2021鹿島アントラーズ報告書【GK&DF編】

tkqさんのジェフの最終報告(https://note.com/tkq/n/n5362ee65dfaa)のパクリです。あんなにユーモアあふれる文章は書けないので真面目バージョンになると思いますが、試しにやってみましょう。今回はGKとDF編です。

無冠に終わった2021年を、記録というよりは感覚的な「お気持ち」の部分を残しておきたいなと思います。園子温も「正しい記録を残すのはドキュメンタリーや報道でいい。映画は感情を記録するものだ。」みたいな事を言ってた気がします。そういうブログになると嬉しいです。

GK編

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クォン・スンテ

鹿島の背番号1は34節にようやく今年のリーグ戦初出場。そこからの5試合で4勝1分け(1失点)とハイレベルなパフォーマンスを見せてくれた。4位という順位をその名の通り死守してくれたのは紛れもないクォン・スンテだった。彼がいなければ最終順位はいくつか下がっていたと思う。

なぜ無冠が決定するまでクォン・スンテを起用しなかったのか、私は10年後も呪いのように文句を言い続けてると思う。

スンテが出始めてから関川が覚醒してきた感があったのは思わぬ産物。CBとて全てを判断していくのは難しいので、細かいところをスンテが判断してくれたのは助かったのでは。スンテが出ている時の関川は目の前のプレーに集中できてる感があった。

クロス対応やセービングなんかは勿論周知の通りのレベルの高さだったが、沖から替わって一番感じるのは「プレスへの耐性」だった。相手FWに多少寄せられてもビクつかずにボールを捌いてくれるので、CB⇔GK間のパス交換が増えて、チームとしても安定してボールを持てる時間が増えた気がする。

ずっとスンテを使え、という話ではなく、沖と健全に競い合うスンテが見たかった。

気になる来季の行方だが、私は絶対必要な戦力だと思う。が、スンテの立場だったら今年の処遇は我慢ならないだろうなという気もするので、もしどこかに移籍してしまっても彼を責める気にはならない。それくらい不可思議なGKの起用法だったと思う。敵になったら強敵すぎるので国内のチームには絶対行かないでください。

早川 友基

天皇杯のYSCC横浜とのゲームくらいしか見れなかったので、早川については特に書くことはなし。

そのゲームでは足元の技術やプレーエリアの広さを見せてくれて、沖ともスンテとも違う良さがあるな、と感じた。

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沖 悠哉

今年の沖はいくつかの課題が浮き彫りになった印象。

ミドルキック、ロングキックは勿論フォームが美しくて上手いのだが、相馬さんに替わってからザーゴの時のように攻撃の時の配置でズレを作っていくようなチームではなくなったので、自慢のロングフィードが炸裂したシーンは多くなかったように思う。密集したエリアやFWに蹴るだけなら沖じゃなくても出来る。

実はセービングが非常に良くてファインセーブをいくつも見せてくれたが、プレスへの耐性が弱いのがどうにも気になってしまう。川崎(特にダミアン)には明らかに沖のプレス耐性の弱さを狙われていた印象。

コントロールオリエンタードの面でもスンテと比較するとまだまだ成長の余地あり。ワンタッチで捌いたり、CBを動かして預けたり、という面はスンテからガンガンに技術を盗んでほしい。あと左足も臆する事なく使うとか、今後のキャリアを考えていくと大事になりそう。GKが左足使えないとプレスへのハマり方が違う。

去年は飛躍の年だったが、今年は壁にぶつかった年だったと思う。これを乗り越えてもう一皮剥けてほしい。

山田 大樹

出場機会なかったのでコメントなし。頑張っていただきたい。

DF編

安西 幸輝

ポルトガルで努力してきた左サイドの突貫小僧。

ポルトガルでの努力の成果を遺憾なく発揮してくれるかと思いきや、合流から数試合は何ともコンディションが上がってない感じで、9月後半あたりから徐々に上がってきた印象。

安西が加入以降、チームも安西の攻め上がりをベースにした形を敷いて、それでそれなりに結果が出ていたので悪くない夏の補強だったと言えるのかもしれない(それでも川崎には勝てなかったが)。

