくれてる動きに近い動きを、遠藤が相手の隙を突いて実行してくれた。

また右サイドに入ったレアンドロも、(おそらく彼は本能的に)中央にポジションを移しながら攻撃にアクセントをつけた。

5枚で守る相手DFと勝負するより、中央の2枚のボランチの近辺の方がスペースがあると判断したのだろう。しかも中央に行けば、レアンドロの好きなワンツーを使ったコンビネーションが効果を発揮する。

1点目のきっかけになった曽ヶ端の素晴らしいフィードを受けたレアンドロのプレーが、このスペース使う事の意味を証明してくれただろう。

遠藤とレアンドロが、相手の配置を見て中央を攻めようと試みたのは、鹿島にとってかなりポジティブな効果をもたらした。

「自分たちのサッカー」ではなく、相手の隙を突くしたたかさを見せられたのは、素晴らしい事だった。

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先制点の布石

鹿島は小田の”シュータリング”から先制点を上げた。

この先制点の布石となるプレーは2つあった。

1つ目は永木が蹴ったFK。右サイドから、相手GKとDFの間に速いボールを入れたシーン。2つ目は山口が左サイドから縦に突破して左足でクロスを上げて、ゴール方向に飛んでいったシーン。

いずれも相手GK川田の動きは不安定で、「DFラインとGKの間にボールを入れれば事故が起こりそう」という予感を、鹿島の選手は感じたに違いない。

そこに小田のシュータリングである。勿論ゴールを狙ったキックではいないと思うが、”相手GKの不安定さ”を狙っていた事は間違いないのではないのだろうか。それさえあれば私としては充分だ。

サッカーの攻撃は、100点満点を目指すものではない。相手に隙があるならば、どんどん狙っていくべきだ。その精神が小田にあった事は褒められるべきだろう。

伊藤翔のゴラッソ

この試合を決めたのは前半終了間際の伊藤翔のゴラッソだった。

伊藤翔は土曜のゲームも出場していたので、フィジカル的にはキツいものがあっただろうと思う。

それでも、たったワンチャンスをきっちり決めるあたり、さすがストライカーだ。

ゴールも素晴らしいゴラッソ。

怪我人の復帰

このゲームは、伊東幸敏、内田篤人の復帰も嬉しいニュースだった。

伊東幸敏は無事にプレー出来ただけで、親心としては非常に嬉しかった。

しかし小泉が鹿島デビュー戦で及第点の活躍を見せた中で、一定水準以上のプレーをしていかないとポジションを奪えないだろう。この栃木戦のパフォーマンスではまだ足りないと思う。

まだ彼の本調子の運動量ではないように見えた。

貴重なSBの戦力として、これからのパフォーマンスの向上に期待したい。

また、内田篤人の復帰もかなりポジティブなニュースだ。FC東京とのシックスポインターやACLなどの大舞台に照準を合わせてもらいたい。彼の復帰は百人力だ。

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有馬のデビュー戦ゴール

このゲームは有馬幸太郎のプロデビュー戦となった。デビューだけでなく、積極性を全面に押し出したプロデビュー弾まで決めてみせた。

忘れてはならないのは、このゲームでは伊藤翔などの先輩たちが「有馬の出番を作ってくれた」というようなゲーム展開にしてくれたという事だ。

悪い試合運びだったなら、起用されたのは有馬ではなくセルジーニョだったはずだ。

有馬にとってここは出発点。次は自分の力でスタメンを勝ち取り、鹿島を勝利に導くゴールを決めてほしい。

MVP

小田逸稀!先制点、2点目のアシストなど、結果を残した事と無失点に貢献した事は無視できないだろう。

小田にとっての転機となるゲームになる事を願っている。

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