最後に効いたのは”18名”の戦力差【2019年第23節大分トリニータ戦マッチレビュー】

2019年Jリーグ第23節、大分トリニータVS鹿島アントラーズ。マッチレビュー。

試合結果

1-0

【得点】

71分 相馬 勇紀

鹿島のスターティングメンバーは以下の通り。

GK 曽ヶ端準

DF 小泉慶 ブエノ 犬飼智也 小池裕太

MF 三竿健斗 名古新太郎 セルジーニョ 白崎凌兵

FW 土居聖真 伊藤翔

ハイライト

見どころ

今節の相手は開幕戦で敗北を喫した大分トリニータ。もちろん優勝を狙う上で負けられないゲームではあるが、なんと言っても同じチームにシーズンダブルを食らうわけにはいかない。

ホームで味わった敗戦の屈辱を晴らしたいゲームでもある。

前回の対戦では鹿島が前からプレッシングをかけに行った所を外され、鹿島DFラインと大分のFWが同数になった所を質的優位でやられた。

このゲームでは、前回からの反省をいかにゲームの中で表現出来るかという点にも注目したい。

試合レビュー

ポジション

▼鹿島を赤紺、大分を白で表現

鹿島は前節の横浜Fマリノス戦をベースに、GKがスンテから曽ヶ端に替わった。

4-1-4-1に可変する大分のビルドアップ

大分は3-4-2-1のような基本ポジションを取るが、攻撃時は小林裕紀がDFラインに下りて両サイドのCBがそれぞれ幅を取る。4-1-4-1のような形になった。

時に5枚が前線に並ぶような形だ。イメージはこちら↓

それに対し、鹿島は以下のような守り方をした。

  • FWはボランチへのパスコースを消す程度の位置取り
  • SHは中央に絞ってシャドーへのパスコースをケア
  • 相手が5枚並んだ時は三竿がDFラインに入って「CB・SB・三竿」の5名で対応

5枚が並ぶ相手に対して「4-4」で守りきろうとするのではなく、時には「5-3」で守ってしまおうという判断は、非常に効果的に働いた。

大分はロングボールを多用して攻撃の糸口を探ろうとしたが、「5名の鹿島のDF」がなんとか対応する展開が続いた。

食いつかない鹿島、食いつきを待つ大分

鹿島は開幕戦の大分戦とは異なる守備の動きを見せた。

大分がGKを含むビルドアップでパス回しをするのに対し、伊藤翔・土居の両FWは大分のDFラインまでプレッシャーをかける事はなく、前述の通り相手ボランチへのパスコースを消す程度のポジショニングにとどめた。

一方の大分は鹿島の食いつきを誘った。「鹿島の焦れ」を待つようにDFラインでのパス回しを続け、食いついてきた所で相手の連動の隙を突いて一気に相手のゴールに迫るのが大分のスタイルだ。

しかしこの日の鹿島は焦れなかった。

ゲームは終始「食いつかない鹿島、食いつきを待つ大分」というゲーム展開が続くこととなる。

スコアレスで進むならば鹿島のペース

「食いつかない鹿島、食いつきを待つ大分」という構図は、鹿島にとって想定内の展開だったはずだ。だから焦れる事は無かった。

それはなぜか?

ベンチメンバーの戦力差だ。

鹿島のベンチにはレオ・シルバ、上田綺世、相馬など「個の力を持つ攻撃のカード」をベンチに残しており、逆に大分は流れを大きく変えられる「個の力」をベンチには保持していなかった。

0-0で体力を消耗していった後半に、流れが鹿島側に傾くのは必然と言える。

この日のゲーム展開は、ベンチ入りも含めた”18名”の戦力が大きな意味を持った。おそらく大岩監督にとって、スコアレスの展開は想定内だったはずだ。だから無闇に相手のビルドアップに食いつくようなゲーム展開を推奨しなかった。

