2021鹿島アントラーズ報告書【MF編】

前回(GK&DF編)の続きです。忙しい人はアラーノの箇所だけ読んで下さい。

前回を読んでいない方はこちらからどうぞ。↓

2021鹿島アントラーズ報告書【GK&DF編】

MF編

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レオ シルバ

今年で36歳の鉄人レオシルバ。
シーズン中盤まではコンスタントに試合に出続けるも、終盤は三竿-ピトゥカのコンビに落ち着いたため出番減少。
鹿島に加入するボランチが鉄人レオシルバの壁を超えられず、常にレオがピッチに立ち続ける光景がここ数年続いていたが、ピトゥカがようやくレオの壁を超えていったように感じるシーズンだった。レオとしては面倒を見るブラジル人の後輩が自分を超えていくのは、悔しさも嬉しさもあったでしょう。
ブラジル人と日本人の架け橋になってくれていたのは様々なメディアからも伝え聞く通り、ブラジル人だらけの鹿島アントラーズにおいて重要な立ち位置だったと思う。惜しむらくは、ピトゥカとのコンビがいまいちハマらずに勝ち点を稼げなかった事、今季のザーゴ政権下で重宝されていたけど結果を残せなかった事。
レオは上手いし相手にとって嫌な選手である事は間違いないのだが、案外味方とのフィーリングがちょっと合ってない事が多いのがずっと気になってる。プレーリズムが独特というか。
来シーズンは鹿島からいなくなってしまうのでは…?という噂もあるが、個人的にはタイミングとしてはお互いに適切なように感じる。鹿島はレオからの脱却をしないといけない(脱却できつつある)し、レオもまだまだイケそうなので主力としてプレー出来る新潟なんかに行ってJ2の猛者どもからボールを狩り続けると全員ハッピーターンなのではないでしょうか。もちろん来年もいてくれるなら応援する。

永木 亮太

鹿島のスタメンが発表されるたびに「永木がいない!」と、Twitterが阿鼻叫喚のタイムラインになる事は2021年の恒例行事になってしまった。

彼ほどの選手が452分しか出場していないというのは、なんとも贅沢というか勿体ないというか、そういう気分になる。

序盤戦のザーゴ時代はまずまず試合に絡んでいたものの、ピトゥカの加入&相馬さんの就任と共にベンチにすら入れない日々が続く。正直なところを言うと「これだけボランチの選手いるのに、またボランチ獲得するの?」という編成の犠牲になってしまっているように感じる。もはや相馬さんの問題でも無い気がする。実力者のボランチの誰かをベンチから外さなければならない状況だったから。

出番が少ないのに試合に出ればいつでも「いつも通りの永木」を見せてくれるあたりはさすがだし、もはや尊敬に値する。サポーターから異常に愛されているのも分かる。私も1人の人間なので、彼のプレーにはさすがに胸が熱くなる。

来年は移籍の噂もあるが、果たしてどうなるか。鹿島が好きな私は「残ってほしい」と思ってしまうが、私が彼の親しい友人なら「移籍しなよ」と言うと思う。それくらい鹿島は永木を使えてないし、来年以降に永木を上手く起用するビジョンも見えてない。それが悲しくも虚しい。

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ファン アラーノ

「無限トランジションマン」「ゲーゲンプレスの申し子」「ロングカウンター突っ走り少年」「自分のミス帳消し男」「上田綺世の恋人」など、異名を作ろうと思えばいくらでも作れるのがファンアラーノ。

去年のアラーノは「スタンダードな吹奏楽部に突然シンセサイザーを持ってきてEDMをやり始めたやつ」みたいな感じだったのだが、今年はやっとみんなアラーノのシンセサイザーの音色にも慣れて、時折EDMの音が混じる吹奏楽部みたいな感じに落ち着いた。

去年はサポーターからも「え、下手じゃん。みんな普通の吹奏楽やってるのに何やってるのアイツ」という視線を送られていた彼だが、徐々にプレースタイルが浸透してくると麻薬のように彼のEDMが癖になってしまう魅力を持っている。

