【2018Jリーグ第32節柏レイソル戦試合分析】合理的判断でもぎ取った勝利

【2018Jリーグ第32節柏レイソル戦試合分析】合理的判断でもぎ取った勝利

2018年Jリーグ第32節 柏レイソルVS鹿島アントラーズ マッチレビュー

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スタメン

鹿島のスターティングメンバーは以下の通り。

GK 曽ケ端準

DF 小田逸稀 犬飼智也 町田浩樹 安西幸輝

MF 永木亮太 小笠原満男 遠藤康 山口一真

FW 久保田和音 金森健志

ベースは先週の31節のセレッソ戦だが、田中が遠藤、昌子が安西、スンテが曽ケ端に変わった形だ。私は先週のゲームにおいて、久保田と山口よりも田中の方が良いプレーをしたと見ていたが、大岩監督は異なったようだ。田中がスタメンではないことが残念だが、それ以外は納得感のあるスターティングイレブンだ。セレッソ戦で流石のプレーを見せてくれた小笠原には引き続き若いチームを助けてほしい。曽ケ端はスンテとの差が少し開いてしまったように思うが、まだまだ健在であることを証明してほしい。

また、この試合のスタメンによってACLのスタメンも見えてきた。ACL決勝2ndLeg、安西はベンチでサイドハーフは安部と土居がスタメンなのだろう。

この試合は残留争い崖っぷちの柏レイソルが相手。死に物狂いでボールを追いかけてくることが予想され、苦しいゲームになるだろう。柏レイソルは順位こそ下から2番目だが、クリスチアーノ・伊東純也・中山・江坂・小池・手塚・鈴木大輔・中村航輔と、素材としては粒ぞろいのチームだ。メンバーの質だけ見れば、今日の鹿島のスタメンより上だと言ってしまって良いだろう。

個人の能力で上回る相手に対して、どのように「優位」を作って試合を進めていくかが戦術のポイントになる。

試合分析

早速試合を分析していこう。

柏レイソルの基本形

柏レイソルは4-4-2のポジション。CB2枚とボランチ2枚でダイヤモンドを作り、組み立てをし、SBは高い位置を取る。FW(主にクリスチアーノ)もサイドに流れ、大外のレーンとハーフスペースから起点を作るというサッカーだった。

柏レイソルのウィークポイント

この日の柏レイソルにはウィークポイントがあった。ずばり鎌田次郎だ。

彼はアジリティが低く、足元の技術も高くない選手だ。前述の通り、柏はCB2枚とボランチ2枚でゲームを組み立てる。そのうちの1枚が「穴」で、残りの3枚は技術的には高い。

このような場合はどうやって戦術を組み立てるのが良いか。私は2パターンあると思っている。

  1. 鎌田にボールを誘導して、鎌田にボールを持たせる。鹿島は鎌田にプレスをかけないで周りの選手へのマークをタイトにする。彼はボールを運べず、且つ彼から質の高いボールが供給される可能性は低い。パスも読みやすいのでボールを奪える確率は高まる。鎌田以外のフィールドプレイヤーは10対9になるので数的優位も作れる。
  2. 鎌田にボールを誘導するが、その後に鎌田にさらにプレッシングをかける。ミスを誘発しショートカウンターのチャンスを作る。

サッカーというゲームがチームスポーツである以上、相手の弱点を攻めるのは常套手段だ。鹿島は意図したか、してないかはハッキリしないが、「1」寄りの守り方をした。鎌田を自由にプレーさせた。

その結果、1失点目は鎌田のロングボールから失点してしまったが、3得点目は鎌田の縦パスを町田が狙ってカウンターの場面を作れた。

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レイソルに対する鹿島の守り方

レイソルに対し、前半の鹿島は守り方に課題を持っていた。前半の課題は大きく分けて2点だ。

相手ボランチへの対応

1つ目が相手ボランチへの対応だ。前半において、ビルドアップを試みる柏ボランチ2枚へのプレッシャーが機能していなかった。具体的には、小笠原と永木が低いゾーンで守りすぎていた。鹿島のボランチは低いゾーンを守っていたので確かに中央を崩されることはなかった。しかし「柏がボランチ2枚・CB2枚」でボールを回すのに対して、鹿島は久保田と金森の2枚がプレッシャーに行く形になってしまった。

4体2ではボールを追い込むことは難しく、柏は簡単にサイドチェンジを繰り返すことができ、ストロングポイントであるサイドにボールを運ぶことが出来た。サイドの攻防において鹿島が優位であればその守り方で問題ないが、この日はそうではなかったので、このボランチの守備位置は低かったと言わざるをえない。

では、どのように守るのが正解か。それは永木がもう1列前に出て「4-1-4-1」の形を取るのが良い。永木が手塚・中山の「高い位置」にいる方を捕まえにいくのだ。低い位置にいる方を久保田が捕まえ、鈴木大輔には金森がいく。鎌田はある程度放っておく。後半の鹿島はそのような形を取るケースが何回か見られ、前半よりは改善された。

