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バージョンアップへのチャレンジを怠らない大岩監督と鹿島アントラーズ

鹿島アントラーズが8/17のアウェイ大分トリニータ戦を制し、いよいよ首位まで勝点4差まで迫った。このタイミングで必ず書いておきたいテーマがある。それは2019年の鹿島アントラーズの「バージョンアップ」についてだ。

Ver.1の鹿島

まずは今シーズン開幕当初のVer.1の鹿島について。

鹿島のVer.1は以下のようなチームがベースだった。

Ver.1の鹿島の特徴は以下。

  • 伊藤翔が好調でゴールを連発
  • 背番号10の安部と左SB安西のコンビネーションで左サイドからの突破を武器とする
  • 右サイドは内田がコントロールして締める
  • 中央からの攻撃はレオの単騎特攻が中心。それを永木がカバー

ここをベースに、調子次第でレアンドロが右サイドに入ったり、土居がトップに入ったり、というイメージだ。

このVer.1をベースに、鹿島は開幕~第8節の仙台戦くらいまでを戦った。リーグ戦では8戦で4勝2敗2分。平均勝点1.75。

Ver.1は左サイド(主に安西の突破)からの攻勢を武器に”それなり”の成績でシーズンを進められたものの、改良の必要性を迫られた。それは内田篤人の離脱によって迫られる事になる。

Ver.1の鹿島の右サイドは、内田の守備力によって支えられていた。特にレアンドロ起用時の右サイドは、内田でないと耐えられない構造になっており、内田の離脱と共に鹿島の右サイドの守備は弱点となってしまった。

右SBには小田・平戸などが起用されたが、弱点を克服するまでには至らなかった。

”左サイドの強み”と”右サイドの弱み”が非常にアンバランスな形で、攻撃は左偏重、守備は右から攻められるというゲーム展開がデジャブのように続いた。

それでもVer.1の鹿島が”それなり”の成績で乗り切れたのは、伊藤翔の好調さと安西の突破力、スンテのセービングの影響が大きかった。

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Ver.2の鹿島

Ver.1からの改良を迫られた鹿島は、Ver.2へのメジャーアップデートを完遂する。

鹿島のVer.2は以下のようなチームがベースだった。

  • 不安定だった右SBに永木を起用してサイドの守備力増強
  • 永木が務めていたボランチには三竿が復帰
  • 白崎凌兵が鹿島デビューを果たし、左サイドのファーストチョイスに
  • FWには土居・セルジーニョの2TOP(0TOP)体制
  • 右SHにはレアンドロを起用

Ver.2への転機は第10節のホーム清水エスパルス戦だ。今シーズンの鹿島のターニングポイントとなるゲームだった。

正確には第9節のマリノス戦が「転機のきっかけ」だった。マリノス戦で鹿島は敗戦したものの、大岩監督はマリノス戦で「永木のSB起用、三竿と白崎の先発起用」というチャレンジをした。

そのチャレンジに「土居とセルジーニョの2TOP」という形を付け加えたのが第10節のエスパルス戦だ。ここで鹿島はこれまでの10試合の中で、内容・結果ともに1番のゲームを見せた。

左サイドは白崎の献身性と技術で安定感が更に増し、懸念の右サイドの守備は永木が力強い守備で蓋をした。

永木が安定した守備を見せることで、レアンドロの能力も解放されていく。右サイドでボールを持てばセルジーニョ・レオとのブラジルトリオでコンビネーションを見せた。

怪我から復帰した三竿健斗はピッチの中で唯一無二のリーダーシップと守備力を発揮した。

そしてこのバージョンで、何より大きな変化を与えたのは土居とセルジーニョの2トップだった。土居は2列目や3列目まで下がってゲームメイク・チャンスメイクを繰り返し、左サイドの白崎や安西とは絶妙なコンビネーションを見せた。

ハーフスペースやボランチ脇、3バックの両脇など、相手のフォーメーションの”隙を突く”動きを土居が繰り返す事で、相手を引きつけ、他の選手の自由度が増し、チームの攻撃力が飛躍的に向上した。

Ver.2(清水戦以降)は7勝2敗3分で勝点24。平均勝点は2。Ver.1より明らかに安定した戦いを見せた。Ver.2は、勝点を積み重ねただけではなく、得点数も飛躍的に向上した。

