強者ではないことを自覚しなければいけない敗戦【2019年ACLグループリーグジョホール戦マッチレビュー】

今回はグループリーグ突破をかけたジョホール・ダルル・タクジムFCとの戦いを振り返る。

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試合結果

0-1

【得点】

69分 シャフィク アハマド(ジョホール)

スタメン

鹿島のスターティングメンバーは以下の通り。

GK クォンスンテ

DF 永木亮太 犬飼智也 町田浩樹 安西幸輝

MF 平戸太貴 レオシルバ 遠藤康 安部裕葵

FW セルジーニョ 伊藤翔

スタメンを見て驚いた。平戸のボランチ起用がここであるとは思わなかった。平戸は今シーズン、まだ公式戦でボランチ起用されていない。

しかし、冷静に考えればこの起用も致し方ない判断だったのかもしれない。

三竿はまだ連戦に耐えられるコンディションではないのかもしれないし、何よりも問題は右SBの不在。小田や平戸を試したが納得のいくパフォーマンスではなく、やむなく永木を起用する形が続いている。すると本来永木を起用したいボランチも穴が空く。

そこで抜擢される可能性があるのは当然、名古か平戸ということになる。

今回は名古ではなく平戸が選ばれたという形だろう。

スタメンの選定に関しては特段疑問は無かった。現在の鹿島の課題は右SBの人材難に起因している事が多いが、これは監督の責任というよりは編成の問題だ。

西大伍の抜けた穴を補強で埋めきれず、山本と伊東の復帰が長引いている現状では、大岩監督の肩を持たざるをえない。

その他のメンバーについては、「コンディションを重視しつつ勝ちにいった」と考えて良いスタメン起用だったと思う。

試合レビュー

早速ポイントを絞って試合を振り返っていこう。

前半の縦一辺倒の攻撃の意図

前半の鹿島は縦にシンプルにボールを入れる攻撃を主体に試合を展開した。ボールを持ったらまずは最前線の伊藤翔を見る。ボールは相手DFラインの裏へ。

鹿島が「縦にシンプルにボールを入れる攻撃」をした意図を読み解くと、おそらくこのように分類できるのではないかと思う。

  1. リスクマネジメントの問題
  2. ジョホールDFラインの能力の問題
  3. ピッチコンディションの問題

それぞれについて説明しておこう。

1.リスクマネジメントの問題

まずはリスクマネジメントの問題。これは大岩監督のこれまでのパーソナリティを考えるとセオリーとも言えるものだ。ピッチコンディションが悪く、天候も厳しい。何が起こるか分からないアウェイではシンプルに相手陣地(自分たちのゴールから遠い場所)にボールを送ることからゲームを始めようとする。

この戦い方はこの試合に限ったものではなく、昨年から続くものだ。昨年はこの戦い方でアジアチャンピオンになった。

昨年の成功体験が、この試合でも「縦にシンプルにボールを入れる攻撃」を選択させたのだろうと思う。

しかし、昨年の良かった時期とこの試合では状況が異なった。昨年と違ったのはボールの質とFWの馬力。この試合は縦パスの精度が良くなかった。そして昨年最前線でボールを収めてくれた鈴木優磨は不在だった。

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2.ジョホールDFラインの問題

「縦にシンプルにボールを入れる攻撃」を選択した2つ目の理由はジョホールDFの対応の悪さによるものだ。これは確かにジョホールに対して有効な手立てだった。スカウティングもある程度あったのだろう。

ここは狙い通りだったので、試合でも実際チャンスになっていた。前半にいくつかあったチャンスを沈めていれば、この攻め方で悪くなかったという結果になったと思う。

ここが戦術の選択の難しさだ。プロセスを見てある程度の合理性が見られる以上、あとは些細な事(ゴールを奪えたか奪えなかったか)でその良し悪しは判断されてしまう。

3.ピッチコンディションの問題

「縦にシンプルにボールを入れる攻撃」を選択した最後の理由はピッチコンディションの問題だ。ピッチコンディションがあまり良くなかったので、横パスやバックパスを掻っ攫われる展開を鹿島は嫌った。