選手側にもそのような共通意識が見て取れた。

相馬勇紀の起用と大岩監督のゲームプラン

案の定、鹿島は”個の力”でゲームを決めた。

ボールは大分に支配される展開が続くものの、鹿島が選んだジョーカーは「相馬とレオ・シルバ」の2枚。

ブロックを整える大分に対し、個の力で1枚剥がせる2名の力が重要だと判断したのだろう。大岩監督のこの判断の早さと正確さは非常に合理的なものだった。

この日は相馬が試合を決めたが、突破力のあるレオがゲームを決めた可能性だってあったはずだ。

”想定外”の起きなかった展開において、大岩監督は元々持っていたゲームプランを迷いなく実行できたように見えた。

攻撃の糸口を探った小池のロングボール

鹿島は大分に上手く守られる中で、小池のロングボールから攻撃の展開を探ろうとした。

前半から何度も小池の左足からロングボールが繰り出され、それが前半のうちにゴールに直結する事は無かったものの、安西の時代の鹿島には無かった形で攻撃の糸口を探る事ができた。それは言わばローリスクローリターンの攻撃の糸口の探り方だ。

小池のボールは芯を捉えている事が多いため中途半端に相手に引っかかる事が少ない。必然的に、ロングボールが繋がらずに相手ボールになる際も、相手のスローインやゴールキックから始まるケースが多い。

この”攻撃の糸口の探り方”は、キックの上手い選手がいるからこそ出来る方法と言える。

偶然か必然か、相馬の決勝ゴールも小池のサイドチェンジから生まれたものだった。

今後も我慢が必要なゲーム展開になった時、小池のロングボールを多用していくような場面は見られるかもしれない。

視線を上げるブエノ

この日もブエノは素晴らしかった。

身体能力の高いオナイウへの対応も勿論だが、それ以上にブエノのビルドアップに期待感を持つことができた。

この日の鹿島DFラインのビルドアップは、相手の強いプレスに晒されなかったために難しいものではなかった。しかしそれを差し引いても、ブエノのビルドアップは見どころがあった。

ブエノの素晴らしかった所は、ボールを持った際に「視線を上げて遠くの選手を優先的に見る」という事だ。

これは岩政大樹さんが時折口にする「近くから見る選手」「遠くから見る選手」という区分けをイメージしてもらうと分かりやすい。その言葉の意味は文字通り「ボールを持った時に自分の近くの選手から見るか、遠くの選手から見るか」という話だ。

ブエノはボールを持った時、最前線の伊藤翔や逆サイドの白崎まで見る。一度顔を上げて視線を遠くに飛ばす。

そうする事によって相手のDFラインは「ロングボールの可能性」を僅かにでも感じることとなる。ブエノが視線を上げた上でロングボールではなくショートパスを選択した時、相手のDFは僅かながらアクションが遅れる可能性が出る。これが「視線を上げる」事の効果だ。

相手のDF陣のベクトルを迷わせる事が出来るのだ。

犬飼・ブエノの「持ち出し」

また、「ボールの持ち出し」も犬飼・ブエノともに良いものを見せてくれた。これは町田やスンヒョンの大きな課題であり、逆にブエノ・犬飼のストロングポイントでもある。

CBがボールを持ち出して相手のFWを外すと、相手の守備に”ズレ”を生じさせる事が出来る。

この日の犬飼とブエノは、何度もボールを持ち出してオナイウを外した。もちろんこのゲームでは相手のFWが1枚で構造的に外しやすかった点は考慮すべきだが、然るべきタイミングで、然るべきプレー(ボールの持ち出し)を実行できたのは良い点だった。

鹿島にとってDFラインのビルドアップは課題であったが、ブエノと犬飼のコンビなら、良い水準のビルドアップを展開出来るかもしれない。そんな期待感を持つことができた。

MVP

ブエノ!!!

今後の活躍にも大きな期待を持てるパフォーマンスだった。

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