今年の成績に目を移すと、献身的だし、走れるし、去年よりも致命的なミスも減ったので、今年は彼自身の成長を感じた。

相馬さんは「アラーノをとにかく走らせてWBのような仕事をさせて、守備面で疲労が見えたら交代する。」というマネジメントで彼を起用していた。守備ではWBのような仕事をしていたけど攻撃でもそれなりに結果を出していたので十分に機能していたと思う。

ボールを握りたいザーゴのサッカーでも、ボールを追いかけることの多い相馬さんのサッカーでも評価されていたというのも忘れてはいけない。相馬さんのサッカーでは、自分自身はハイプレスに行きたいんだろうけどチームの事を考えてグッと我慢するシーンも多く、吹奏楽部の事をちゃんと考えて演奏できるタイプのシンセサイザー奏者なんだなというのは個人的な発見だった。

ちゃっかりセットプレーのキッカーにも名乗りをあげちゃうお調子者の一面もあるが、キッカーはやらないでほしい。※セットプレー(守備)のロングカウンターでは非常に素晴らしい動きをしてくれているとは思う。

来季以降のファンアラーノだが、個人的にはあと数年のアラーノが一番”美味しい”年齢だと思うので、鹿島でプレーしてほしい。まだ伸びるだろうし、脂がもっと乗ってくるだろうし、チームメイトもサポーターも2年かけてようやくファンアラーノのスタンスにアジャスト出来たので。

どうやら満さんがボンヤリと実行したいと思っているであろうサッカー(ハイプレスとか縦に速いとか??)にもアラーノはうってつけの素材だと思うので、来年もいてくれると思うし、ここで手放したら勿体ないと思う。

前線の選手である、という事もあるだろうけど、スタジアムでは「ファン!ファン!」と色んな選手から指示を飛ばされ、それを理解しているのか理解してないのか分からない雰囲気を出してEDMを弾き続けるのもアラーノの可愛い所である。

土居 聖真

極めてコメントが難しいのが土居聖真。

リーグ戦の出場試合数は荒木と並んでチーム1位と、年間通じて試合に出続けた聖真であるが、フラットな目線で見れば今年は「まずまずの年」だったのではないだろうか。

他の選手と感覚が違うので、評価が難しい選手だなとは思うが、相馬さんのチームでは(主に守備面で)聖真がチームにもたらした安定はかなり大きいと思っている。※詳しくは追って公開するYouTube動画などで話します。

しかし攻撃面になると聖真のリズムは良くも悪くもチームへの影響が大きいので、そこを中心に大きく評価が分かれるのだと思う。良く言えば「攻撃のターンを作ってくれる選手」であり「ボールを守ってくれる選手」だが、悪く言えば「怖くない選手」であり「ゴールに向かわない選手」である。

鹿島の下部組織出身で、キャリアも長い中堅選手なので、彼のプレーってのはチームの指標になる。プレー時間が長いのであれば尚更である。

冒頭には「まずまずの年」と書いたがそれは普通のチームの普通の物差しで見た場合であって、鹿島の中心選手として考えれば「全然物足りない1年だった」という評価になる。チームというのは中心選手の水準以上のものは基本的には出せないと思うので、彼が「まずまずの水準」でプレーを続けて、しかも試合に出続けられるなら、鹿島も「まずまずのチーム」になると思う。

その辺も含めて、相馬さんには「この水準じゃ鹿島はダメだよ」というマネジメントをしてほしかったなと思う。つまり、聖真にはもっとやってもらわないと困ります。

和泉 竜司

約2ヶ月程度の負傷離脱があった和泉。
しかし、怪我の期間を除けばザーゴにも相馬さんにも信頼されていた選手の1人である。交代の多い2列目の選手という事もあり、復帰後は出場機会も多かった。
激しいプレーを厭わない事、献身的である事、必要最低限を遥かに上回る技術を兼ね備える事、など、特に大きな欠点のない”優秀”な選手だと思う。

しかし彼は突き抜けた個人技を持ち合わせてるわけではなく、攻撃スタイルの欠如した相馬さんのサッカーにおいては存在感が薄くなりがちだったのは事実。

おそらくチームのスタイルや約束が明確にあって、それに合わせて起用したらガッチリ身を粉にして働いてくれると思うが、「アドリブでアレコレやってね宜しく」というスタイルでは真面目な性格が災いしてか印象に残りにくい。