現在鹿島が得失点差でJリーグ1位なのは、間違いなくVer.2以降の攻撃力の向上によって生まれたものだ。

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Ver.2.1の鹿島

鹿島は最新のVer.2.1へのアップデートをした。「夏の移籍以降」のマイナーアップデートだ。

そのベースとなりそうなのがこちら。

  • CBにブエノを起用して広範囲を守る
  • 右SBに小泉慶を起用して対人守備を増強
  • 三竿の相方に名古を起用
  • FWに伊藤翔、セルジーニョをSH起用して上田綺世を使いやすい状況に
  • 安西がいなくなった左SBに小池を起用

こちらは第22節の横浜Fマリノス戦で採用されたメンバーがベースとなりそうだ。このアップデートをメジャーアップデートではなくマイナーアップデートと表現したのは、あくまで「ベースはVer2のまま」だからである。

スンテ・犬飼・三竿・白崎・セルジーニョ・土居といったベースとなる選手はそのままに、あとはコンディションによって起用する選手を変更しているに過ぎないのがVer2.1だ。

今は伊藤翔を起用しているが、今後はセルジーニョをトップに戻してレアンドロを起用したり、あるいは上田綺世をスタメン起用することもあるだろう。

しかし、この変化を「アップデート」と断言出来る大きなポイントはブエノの起用にある。ブエノだけは「コンディションの問題」で起用しているわけではないと私は見ている。

ずばり、FC東京とのシックスポインターを勝つためのブエノ起用だ。

9月に迫る首位FC東京とのシックスポインター。そこでフィジカルとスピードに長けたFC東京のディエゴ・オリヴェイラを抑える役割をブエノに期待しているはずだ。その仕事は、チーム1のスピードとフィジカルを備えるブエノが適任だ。

大岩監督の頭の中には、2トップの身体的能力を前に完敗してしまった前半戦のFC東京戦が念頭にあるはずだ。

FC東京を超える。それが鹿島のVer2.1へのアップデートの正体だと私は見ている。

加えてフィジカルに優れた小泉の起用も、身体的に苦しくなる夏場に「無理がきく」選手を守備ラインに並べる事で苦しい展開も耐えられるようにする狙いがあるだろう。

また、Ver2.1は「土居とセルジーニョを共存させつつ上田綺世を起用していく」という狙いも持っているはずだ。2019年の大岩アントラーズには欠かせない土居とセルジーニョを同時起用しながら、上田綺世の力もチームに加えていく意味で、セルジーニョのSH起用は現状の最適解と言える。

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大岩監督の変化に挑戦する姿勢

私は今年の鹿島のバージョンアップへの姿勢を非常に好意的に受け止めている。この姿勢こそが、大岩監督の昨年からの大きな変化であり、進化と言える。

サッカーというスポーツでは、選手のコンディションも変われば相手も変わる。そして相手が施す対策も変わっていく。

”同じメンバーで、同じ戦い方で”勝っていけるほど、今のサッカーは甘くはない。

勝ち続けるためには変化を繰り返す必要があり、その変化を恐れない姿勢こそが進化への布石となる。

変化をしていく上では、失敗することも勿論ある。今シーズンの試合で言えば、第9節のアウェイ横浜Fマリノス戦は、敗北を喫したものの「進化への布石」として必要な試合だった事が分かる。

このマリノス戦でチャレンジをしなければ、その後の勝点の積み上げには繋がらなかったはずだ。大岩監督が長期政権を築くならば尚更のこと、現状を疑い、変化を恐れない素質は必須となる。

健全な競争原理

鹿島が今シーズン行う”変化”が示す意味は、「誰もスタメンを確約された選手はいない」という事だ。

昨シーズンのアジア制覇に貢献したレオや永木、スンヒョンでさえ「常に1stチョイスではない」という状況だ。

今の所、土居・セルジーニョ・三竿・犬飼・スンテの5名はチームに欠かせない印象ではあるものの、彼らもパフォーマンスや対戦相手次第では1stチョイスから外れる事は考えられるだろう。彼らを大岩監督が好んでいるのは、彼らが良いパフォーマンスを継続しているからに過ぎない。

一方、2019年新加入の白崎や名古、レンタルで加入してきた相馬にも等しくチャンスは与えられている。

チームを勝利に導くために献身的にプレーする選手には、正しくチャンスを与えているのが今の鹿島アントラーズだ。

この競争原理をシーズン終了まで働かせ、常に進化へのチャレンジを試みるチームであってほしい。

 

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