安西加入によって永戸・広瀬の出場機会は激減。

別に安西が悪いわけではないが、「安西を起用するなら右SBは常本じゃないと成立しない」という、安西を起用する事をベースとしたSBの人選になっていったのが今年の鹿島だと思う。相手に合わせて人選を変えるのではない、安西を使うために人選をするのだ。という印象を持ってしまった。繰り返すが、別にこれに関しては安西が悪いわけではない。

プレー面の話をすると、左サイドでありながらカットイン、あるいは切り替えして右足のクロスが8割。縦に強い選手なのにプレーが内に内に行ってしまうのが勿体ないので、個人的には右SBやってほしい。守備面は正直言うと不安が多いけど、今年は頼りになる後輩の町田が後ろで広範囲をカバーして、逆サイドの優秀な新卒・常本が横のスペースを迅速に埋めてくれたので、チームとして「安西が突っ込んでいくのはOK」という変速3バックに落ち着いた。

かなりスプリントするけど、後半最後の方でもまだ元気なのは流石だなと思う。まだ2番には見合ったプレーには及んでない。

永戸 勝也

安西の加入と共に出番がめっきり減ってしまった永戸。

左利きだし、キック上手いし、守備も結構頑張ってくれるのでもっと出番を与えてあげてほしかった。SBのマネジメントについてはさっきも書いたけど、なぜかSBが安西中心の人選になっていたのは未だに謎。

多くの監督は「4バックの左」なら安西ではなく永戸を選ぶような気もするが、最後の方は左SB安西に最適化された戦い方をしていたので永戸を起用するのは難しかったか。町田が安西のマイナス面を見事に消してくれたので、皮肉にも町田の成長によって永戸の必要性が薄まってしまったと見る事もできる。

ただ、出番が減ってしまったのは永戸自身にも課題があったと思ってて、チームが沈むとなかなか存在感を出せない印象がある。またキッカーとしても能力があるのに「俺が俺が」というタイプではないので、我の強い面々にキッカーを譲る場面も多かった。たぶん優しい人間なんだと思う。

ロングフィードなんかも必ず狙ったところにちゃんと蹴るので、内田篤人のように「相手こっちに密集してるから対角線蹴っちゃえー」みたいな良い意味で無責任なプレーが出来るとプレーの自由度が上がりそうな気がする。たぶん真面目な人間なんだと思う。

移籍の噂もあるが、私としては勿論チームに残ってほしい人材。新監督の性質によっては安西よりも必要とされる可能性も高いので、永戸が移籍してしまって、結局また別の左利きSBを探す、みたいな展開は見たくない。

ブエノ

出場機会少なかったので特にコメントなし。

私はユニフォームも持ってるくらい好きなので戻ってきてくれて嬉しいが、成長した町田、覚醒の感がある関川にこれから割って入るのは中々に難しいような気もする。

エースキラー的なポジションを狙っていきたいところだけど、それも関川が担えそうな予感もある。

あとブエノみたいな選手が出る時は絶対にスンテが良いと思います。

ブエノの筋肉が躍動する試合をまた見たい。

広瀬 陸斗

このレベルの選手でリーグ戦9試合627分出場ってのは少なすぎる。

広瀬の問題というよりは鹿島が勿体ない事をしている印象。

SBの人選が安西中心の~(以下省略)。

つまり安西を使うなら常本じゃないと成立しない戦法だったので、そしてその戦法からバリエーションをつける事も基本的には無かったので、広瀬のプレーを見る機会は極端に少なかった。

ガンバ大阪戦のアラーノへのクロスは本気で痺れた。久々の出場であのクロス、タッチライン際からのクロスでアシスト出来るのは広瀬だけだと思う。守備が特段苦手なわけではないが、同ポジションの常本が守備職人すぎるので見劣りして見えてしまうのは事実。

常本とは序列があるように見えちゃうが、実際はそんな事は全くなく、むしろ永戸同様に監督次第で余裕の1stチョイスになる選手だと思う。なので来年もいてください。このレベルの選手は本当に獲得できません。