マネジメントが悪いのか、和泉が悪いのか、で言えば確実に前者。来年以降もチームにいてもらって、しっかりとした土壌で大輪の花を咲かせてほしいものです。

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荒木 遼太郎

いよいよ全国区にバレてしまった熊本の天才。
彼の場合は和泉と逆で、「アドリブでアレコレやってね宜しく」という攻撃のスタイルでは自由に振る舞えるので、強気の性格も相まって目立ちまくる。相馬体制になってから「荒木、中央で何か上手いことやって」状態のチームを必死に牽引してくれた。
上っ面じゃない本気の負けず嫌いである事がプレーや態度から伝わるし、敵味方・年齢を問わずに試合中は全く遠慮をしないのも本当にプロ向きだと思う。外国人選手からプレースキックをぶん取る高卒2年目の選手なんて最高じゃないっすか。
彼はおそらく感覚的にプレーするのが好きなので、大枠で言えばピトゥカと同じタイプだと思うが、なぜかピトゥカとは案外フィーリングが合ってなかったのは少し残念。
また相馬さんの最後の方のサッカーはハイプレスを諦めていたので、ボールを追いかけてアグレッシブに行きたい荒木のスタイルとはフィットしていなかったなとも思う。シーズン後半に起用が減って結果も出にくくなっていたのは、その影響もあると思う。
彼個人としては素晴らしいシーズンだったと言えるが、本当の正直な所を書くと「これ以上、今の鹿島にいて果たして彼が得るものがあるのか…」という気持ちではある。
永木の時と近い言葉を書くが、鹿島を応援する私は「もう少し鹿島で見たい」と思ってしまうが、私が彼の親しい友人なら「今すぐ海外行きなよ」と言うと思う。それは間違いなく、100%言う。
彼の旅路は、これまで日本人が見れなかった場所まで届く可能性がある。半年だって無駄にしてはいけないと私は思う。
今年のチームを救ってくれてありがとう。

アルトゥール カイキ

謎のヒゲモジャマッチョマン。
このマッチョマンはザーゴが欲した前提で獲得したのに、合流する頃にはザーゴがいなくなってしまった不運な男である。
相馬さんもカイキの起用法について迷っていて、シーズン終盤にようやく「あれ、カイキめっちゃ良いな……?」と気付いた雰囲気だった。
実際、守備が出来て、エアバトル強くて、競り合い強くて、決定力があって、トランジションも速くて、カウンターでも走れて、という実はかなりの優良助っ人だった。おそらくどんなタイプの監督でも、Jリーグであれば重宝されるようなタイプだと思う。
特に決定力の部分とエアバトルの部分が他の選手たちと大きく違うストロングなので、カイキは他の選手の替わりが出来るけど、カイキの替わりはいない。という状況だった。隠れストライカーというか、とにかく2列目の中では異質で貴重な存在だった。
来年どんな新監督になってもある程度の出番があるであろう事は間違いない選手だが、移籍を信じられないくらい繰り返している選手なので来年もいてくれるのかは不明。良くない代理人でもついてるのかな?と勘ぐりたくなるほどである。
あの筋肉と得点力は魅力なので、あと1年くらい応援させてください。

三竿 健斗

鹿島のキャプテン。
ホーム最終戦の挨拶を聞いても、色々と思う所があるのだろうなーという感じだが、まぁその辺は今回は触れない。
今年はピトゥカが加入してから「ピトゥカ・レオ」のコンビの時が何試合かあったのだが、それ以外は基本的に先発で出場。キャプテンらしく責任感の強いプレーが目立った。
ピトゥカの野性的な動きに懸命に合わせて、キングダムの介億ばりにギリッギリのバランスで中央のスペースを死守してくれた。
キングダム考察】蕞の勝利は奇跡の積み重ねだった?13個の奇跡を徹底考察 | マンガフル
ただし、三竿も案外熱くなるタイプというか、前線のノリに同調してボールを狩りに行くシーンも結構あるので、それを外されちゃうと鹿島は100%の確率でピンチになっていた。
本当は三竿の飛び出しはCBがコントロールする場面なんだろうけど、たぶん鹿島のCBはまだそこまでのレベルではないんだと思う。
攻撃面では、今年はデブライネパスやデブライネクロスを何回も試行していて、結果には結びつかなかったけど良い試みだったと思う。来年はモノになると良いね。
来年のスタイルがどうなるか分からないが、ピトゥカを起用するなら来年も中央は三竿が見ないとキツいだろうなーと思う。

