ザーゴの戦術とは、どのようなものなのか?~プロトタイプ編~

ザーゴ新監督の初陣が終わった。今回はザーゴ監督の戦術にスポットを当て、動画とテキストで説明したいと思う。動画で詳しく喋っているため、テキストは補助的役割として読んでいただけると幸いだ。

動画

ザーゴの戦術~プロトタイプ編~について話した動画はこちら。

局面ごとに特徴を抽出

ここから先は動画と内容が重複するので動画を見ていただいた方は読まなくてOK。

まず、メジャーなフレームワークを使って、私が捉えたザーゴの鹿島の特徴を伝えたい。

フレームワークとはサッカーの局面を「攻撃・守備・攻撃から守備・守備から攻撃」の4局面に分ける事。それぞれの局面でのチームの特徴を書いていく。この辺の詳しい解説については『モダンサッカーの教科書 イタリア新世代コーチが教える未来のサッカー』という本に詳しく書かれているので、是非読んでみてください。

ちなみにこの文章は「たった1試合」を元に書いているため、あくまでプロトタイプだ。まだザーゴが落とし込めていない部分もあるだろうし、選手が掴めていない部分もあるだろう。なので、このブログでは今後も「ザーゴの戦術シリーズ」としてアップデートを重ねていきたい。

攻撃

まずは攻撃。攻撃は更に2つの局面に分ける。ビルドアップとチャンス構築。

ビルドアップ

ザーゴの鹿島は、ボールが低い位置では三竿を頂点として両CB、GKの4名でボールを前進させていくように見えた。ただ、メルボルンは撤退して守備をする事を選択したため、局面としては非常に少なく、まだディテールは分かりかねる部分でもある。

ボールをある程度前進させると、今度は三竿がCB間に降りて(サリーダ・ラボルピアーナ)、CBはワイドに広がる。その3名がレオを頂点とした菱形を形成する。

おそらくこのような形で相手の2FW、あるいは3FWといった第一ラインを突破していくのがザーゴのビルドアップのスタイルのようだ。

なお、この時には3-3-2-2のような形になる事が特徴的だ。

3(両CBとアンカー)-3(両SBとボランチ)-2(オフェンシブハーフ)-2(FW)だ。

また縦パスを入れるタイミングと選手についても注目すると、CBやSBが鍵を握りそうだ。

メルボルン戦では永戸から斜めのパスが何本も出ており、ビルドアップからチャンス構築へのきっかけになっていた。

相手がSBへのプレスを強めた時はCBが縦パスを入れる役割を担わなければならない。恐らくシーズン中はSBへのプレスは厳しくなる。CBから楔のパスや対角線へのフィードを出せるようになる事が重要だろう。

また、メルボルン戦では見られなかったが、菱形の頂点になるレオの役割も本来は重要だ。もっとビルドアップの段階でボールを受けて相手を動かす役割を担わなければならない。

チャンス構築

チャンス構築においては、まだ明確には断言出来ない事が多い。

しかし、両SBがアウトサイドのレーンに位置取り、残りの攻撃陣4枚とレオで中央を崩す、あるいはサイドチェンジしてSBがクロスに持っていくという場面が多そうだ。

いずれにしても重要な役割を担うのはSB。スライドして守る相手に対して瞬間的にフリーになれるシーンの多いSBは、「きっちり走れているか」「クロスの精度は高いか」などの基本的な要素が問われる事になる。クロスの本数が増えても精度が伴わなければ得点は生まれない。同時に、エヴェラウドや伊藤翔・綺世のゴール前での強さも重要なポイントになりそうだ。

おそらくメルボルン戦で先発した永戸と広瀬のプレーは、及第点を超えるものだったのではないかと想像する。

ネガティブトランジション

ネガティブトランジション(攻撃から守備)は、リトリートするのか、すぐに奪い返そうとするのか、という特徴に分けられる。ザーゴの鹿島は後者を目指しているように見えた。

即時奪回

ネガティブトランジションはザーゴの特徴が見られた。

それを最も体現していたのはアラーノ。

自身や周りの選手がボールを失った時のリアクションの速さは一級品で、彼のネガティブトランジションのレベルが今年の鹿島のサッカーのベースになるだろう。いや、そうならないと今年の鹿島は圧倒的な強さを発揮できない。

アラーノだけでなく即時奪回の意識は昨年よりも高まっているように見えた。

レオや永木といった選手は得意なタイプのプレーを解放されると思うので、彼らのボール奪取からのショートカウンターを見たい所だ。

守備

守備の場面は前線からのプレッシングと、撤退守備(引いて守る)の2つに分けたい。

プレッシング

まずはプレッシング。ここもザーゴの特徴と言えそうなポイントだ。

どのエリアからプレスをかけるのかを注視したが、どうやらザーゴの鹿島は相手がピッチの4分の1(相手陣地の半分)を進んだくらいからプレッシングをかけるチームのようだった。

これまでの鹿島と比較するとかなり高いプレッシングの高さの設定であり、それに伴いDFラインも高い位置を取っていた。アグレッシブなチームといえる。

気をつけなければいけないポイントもある。高い位置から強度の高いプレスをかけても、相手GKに下げてロングボールを蹴っ飛ばすという最終手段は相手に残されている。つまり、鹿島のCBは高さや強さを問われるという事だ。ブエノや奈良に活躍してほしいポイントだ。CBが相手FWに対人で負けるようであれば、ザーゴの鹿島はおそらく機能しない。

ネガティブトランジションでの即時奪回と高い位置からのプレッシング。この2つが昨年までとの明確なモデルチェンジとなりそうだ。

撤退守備

撤退守備の場面は少なかった。

しかし、数少ないシーンを見る中で、撤退守備(ブロックを作っての守備)については昨シーズンと変わっていないようにも見えた。

ゾーンで守りつつ、人には付いていく。

この辺りはまだ落とし込めていないのか、そのまま行くのか、判然としないので見守っていきたいポイントでもある。

ただし、昨年から何度も使われているCBを釣りだされた裏のケアについては着手してほしい所だ。

ポジティブトランジション

ポジティブトランジションとは守備から攻撃。

ここでは主に、「自陣でボールを奪った場合」の局面を想像してもらいたい。ミドルトランジションやロングトランジションと呼ばれる場面だ。相手陣地で奪った時は恐らく殆どのチームが相手ゴールに襲いかかる。ザーゴのチームも同じだろう。

自陣でボールを奪った場合

自陣でボールを奪った時に、ボールを一旦保持しようとするのか、すぐに縦に攻めようとするのか、に分類できる。

ザーゴは恐らく後者を志向しているようで、「ポゼッションを高める」というよりは「ダイレクトに相手ゴールに近い選手を見ている」という印象を受けた。

まだこの辺りは選手の判断で咄嗟にやっている所もあるだろうし、断言することは難しいが、ダイレクトなプレーを目指しているようには感じられた。

ダイレクトなプレーを選択するという事は、CFの強さや中盤の走力には注目したい。今年の鹿島はFWのポストプレーや中盤のセカンドボールの回収力が重要視されるチームになるかもしれない。

あくまでプロトタイプ

繰り返すが、この文章や動画は1試合だけから推測した、あくまでプロトタイプのものだと思ってほしい。

間違っている所もあるかもしれないし、合っている所もあるかもしれない。ザーゴの意図はまだチームには浸透していないかもしれない。シーズンが始まった後、「ザーゴの戦術」シリーズを少しずつアップデートしていきたいと思う。

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