小田の「迷い」

2つ目が小田のプレーだ。前半、鹿島の小田逸稀は「迷い」をもってプレーしているように見えた。大外のレーンに位置取る左SBの高木、ハーフスペースに位置する江坂、裏を取ってくるクリスチアーノ。どの選手をSHやボランチに任せて、どの選手を自分がチェックに行くべきか。現地に行った方なら、前半に遠藤と小笠原がたびたび小田に話していたシーンをよく覚えているだろう。

サッカーというスポーツにおいて、「迷い」は禁物だ。「迷って正しい選択」をするくらいならば「迷わず正しくない選択」をした方が良い結果を生む場合が多い。たとえば、0.5秒「迷い」の時間が生まれると、相手へのプレッシャーが2メートル遠くなる。サッカーにおける2メートルは致命的だ。この2メートルで「正しかったはずの選択」は「正しくない選択」に変わってしまうのだ。

小田の「迷い」を敏感に察知したのだろう、柏は小田のサイドを狙い撃ちした。事実、そこから失点が生まれてしまった。小田がまだ高卒2年目の選手であることを考えると、彼の迷いを消し去る戦術を大岩監督は授けるべきだったし、犬飼は試合中に指示を与えるべきだった。

後半に入り、小田の迷いはある程度クリアになったように見え、判断の速度が上がった。伊東純也のシュートをスーパークリアしたシーンも、「迷い」が無いからこそ生まれたプレーだ。0.5秒判断が遅れていたら、失点していただろう。

難しいミッションの金森

この日の先制点は金森が奪った。この試合の金森は、鹿島の選手の中で最も難しいミッションを受け持つ存在だった。

守備では4対2の状態で相手のビルドアップを追い回し、攻撃では味方の押し上げが遅い中で柏の厳しいプレッシャーに晒されることになった。さらに1トップは金森の得意とするポジションでもない。

そんな中でも金森は貴重な先制点をマーク。身体の小さな選手は、セットプレーにおいて「集団」とは逆の動きをした方が良い。「集団」と同じ方向に動いたところで、背が小さい選手が競り勝てる可能性は低いからだ。先制点の金森の動きはたった一人だけ「集団」と逆の動きをすることでボールがこぼれてきた。

ストライカーらしい、素晴らしい動きだった。

合理的判断が得意な鹿島アントラーズ

この日の試合は、かなり苦しい試合だった。繰り返すが、柏の選手の質は高い。鹿島が柏に対する特別な戦術を取らない中でなぜ勝利できたのか。それは鹿島が合理的な判断をするのが上手いチームだからだと考えている。

このブログの名前を「戦術小屋」と銘打っている手前でこのような事を言うのは気が引けるが、サッカーというゲームにおいて戦術なんてものは、いち要素に過ぎない。ゲームの目的は「勝利すること」であり、ボールを支配することでも攻撃的なサッカーをすることでもない。選手個々が「勝利に向けて最も合理的な行動を取る」ということが出来れば、それでOKだ。柏との試合において鹿島の最も良かった点は、勝利に向けた合理的判断を各選手が行っていたことだ。

小笠原と三竿は、自分のゾーンを飛び出した時はファウルしてでも相手を止めた。

永木は何度も相手に身体をぶつけてボールを守った。

金森は何度もスプリントを繰り返し、疲労しきった足でもコーナーフラッグ付近で必死に時間を稼いだ。

安部は持ち前のテクニックを見せる絶好のチャンスが来ても、チームの勝利の確率が高くなるプレーを選んだ。

大岩監督は、追加点を狙うのではなく1点を守る姿勢を采配で意思表示した。

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采配はどうだった?

小田→三竿

良い交代だった。後半はある程度改善されたとはいえ、この日の小田は鹿島のウィークポイントだった。柏の山崎亮平に対抗する意味でも、永木をSBに回したのは良い選択だ。三竿を使うのもラスト15分なら問題ないだろう。タイミング的にも最適だった。

そしてフィルター役としての三竿健斗は圧巻だった。アプローチの速さや身体の強さが際立っていた。

山口→田中

これも良い交代だった。終盤の柏は右サイドの小池・伊東ラインが唯一の生命線で、運動量の落ちてきた山口を代えるのは良い判断だった。大岩監督は基本的に守備から考える監督で、このように相手のストロングポイントを消すことを最優先する采配は元CBならではだろう。エキサイティングな采配ではないが、現実的な交代だ。

また、勝っていたので急がないでゆっくり交代をしてほしい山口だったが、交代に気付くや否や走ってしまいそうになっていた。そんな山口の姿を見て、彼の「いっぱいいっぱい」感が伝わってきた。

久保田→安部

こちらは時間稼ぎの意味合いが強い交代だったので割愛。

MVP

金森健志!

前述のように非常に難しいミッションを必死にこなしながら先制点をマークした。

スプリント回数は25回でチームトップ、走行距離でも久保田に次いでチーム2番目だった。

金森はこの試合のように、「運動量重視(ガッツ系)」のプレーを続けるのが鹿島での活路なのではないだろうかと思った。ハードワークの出来る前線の選手は優磨しかおらず、しかも金森は優磨よりもスピードがある。他のチームの運動量重視の選手と比べればテクニックはかなり秀でたレベルだ。

このゲームをきっかけに、一皮も二皮もむけた金森にバージョンアップするのを期待したい。

 

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