ディエゴ ピトゥカ

サポーターの誰もが合流を待ち望んだ大型プレイヤー。
合流早々にポジションを奪ってみせた。
シミッチっぽいプレイヤーかと思いきや、もっと荒削りで野性的で、ダイナミックな選手だった。
アタッキングサードに侵入するまでは正確でリスクの低いプレーを好むが、アタッキングサードに入った瞬間に野生のスイッチが入ってゴールしか見えなくなる癖がある。1本くらいミドル入るかなーと思ったけど、ちゃんとしたミドルは結局最後まで入らなかったのは残念。
正確なパスで攻撃のリズムを作ったり、ロングカウンターの時に大きなストライドで爆走してゴールに結びつけたり、容赦なく手を使ってファウルで止めに行ったり、自分のポジションを完全にシカトしてボールを奪いに走ったり、とにかくピトゥカが出てると彼を中心にゲームが回りだす。
「モダンなサッカーへの適応は難しいのかな」という気がするので、来年どうなるのか、期待より不安が大きい。
ザーゴ×ピトゥカがどうなっていたのか見たかった……。
SBやCBも出来るという情報が獲得時に流れてた気がするが、どうやってDFラインやらせてたのよ。

小川 優介

出場機会無かったのでコメントなし。頑張って下さい。

遠藤 康

鹿島一筋のベテランは、ほとんど全て途中出場だったがシーズンを通して試合に絡んだ。
意外とザーゴはボールをちゃんと保持したい男だったので、リズムを作ってくれるヤスを重宝していた印象がある。相馬さんはどちらかと言えばクローザーっぽい仕事を任せるか、あるいは流れを変えたい時に起用するイメージだったか。
シュートの力強さはどうしても若い頃よりも落ちているのは否めないが、正確なプレーの一つ一つや落ち着いたリズムや判断は「強かった頃の鹿島を知ってる選手だな」という感じがする。
ヤスのテンポは昔ながらの鹿島のテンポなのだが、今は吹奏楽部でEDMを演奏したいアラーノや、強引にピアノソロを弾き始めるピトゥカが基盤になっているチームなので、ヤスが絡んでグルーヴが生まれる瞬間は多くないのは事実。
来年も当然のようにチームにいてくれると思っていたが、なんとビックリ移籍の噂も。私は移籍しないでほしいけど、果たして。

須藤 直輝

出場機会少なかったのでコメントなし。頑張って下さい。
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松村 優太

鹿島の韋駄天の2年目はリーグ戦22試合出場2得点。
ザーゴの序盤戦も相馬さんの中盤戦も試合に絡み続けた。徐々にプロのテンションに慣れてきたのか、夏くらいにはかなり自分の特徴を出せるようになってきた印象。シーズン後半は怪我もあったのかもしれないが、出場機会が少なかった。
相馬さんになってからの鹿島の攻撃は決め事が少なかったようなので、松村みたいにアウトサイドで輝く選手には若干やりにくさがあったか。プレーするポジションやパターンがある程度定められている状態でアイソレーションに集中させてあげるともっと輝きそう。
世界的に見てもJで見ても松村のタイプは需要に対して供給が間に合ってないので、来年はガツガツに実践でチャレンジと失敗と成功を繰り返してほしい。今はとりあえず経験だと思う。
順調に行けば来年の後半あたりに凄いことになるかもしれない。というか、なってほしい。

舩橋 佑

ザーゴが解任される直前に才能を見いだされ、ビルドアップの指揮権を託されたルーキー。しかし相馬体制では出番なし。
ザーゴはボールを握る前提だったから舩橋を使ったし、相馬さんはそうではなかったので使わなかった。そこに舩橋のストロングもウィークも現れてると思う。
編成次第だとは思うが、個人的には来年もっとプレーを見てみたい選手だし、ピトゥカからポジション奪ってほしいなーなんて妄想してる。
今回は終わり。

FW編と移籍してしまった選手たち編はまた時間がある時に書きます。

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