サッカーが日常に戻ってきそうなので、久しぶりにアントラーズブログを更新します。
6月に入ってから、日テレジータスで2016のクラブW杯が放送されている。そのゲームを改めて見て感じた事について書きたい。
今回は柴崎岳がいた時のビルドアップについて。
柴崎が絡んだビルドアップ
改めて2016年の鹿島を見ていると、今の鹿島よりもビルドアップでのドタバタ感が無い事に気づく。
特に、柴崎が絡んだ時のビルドアップはやはりレベルが高かった。
柴崎が絡んだビルドアップの何が具体的に良かったのか、と考えながら見ているとポイントがいくつかに分けられると感じた。
- 次の次までは最低限考えている(他人視野)
- スペース認知とスペースの創出
- 「苦し紛れ」の少なさ
それぞれを1つずつピックアップして書いてみたい。
次の次までは最低限考えている(他人視野)
まずはこれ。
改めて柴崎岳が絡んだビルドアップを見ていると、「自分がパスを出した相手が次に何をするか」までは少なくとも考えられているように見えた。
例えば自陣からボールを運びたい時。柴崎が昌子と植田の間より少し前、アンカーのような位置に入ってビルドアップに加わるシーン。
柴崎が相手のプレッシャーを受けて前に運べない時に、昌子に下げる。
この「昌子に下げる」が、「ただ昌子に下げる」のではなく、「相手の動きと昌子の次のパスを想定して下げる」という場面がほとんどだった。
具体的に言うと、相手が柴崎に対してプレッシャーをかけ、下げた先の昌子にも恐らくプレッシャーがかかる。でも左サイドにいる山本脩斗までは相手が連動していない。
このような場面で柴崎は”昌子を使って”山本にパスを出している。
もちろん昌子に出すパスも、そのまま左サイドに出しやすい、メッセージ付きのパスだ。
このようなビルドアップの能力に長けているため、柴崎が加わったビルドアップはバタバタしている事が少ない。
柴崎が攻撃の方向を導いてるような、そんな感覚だ。
柴崎自身も次に昌子がパスを出す場所が分かっているので、山本へのフォローが相手よりも早くなって次の攻撃の組み立てにも参加出来る。
柴崎自身のブログ(Vol.8 他人視野の想像力)を読み返してみると、このようなプレーを「他人視野」という言葉を使って書いてあったので、彼は恐らく意識しながらこのようなプレーをしているのだと思う。
スペース認知とスペースの創出
改めて柴崎の加わるビルドアップを見ていると、彼のスペース認知の能力が優れている事にも気付かされる。
マメロディ・サンダウンズ戦では、相手のプレッシャーが「前線(2列目まで)」と「3列目以下」が、試合が進むにつれて分断されていくようなゲーム展開だった。
マメロディの選手たちのプレッシングの強度と連動が、後半から落ちていったのだ。
そうなると柴崎のスペース認知の力が顕著に発揮される。
「相手のどこまでが連動しているのか」「どのスペースで受ければ前を向けるのか」という事を常に首を振りながら確認して、自分や、浮きがちなSBの選手を使って攻撃のきっかけを作っていた。
更に驚くのは、「相手を釣る動き」をしていた事。
マメロディの前線の選手たちは鹿島のCBやGKにまで果敢にプレスをかけた。しかし3列目以降の選手は連動していない。
そうであれば、一度あえて昌子にバックパスを挟むことによって、相手のFWは昌子に食いついてくる。
それを利用して(つまり相手を釣って)、相手FWと相手中盤の間のスペースを創出し、自分は浮いたスペースでボールを受ける。
柴崎は当たり前のようにやっているプレーだからこそ、その有難みには気付きにくいが、今の鹿島を見ると大切なプレーなのだと気付かされる。
「苦し紛れ」の少なさ
最後に「苦し紛れ」の少なさについて。
柴崎の2016年のプレーを改めて見ると、苦し紛れのプレーが少ない事にも気付く。「自分が苦しいから誰かにボールを渡す」という選択をする事が少ない。
むしろ、自分はギリギリまで相手を引きつけて、それによって次のプレーが有利に進むならば、そうしてるイメージすら持つ。
自分の所でリスクを回避しているのではなく、自分の所である程度のリスクを負ってるイメージだ。
当然、CBやSBなど、柴崎と共に攻撃を組み立てる選手にはリスクが少ない状態でボールが来る事が多い。
もちろん、柴崎の所である程度のリスクを負ってるけれど、彼は技術が高いのでそう簡単にボールを失わない。というのもセットである事は理解してほしい。
鹿島のレベルアップのヒントになるプレー
改めて2016年の鹿島を見ると、今の鹿島アントラーズのレベルアップのヒントになるようなプレーが見え隠れしていた。
スタイルとして2016年と今の鹿島の比較は出来ないけれど、個々のプレーの質や判断力は参考になる。
改めて歴史を振り返るのも悪くない。