鹿島がリーグタイトルを取れなかった理由と、2020年に行われるスタイルの先鋭化

『フットボール戦術批評』の3月号別冊に、非常に興味深い記事が記載されていた。西部謙司さんが書かれた「レアル・マドリーが戦術のイノベーターにならない理由」という記事だ。

今回は、その記事を見てインスパイアされたコラムを書いてみたい。

フットボール戦術批評

その『フットボール戦術批評』の3月号別冊はこちら↓

鹿島アントラーズがスタイルを先鋭化させなかった事

西部謙司さんが書いた「レアル・マドリーが戦術のイノベーターにならない理由」を読んで、鹿島がプレースタイルを先鋭化させなかった事について思いを巡らせた。そこには、レアル・マドリーと鹿島の類似性を少しだけ感じる事が出来た。

キーワードは「全方位型」。

一発勝負でのレアルの強さは、その全方位型の体質による。

西部さんのこの言葉にハッとした。レアル・マドリーはプレースタイルを先鋭化させる事は無く、全方位型の体質であるがゆえに一発勝負で強い。

これは近年の鹿島にも当てはまる事だと感じた。

一発勝負では結果を残せるものの、スタイルが先鋭化されていないぶんリーグ戦では不安定な戦いを露呈する。事実、近年はスタイルを先鋭化させたクラブがリーグタイトルを取る中、鹿島はカップ戦のタイトルを取るだけに留まった。

鹿島がリーグ戦優勝出来なかった理由

では改めて、鹿島アントラーズはなぜリーグ戦では優勝できなかったのか。

私が持った仮説は次のキーワードに纏められる。

  1. スタイルを先鋭化しないが故に変数が多い
  2. 微修正ではなく大幅な修正

1.スタイルを先鋭化しないが故に変数が多い

これは良い事でもあり、リーグ戦に勝てなかった理由でもあるかもしれない。

近年の鹿島は自分たちの出来や不出来の要因を、プレースタイルに求める事のないチームだった。一方で川崎フロンターレ(特に風間体制時)や横浜F・マリノス(ポステコグルー体制)は、自分たちのプレースタイルを主語に試合を戦っていた印象だ。

「自分たちのスタイルを主語にする」とは、敗戦や勝利の理由を「自分たちが自分たちのスタイルを披露出来たか」で語るか否かという事だと解釈してほしい。

鹿島は敗戦や勝利の理由を必ずしも自分たちのプレースタイルには求めなかった。相手との力比べの中で、上回れたか否かという基準があった。サッカーの試合の結果は採点制ではないので、そういった意味では鹿島の方が本質的なのかもしれない。

しかし、長いリーグ戦を戦う時、「自分たちのスタイルを主語にしない」という事は変数の多さを表す。

この負けてしまったゲームは相手が良かっただけなのかもしれない。いや、相手に対する自分たちの戦い方が悪かったのかもしれないし、両方かもしれない。単に選手のコンディションの問題かもしれない。これでは変数が多く、次の試合に取るべき策にも迷いや疑念は生じやすい。

敗戦の理由を辿って次に繋げる時、「自分たちのスタイルを主語」にしてしまった方がPDCAを早く回せて迷いが消えやすいのは間違いない。見ていくポイントは自分たちのスタイルであり、それを表現出来たか否かだ。スタイルを表現する為に足りなかった要素を抽出して、改善すれば良い。

2.微修正ではなく大幅な修正

自分たちのプレースタイルを意識するチームは「微修正」の積み重ねでリーグ戦を戦っていける。

自分たちのスタイルを表現するためにはスプリントが足りなかったよね。じゃあもう少しコンディション調整に気を使おう。

自分たちのスタイルを表現するためには立ち位置が悪かったよね。じゃあ少し立ち位置を修正しよう。

こんな具合だ(もちろんその「スタイル」が機能的で魅力的であるかどうかは重要であるが)。

近年の鹿島は、微修正の積み重ねでリーグ戦を戦っていく事は難しかった。

大分トリニータに対する戦い方と川崎フロンターレに対する戦い方を、大幅に変えて、都度都度「試合の中での微修正」を重ねて勝利を掴んできた。

これはこれで、Jリーグでは鹿島にしか出来ない芸当ではあるものの、やはり効率性には難があるだろう。選手にも迷いは生じやすい状態だったかもしれない。

プレースタイルを先鋭化させようとしている鹿島

2020年。鹿島アントラーズは監督にザーゴを迎え、自分たちのプレースタイルを先鋭化させようと試みている。

チームが固まるまでは、「試合には負けたがスタイルとしては間違った方向には行っていない」というように、敗戦しながらも自分たちを肯定する試合だって出てくる可能性はある。

このような現象は、常に勝利を肯定し勝利だけを目指してきた鹿島アントラーズサポーターにとっては慣れないかもしれない。私も恐らく慣れないだろう。どんなに見事なプレースタイルも勝てなければ意味は無い。そんな葛藤が今シーズンは起きうる。

苦しい時もザーゴを信じ、チームを信じ、一丸となれるのか。今年はサポーターも成長を問われるシーズンになるかもしれない。

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