2年前を超えたカシマスタジアムと、「最後の1枚」の采配について【2019年ACLベスト8広州恒大戦2ndLegマッチレビュー】

鹿島アントラーズの2019年のアジアチャンピオンへの道は途絶えた。今回のマッチレビューは戦術うんぬんではなく、この悔しい気持ちを、そのまま文章に残しておきたい。いつものマッチレビューと異なる形の文章になるが、最後まで読んでいただけると嬉しい。

雨の降りしきるカシマスタジアム

この日は雨が降っていた。私はバイクで実家の水戸方面からカシマスタジアムへ向かった。

道の途中には鹿島アントラーズのステッカーを貼った車がチラホラ。

雨の日のバイクは嫌いだが、私は仲間たちと同じ目的地に向かっている気持ちになり、ワクワクしながら国道51号を南下した。

鹿島は2年前に広州恒大に敗れている。結果は1勝1敗、トータルスコアは2-2だったがアウェイゴールの差で敗れた。

その時も私は現地で観戦した。カシマスタジアムでのパウリーニョの1ゴールが、アウェイゴールとして重くのしかかったゲームだ。

昨年、鹿島はアジアチャンピオンになったが広州恒大とは対戦しなかった。それだけに今年の試合では、2年前の事を思い出さずにいられなかった。

試合開始前のカウントダウン

ACLには試合開始前のカウントダウンが行われる。

この日のゲームも例外ではなかったが、試合時間をきっちり合わせるためか、選手が配置についてからカウントダウンまで「間」が生まれた。

私が選手だったらこの「間」は嫌だな、と思いつつ、鹿島の選手たちの動きを見つめていた。スンテは味方に大声で声をかけ、レオや町田を始め、フィールドプレイヤーは雨で身体が冷えないように身体を動かしている。犬飼はスンヒョンと言葉を交わしているように見えた。

そしてその「間」を埋めるように鹿島サポーターの声援が轟く。

よし、勝てそうだ。私はそう思った。

鹿島サポーターの熱量

この日の鹿島サポーターの熱量や声援は、2年前の広州戦を超えていたと私は感じた。

まず、この日は雨にも関わらず、2年前の広州恒大戦の動員を2,000人も上回った。駆けつけたサポーターは13,835人。

声援も2年前よりも大きいように感じた。

雨でも関係ない。平日でも関係ない。アジアを獲りたいというサポーターの熱量を感じた。満員のスタジアムではないが、たしかな熱狂のあるスタジアムだった。

広州恒大サポーター

一方の広州恒大サポーター。

私は今回、あえてアウェイ寄りの指定席で観戦していた。

それは「単純にその席の方がピッチに近かった」というのと、「広州恒大のサポーターたちの様子を見てみたかった」という理由による。

試合開始時点で、あまり多くはない数の広州恒大サポーターが声援を送っていた。少人数でも十分な声量があり、彼らからも熱量を感じた。

しかし試合が進むにつれ、ある事に気付いた。

気付いたのはタリスカが先制点を奪った後くらいだろうか。

広州恒大のサポーターが試合開始時点の3倍ほどに膨れ上がっていたのだ。

この日の高速道路は渋滞していたとの情報もあったので、彼らは遅れてしまったのかもしれない。彼らの声量は「熱量を感じる」のレベルを超え、「脅威」のレベルになりつつあった。

試合終了間際の攻防で、ゴール裏に陣取る広州恒大サポーターが広州恒大の選手たちを勇気づけていたのは言うまでもない。

鹿島の選手たちの激闘

この日はかなりインテンシティの高いゲームとなった。

特にパウリーニョとマッチアップする小泉、タリスカとマッチアップする永木とレオ、エウケソンとマッチアップする犬飼とスンヒョン。彼らの身体的な負担はJリーグでは経験できないレベルだった事だろう。

小泉の強度

私が目の前で見れたのは、前半は主に町田と名古の守備、後半は主に小泉とセルジーニョ・山口の攻撃のサイドだ。

その中でも、間近で見る小泉の守備の強度は凄まじかった。

寄せの早さに加えて身体も強い。4日前にFC東京との激戦を戦った選手とはとても思えないタフさだった。しかもこの日の小泉の守備は、レフェリーのジャッジの基準に則ったものだった。反則を取られない、ギリギリの強度。

パウリーニョは「面倒な選手に当たったな」という感覚を持ったに違いない。彼の守備の強度は、これからも鹿島を救ってくれる事だろう。

レオの躍動

この日のゲームで、レオ・シルバはまだまだ健在であることを証明した。

レオは各所に配置されている広州恒大のキープレイヤー達を凌駕する存在感を見せつけた。彼もまた、4日前のFC東京との試合にフル出場しているのだから、そのタフさには驚かされる。

1ゴール目のプレー、そして試合終了間際のラストプレーでも常にゴールを意識しているレオ・シルバのプレーは、他の日本人選手のお手本になるはずだ。

大岩監督の采配

負け試合を「采配ミス」と一言で断罪するのは簡単だ。

私は監督の「采配」を批評する事はかなり難しい作業だと思っている。

まず「何かを判断する時に成功するか失敗するかなんて分からない」という前提がある。これはビジネスの世界でも同じだ。未来の事を完璧に読み切るのは不可能だ。

それでも監督は刻一刻と変わる戦況を見ながら判断をしなければならないし、決断をしなければならない。その前提の上で、私が監督の采配について語るならば「その判断は勝利に向けて最も合理的だと考えられたか」という視点による。

結果論で采配を語ってはいけない。例え悪い結果が出ようとも、「勝利に向けて合理的だった」と考えられるならば私はその判断を支持したい。

では、このゲームの采配をどう感じたか、書き記してこの記事を終わらせたい。

まず相馬と上田綺世の投入。この2つの判断は支持出来るものだった。

彼ら2名はJリーグで勝利を呼び込む活躍をした経験があるし、分かりやすい武器もある。名古が良いプレーをしていたので勿体ないという気持ちもあるが、この判断ばかりは難しい。彼ら2名は、Jリーグで途中出場から勝利に直結する動きを見せた事があるのだから。

そして山口一真について。

私は永木に替えての山口の投入を懐疑的に感じた。それは勝利に向けて、(現状の鹿島では)最も合理的な判断には思えなかったからだ。

永木に替えて山口を投入する事で、相手にとって最も脅威だったレオはボールの回収役を担う為にポジションを下げざるをえず、中間ポジションで相手を引き付けた土居は「ボールを運ぶ仕事」を任された。

もちろん山口が結果を出した可能性もある。ただ、今年の鹿島は公式戦で山口にあまりそのような仕事(ジョーカー的な仕事)を任せていないし、大きなゲームで目に見える結果も出せていない。

ノッキングを起こしていた左サイドバックに小池を起用し、クロスの精度やパワープレーで放り込むボールの精度を向上させる事の方が勝利への合理性は高かったように感じる。

チームの戦力を総動員して勝ちたかった気持ちは非常に理解出来るし、ここぞという場面で山口を起用した大岩監督の心意気には熱いものを感じた。

しかし、「最後の1枚の采配」については、山口を日頃からジョーカーとして起用していない限り、合理的と思う事は出来なかった。

負けたら終わりのトーナメントだからこそ、狡猾に勝利を狙う最後の采配が見たかった。

ルヴァンカップ、天皇杯と、これからのトーナメント形式の大会では、またレベルアップした鹿島を見たい。

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