三竿健斗、伝説を超えていけ【2019年第22節横浜F・マリノス戦マッチレビュー】

2019年Jリーグ第22節、鹿島アントラーズVS横浜F・マリノス。マッチレビュー。

試合結果

2-1

【得点】

1分 セルジーニョ

68分 仲川 輝人

87分 上田 綺世

スタメン

鹿島のスターティングメンバーは以下の通り。

GK クォン スンテ

DF 小泉慶 ブエノ 犬飼智也 小池裕太

MF 三竿健斗 名古新太郎 セルジーニョ 白崎凌兵

FW 土居聖真 伊藤翔

ハイライト

見どころ

このゲームは今シーズンのJリーグに大きな影響を与えるゲームになる。両チームにとって、優勝戦線の生き残りを懸けたゲームだ。

鹿島は、このゲームを負けるようであれば、FC東京と勝ち点差が10広がる可能性もある。

先週の浦和レッズ戦を勝ちきれず、湘南戦で痛恨の敗北をしているだけに、ホームのこのゲームは引き分けすら許されない。

鹿島はこのゲームで、これまで不動だったメンバーではなく、小泉とブエノと伊藤翔を起用した。特に調子の良くないレアンドロを起用せず、セルジーニョを中盤の右サイドで起用したのは英断だと思う。

セルジーニョには一定水準の守備力と勤勉さがあり、1点が試合を左右するゲームではレアンドロよりも勝利への貢献度は高いだろう。そして替わりに起用される伊藤翔も調子は上向き傾向であり、何より古巣マリノスの戦術を熟知している。

鹿島が興梠にハメられたように、今度は伊藤翔をにマリノスをハメてもらいたい。

試合レビュー

ポジション

▼鹿島を赤紺、マリノスを白で表現

電光石火の先制点

ゲームは鹿島の電光石火の先制点から始まった。

マリノスがキックオフからGKにボールを下げて、”いつもの形”でビルドアップをしようと試みた。「畠中・チアゴマルチンス・ティーラトン・喜田」の4名にパクイルギュを加えた形のビルドアップだ。

そこに鹿島は「伊藤翔・土居・セルジーニョ・名古」の4名が襲いかかり、ボールを奪取。電光石火の先制点に繋げた。

伊藤翔の追い込み方と畠中のボールの持ち方

電光石火の先制点には、1番始めの伊藤翔のボールの追い込み方にポイントがあった。

それはパクイルギュからボールを受けた畠中へのプレッシャーのかけ方だ。

マリノスの畠中には、”ある習性(癖)”がある。パスを繋ごうとする時、「左CBなのにまず右足側にボールを置いてしまう」という習性だ。

この場面でも、畠中はおそらく無意識に右足側にボールを置く。身体が前向きではなく、ピッチの内側を向いている状態だ。おそらく伊藤翔はその習性を見抜いていた。

左CBが右足側にボールを置くと、相手FWはパスコースへの限定がしやすくなる。左足で、タッチライン際に目がけてボールを蹴るという”逃げ”の手段を取る事が出来ないからだ。

伊藤翔は畠中の”右足”から繰り出されるパスコースを限定する。人数をかけてプレスをかける鹿島が、まず1番避けたいのは左のアウトサイドにいる遠藤渓太に一発でパスを出される事。これが”左CBの右足”ならば限定しやすくなる。

伊藤翔は、開いてボールを受けた畠中より内側でパスコースを作っていたティーラトンへのパスコースも切った。つまり、「遠藤渓太へのパスコースとティーラトンへのパスコース」の2つを切る事に成功した。

パスコースを切られた畠中はパクイルギュに下げるしか方法が無かった。

そこから鹿島の「パスコース限定の連鎖」は続いていく。

土居聖真はパクイルギュからチアゴマルチンスへのパスコースを切って、「ティーラトンか喜田へのパス」に限定。そこにセルジーニョと名古が襲いかかる。

勿論ティーラトンの判断ミスと技術的なミスはあったものの、それを誘発した「伊藤翔・土居・セルジーニョ・名古」の守備は褒められるべきだろう。

左CBの右足

これは余談にはなるが、畠中の「左CBなのにまず右足側にボールを置いてしまう」という習性については、鹿島も思い当たる節がある。

昌子は若い頃、今の畠中と同じように「左CBなのにまず右足側にボールを置いてしまうCB」だった。

この頃の鹿島は、昌子のビルドアップから、今回の得点シーン同様にハメられる場面を作られやすい構造にあった。相手FWからすれば、左CBが常に右足側にボールを置くと、非常に「パスコースの限定」がしやすい。

そこから昌子は徐々に自分の課題と向き合い、鹿島がクラブW杯で決勝に進んだ前後あたりから、自然と「状況によって左側にもボールを置ける」という選手に成長した。

おそらく畠中も、次に鹿島と対戦する時は成長してもっと手強くなっていることだろうと思う。

マリノスのビルドアップと鹿島の守り方

マリノスのビルドアップは、基本ポジションの4-3-3とは全く違う形を取る。

  • DFラインに喜田が落ちて、最後尾を3名で形成する。
  • 喜田が落ちた事を合図に両SBが内側に入る(ボランチに近いような位置)
  • それに連動して扇原も一列高い位置を取る
  • 両SB・扇原・マルコスジュニオールの4名でボックス型ないしダイヤモンド型の中盤を形成する