個人的には、鹿島の選手の技術の方がやや高い状況だったので、勇気を持ってボールを回しながらチーム全体を前進させるやり方を選択しても良かったのではないかと思う。

事実、縦に急ぐ展開を少しスローダウンした後半開始早々のプレーは良い流れでプレー出来ていた。

鹿島は間延びして、ジョホールは間延びしない理由

鹿島は前半に縦にシンプルに入れる攻撃を展開したが、それは別に悪い選択ではなかった。事実、チャンスを作れていたし、ジョホールに対してはまずまず有効な策ではあった。

この攻撃はある程度のチャンスは生んだものの、悪い点もあった。チーム全体の間延びを生んでしまったことだ。

↓これは私が試合中にしたツイート。

一方のジョホールはあまり間延びせずに前半を過ごした。

なぜこのような状況になったのか、考察したい。

ラインを上げない鹿島

間延びをする最大の要因はDFラインの低さだった。鹿島は簡単に相手の裏を狙うパスを繰り返した。しかし縦にパスを出した後、DFラインは後方に残っている状況が続いた。

伊藤翔は相手ゴール近くまでボールを追いかける。

DFラインは自陣の真ん中辺り(DFサードとミドルサードの間あたり)に残る。

中盤の選手がカバーするスペースが広大になる。

こんなメカニズムだ。

中盤の選手は、「伊藤翔に追随するべきか?」「DFラインとの距離を保っておくべきか?」という迷いの中、中盤に発生する大きなスペースを走らされた。こぼれ球へのリアクションにおいて鹿島の方が少しだけ常に遅かったのは、鹿島の方が選手間の距離が悪かったからに他ならない。鹿島がファウルを取られやすかった要因でもある。

暑く、連戦の中で走れなかったのかもしれないが、犬飼・町田の両CBは勇気を持ったラインコントロールをするべきだった。チーム全体の選手間の距離をコントロールするのはCBの仕事だ。

ショートパスをつなぐジョホール

一方のジョホールは鹿島に比べると間延びをせずに戦えていた。

その主要因がショートパスを繋ぐスタイルによる。選手間の距離がバラバラの場合、ショートパスを繋ぐという攻め方は成立しない。

また、4-1-4-1のアンカーの位置に入った14番のシンガポール代表のハリス・ハルンが絶妙にDFラインと中盤の距離感を繋ぐ役割を担っており、選手間の距離の調整に一役買っていた。鹿島はこの選手の存在に苦戦した。また、ジョホールDFラインは勇気を持って高い位置までラインを上げていたことも鹿島との違いだった。

ジョホールの方がチームとしてオーガナイズされており、勝利に値するプレーをしていたのは間違いない。

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意図の読みづらい選手交代

この試合においては、意図の読みづらい交代についても言及しなければならない。

71分 平戸 太貴 → 土居 聖真
75分 遠藤 康 → 金森 健志
83分 安部 裕葵 → 山口 一真

上記の選手交代であったが、まず土居聖真のボランチ起用は意図が分かりかねるものだった。レオ・シルバのポジショニングや攻撃性能を考えれば、ボランチの相方を更に攻撃的な選手に替えるのはバランスの崩壊を招くリスクが高い。「ボランチがいるべき場所に誰もいない」という状況は、サッカーでは致命傷になってしまう。ゴールを奪うどころか、追加点を取られる可能性すら高まる交代だ。

土居のボランチ落ちが清水戦で効いた事のような現象を期待していたのだとしたら、大岩監督は状況を読めていないと言わざるを得ない。

土居投入後のチームはバランスが良くなかった。

金森・山口の起用は妥当だったと思うが、この試合にノッていなかったセルジーニョと伊藤翔を外せなかったのは頂けない。伊藤翔はゴールハンターとして今シーズン活躍しているし、セルジーニョはACLでゴールを奪ってくれるという「両選手のゴールのイメージ」は確かにある。しかしこの試合は前半から両選手の日では無く、むしろ効果的な働きをしていたのは遠藤康だった。

「実際の選手の動き」よりも「イメージ」を優先させた采配は、同点をむしろ遠ざけてしまったとすら言えるだろう。

もはや強者ではないことを自覚しなければならない

これでACLは2連敗となった。この事実は深く受け止めなければならない。

前節の慶南、今節のジョホールと、この両チームは鹿島を格上と位置付けて運動量や気持ちで鹿島を凌駕してきた。今の鹿島にそれを「受け流して勝ち切る」という力が無いことは証明されてしまった。

今年は昌子も西も(今は優磨もスンヒョンも)いない。昨年と同じ戦い方ではアジアを勝ち抜いていくことは難しいことを自覚しなければいけない。

ここから気持ちを切り替えて、心身ともに充実した試合を見せてほしい。

MIP

遠藤康。コンディションの問題か、主にチャンスメイクと守備において最も効果的な動きをしていた。久しぶりに良い遠藤康のプレーを見ることが出来た。遠藤は本来はチームを牽引してほしい選手の一人。ここからの飛躍も期待したい。

 

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