あと関川の面倒をよく見ているみたいなので、関川のシーズン終盤の覚醒にも一役買ってくれたんだと思います。見えないところで。

林 尚輝

ルーキーイヤーでリーグ戦6試合454分出場。悪くない数字。

新人ながらプレーの波もそこまで大きくないので、戦力としてきっちり計算できる選手。グッドプレイヤーだと思う。

身体を放り投げる守備や対人は非凡なものはあるが、J1レベルだとまだもう少し成長を期待したいところ。

DFの能力値のバランスは良いとは思うが特筆すべき点が無いのも事実。

町田がもし海外移籍するような事態に備えて、可能なら左CBとしての腕も磨いてほしい選手。(関川は右が良いでしょう、たぶん)

優しそうに見えて熱いハートが垣間見えるシーンも少なくない。シーズン後半は関川にポジションを譲る形になったが、来年は新監督のもとでバチバチに競争してほしい。個性が見たいっすね、個性が。

町田 浩樹

今年、鹿島の壁になったと言っても過言ではない町田浩樹。

リーグ戦34試合出場5得点。優勝できなかった事を除けば、素晴らしいシーズンだったと言えるでしょう。私の選ぶチームMVP。

安西が起用されるようになってから広範囲のスペースを守る事になり、むしろ町田の凄みが顕著になったという印象もある。これは安西に感謝すべきなのかもしれない。町田の成長のために広大なスペースを町田に預けてくれてありがとう。

ほとんどの対人で負けないし、空中戦もまず負けない。相馬さんの鹿島はあまりハイプレスをかけなかったので(ちゃんとした)ロングフィードがバンバン飛んでくるんだが、それを毎回きっちり跳ね返してくれたのはあまりに大きかった。安西の背後を全て消してくれたのも大きかった。5点取ってくれたのも大きかった。

課題としてはラインコントロール、ないし前線の選手のプレッシングのコントロールだと思う。最終ラインを上げてるわけではないのに、荒木やピトゥカが突貫ハイプレスを突然仕掛けると、高確率で鹿島は窮地に陥る。今年の鹿島は崩されてる時のパターンに規則性が結構あったので、そのあたりまで認識してコントロール出来たら町田はすごい選手になれると思う。

町田が相手を止めるたびにキングダムのこのコマ↓が脳裏をよぎってました。町田浩樹、不抜。

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常本 佳吾

よくわからないけど性格に難があるらしい常本。

大卒1年目でリーグ戦26試合、2131分出場は素晴らしいの一言。

ザーゴの時は出番が少なかったが、相馬さんに替わるや否や右SBの1stチョイスに。

ザーゴが広瀬を好み、相馬さんが常本を好むというのは凄く分かる気がする。相馬さんも監督を引き受ける際に「まずは守備から」的なオーダーを受けていたようだし、そういうアクシデントも常本にとっては追い風だったのかも。

私がSBの選手だったという事もありSBのプレーはよく注目してしまうのだが、常本は「足さばき」が最高なのである。

ボールを跳ねさせないように足を懸命に伸ばして触る(跳ねさせるとボールが浮いてる間に相手に詰められる)とか、相手がボールに触れない間にグッと距離を縮めちゃうとか、攻撃時にボールを見ながら幅を取るためにバックステップを踏む時のスムーズさとか、クロス対応する時の距離感の縮め方とか。

そういう超基本の足さばきがチーム内で抜群に秀でてる。

地味にコンディションの波が無いのも好印象。

広島戦のゴラッソなんかは「ボールを跳ねさせない」の顕著な例ですね。頑張って足を運んでボールを絶対弾ませないこと。

欠点というか課題を挙げるならば、攻撃時にどうしても小さいスペースを使ってプレーしてしまうところ。ショートパス、ないし同サイドの前線へのロングボールが多いので、常本から逆サイドの対角線に一発大きな展開、というのはあまり無い。それが無いので相手は思いっきり常本サイドに圧をかけて守れてしまう。つまり常本からのパスは受け手が結構キツい状況が多い。これも前述の内田篤人先輩のプレーとか参考にしてほしいところ。