イメージとしてはこんな感じ↓

それに対する鹿島の守り方は、以下のようなイメージ

  • FWは中央にボールを入れられないようなパスコースの切り方をする
  • 両SHは付いていくべき相手(SB)が中央に移動するので、同じように中央に絞る
  • WGにボールを入れられるのは、ある程度許容する

このような守り方をしたので、鹿島としては「横浜のWGと鹿島のSB」のアイソレーションを作られる形が増えた。

そこで、この日の鹿島が良かったのは、「SBはアイソレーションで勝負をしない」を徹底した事だ。

SBとWGのアイソレーションになると、小泉も小池も、基本的には足を出さず、ボランチの加勢を待つ形を取った。

SBの1対1で勝負せず、ボランチと2対1のような形を作るような形を意識したのは良かっただろう。泉・小池が粘り強く戦い、相手WG単独での突破を数多く許さなかったのはゲームの大きなポイントだった。

マリノスのネガティブトランジション

鹿島は、ネガティブトランジション(守備から攻撃)時のマリノスを突こうと試みた。

マリノスは攻撃時に4-3-3(4-2-3-1)から可変して、3-4-3のような形になる。そして守備時は4-2-3-1に戻る形を取っている。更に、やや特殊な攻撃の型を取っているのでSBが定位置に、ボランチが定位置に、戻る必要がある。

鹿島はその隙を常に突こうと試みた。

攻撃時に中央に選手が寄りがちなマリノスの配置の影響で白崎とセルジーニョの両名は比較的自由にボールを保持でき、三竿もボール奪取からマリノスのバランスの隙を突いて中央突破を試みた。

ゲームを通してボールは保持されるものの、試合内容は一進一退の攻防が続いたと言えるだろう。

エジガル・ジュニオの不在

鹿島にとってポジティブに働いたのは、エジガルジュニオの不在だった。

この日のマリノスのCFに入った大津祐樹は、コンパクトに保っていた鹿島のDFラインと駆け引きをする事が少なかった。

そのため、ブエノは迷わず持ち場を離れてマルコスジュニオールに当たる事が出来た。

マルコスジュニオールを息苦しそうにプレーさせられた要因は、エジガルジュニオの不在にあったと思っている。CFがもっとブエノと駆け引きをしてボールを呼び込んでくるようであれば、結果的にマルコスジュニオールをもっと自由にプレーさせてしまっていた事だろう。

ブエノの圧倒的な対人の強さ

この日のブエノのプレーは白眉だった。

スピードとフィジカルはJリーグレベル、後はポジショニングと技術が課題ではあったものの、このゲームでは迷いなくプレーをしていたように見えた。

エジガルジュニオ不在は大きく影響したと思うが、「前に出るタイミング」「カバーに回るタイミング」で難しい駆け引きを強いられなかったのは非常に大きかった。

ポジショニングと判断に迷いさえなければ、ブエノは最強レベルのDFだ。

ただし、このゲームのブエノは素晴らしかったが、例えば浦和戦の興梠-武藤のような駆け引きをされるとブエノは単に「動かしやすいCB」にもなり得る。

その点については経験だと思うが、これから出場機会を増やしていき、鹿島に欠かせないDFとなってほしい。

繰り返すが、ポジショニングと判断に迷いさえなければ、ブエノは最強レベルのDFだ。

三竿のゲームを支配する力

三竿のゲームを支配する力にも触れなければならないだろう。

守備時は危険を摘み、不安定だったジャッジの基準にもアジャストしたタックルでボールを奪取し、攻撃時は広域にボールを配給し危険なゾーンにボールを運んだ。ここまではまるで小笠原のようだが、三竿は更にサポーターを煽るような仕草を見せ、スタジアム全体を巻き込んで勝利を目指そうという器量さえ見せてくれた。これは小笠原にさえ出来なかった事だ。

三竿は「小笠原のようなプレー」で満足するような男ではないと思っている。小笠原がやっていた事をやって、更に自分の色も加えていってほしい。

伝説を超えていけ。君なら、それが出来る。

上田綺世の決勝ゴール

このゲームは上田綺世のゴールで決まった。

これまでの2試合は難しい状況の中での出場で、このゲームもまた、同じように難しい状況だった。入団から1ヶ月も経過していないルーキーには、重すぎるプレッシャーの中でのプレーが続いた。

それでもこのゲームでは決勝ゴールを上げてみせた。

上田綺世のサッカーの能力は勿論の事だが、特筆すべきはそのメンタルだろう。3試合で1度しかなかった決定機を、1度で沈めて見せた。この勝負強さは、これからのプレーにも期待せざるを得ない。

とはいえ、上田綺世の少しの課題も記しておこう。

伊藤翔や土居と比べれば、やはり前プレ時の守備の限定の仕方は劣っているように見えた。そもそも鹿島ではどこに追い込めばいいのか、どうやってパスコースを限定すればいいのか、が分かっていないのだろうとは思うが、間違いなく改善点だ。これから伊藤翔や土居のプレーを見ながら盗んでいってほしいと思う。

MVP

三竿健斗!!!

間違いなくチームを勝利に導くプレーぶりだった。これを続けて、リーグ優勝を共に掴もう。そして、伝説(小笠原満男)を超えていけ。

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