攻撃面も欲を言えば求めたいところだけど、今年に関しては安西システムの弊害で守備職人としての仕事が7割だったので、十分なプレーぶりだったと思う。

終盤はアラーノとの(守備の)連携が徐々に上向いてきていたのは好印象だったものの、常本が前にプレッシングに行った時が実は鹿島の弱点の1つだった事も記しておきたい。関川が2枚を見なくちゃいけない。みたいな場面は存外に多かった。この辺の成長については来年見守っていきたいポイント。

関川 郁万

鹿島の若頭、関川さん。

入団以来ずっと期待していた選手なので、今年終盤の覚醒感はとても嬉しい。

13試合に出場したが、最初の半分はパフォーマンスが不安定で、後半の半分はかなり良くなった感じ。スンテが出るようになってから明らかにプレーの安定感が増したのは、決して無関係ではないはず。

(逆に言えば沖と今また組ませたらどうなるのか、というのも気になる)

関川のプレーは良い意味で肝が座っている。ミスを恐れてない、とも言い換えられるかもしれない。

終盤戦の攻撃面では相手の中盤ラインを突き破る縦パスを何本も入れていたし、対角線へのフィードも抜群。「出しても大丈夫かな」みたいな一瞬の迷いを彼からは感じないので、肝が座っていると表現したい。今のサッカーでは一瞬迷ったらもう遅いので、関川みたいに即断でリスクのあるパスを選べる選手は重要。

対人の面も大きく成長したが「まぁ骨格的にもそのうち無双するだろ」という印象を持っていたので、驚きはない。思ったより殻を破るのが早かった。

スンテとの相性で言えば、おそらく関川はプレスを受けていたとしてもボールに適度に触っている方がリズムが出るタイプなのかなと思う。

沖の時は沖がフィードを選択する場面が多く、沖と関川の間でのパス交換は少なかった。スンテはシンプルにCBに預けてくれる場面が多く、そこから関川の縦パスやフィードを引き出してあげる事で彼自身のリズムが乗ってくるタイプのようにも見える。

課題は町田と同様でラインのコントロールなわけだけど、他に挙げるならば常本(右SB)をコントロールする仕事はもっと向上できると思う。おそらく今はほとんどが常本自身の判断で常本が動いているが、そこを少しCBがコントロールしてあげられると関川が理不尽に2人を相手にするような場面は減ると思う。

新監督がどのような志向の監督かわからないが、おそらくどのようなタイプの監督だったとしても、アジャストして信頼を得られるポテンシャルはある。来年を飛躍の年にしてほしい。

犬飼 智也

今年の夏くらいまではこれまで通り主力としてプレーしていた犬飼。

9月からは林・関川にポジションを譲る事になり、終盤はクローザーとしてプレーした。

今年のパフォーマンスが特別悪かったわけでも良かったわけでもないが、シーズン序盤(ザーゴの時)にもう少し踏ん張って成績を残せれば、鹿島の最終順位も変わっていたかもしれない。ザーゴ政権下のCBといえば犬飼がリーダーだったし、彼のプレーが攻撃面でも肝だったから。

「犬飼は良いプレイヤーだが、チャンピオンチームのCBとして少し弱いのかな」というのがここ数年の私の正直な思いでもある。

ゆえに相馬さんが林や関川に出番を与え、一定の成果を出したというのは鹿島の未来にとって重要な事だったように思う。

とはいえ、若いDF陣の中で最も経験値があるのは犬飼なのは間違いなく、また、もし町田に海外移籍の可能性があるなら左CBの第一候補は犬飼になるだろう。

リーダーシップもあり、経験値もあり、左右CBが出来て、ラインコントロールも苦手じゃない。実はそのようなキャラクターが鹿島のCBでは超貴重なので、来年以降もチームに必要な戦力なのは間違いない。犬飼以外のCB陣はなぜか喋るのが苦手なのが凄く困る。

 

 

 

中盤とFW編は時間がある時に書きます。

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