あなたはAmazonプライムのマンチェスター・シティの2017-2018シーズンに密着したドキュメンタリー映像『オール・オア・ナッシング ~マンチェスター・シティの進化~』を見ただろうか。
この映像作品、はっきり言ってヤバい。グアルディオラの戦術やロッカールームでの立ち振舞いが気になる人はもちろん必見だが、サッカー好きであればマンチェスター・シティに興味の無い人にもオススメできる作品だ。Amazonプライムの年会費3,900円(税込)は、この映像作品を見るだけで十分に元が取れたと私は思っている。
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この記事では、『オール・オア・ナッシング ~マンチェスター・シティの進化~』の見どころを紹介したい。
ドキュメンタリーの内容
マンチェスター・シティの2017-2018シーズンに密着。全8回で構成。
1エピソードが約50分なので、おおよそ400分(6時間半程度)で全てのエピソードが見終わる。シティの1シーズンを8回に分けて、シーズン開始からシーズン終了までを綺麗にまとめている。チャプター名は以下。
- エピソード1:大きな期待
- エピソード2:うるさい隣人
- エピソード3:冬が来た
- エピソード4:消耗戦
- エピソード5:ウェンブリーへの道
- エピソード6:美しい試合
- エピソード7:悪夢
- エピソード8:勝ち点100への挑戦
驚愕の高評価
このドキュメンタリー、現時点₍2018年10月時点₎で、とんでもない高評価レビューがついている。42件中40件が五つ星評価で、2人が四つ星評価。ただ、これが大袈裟とは思わないくらい面白い。
戦術家としてのグアルディオラ
『オール・オア・ナッシング ~マンチェスター・シティの進化~』で私が見たかったのは、戦術家としてのグアルディオラの一面だ。
2017-2018シーズンに圧倒的なサッカーを見せたマンチェスター・シティ。そのチームを作り上げたグアルディオラは、いかにしてチームビルディングを行ったのか。どのように対戦相手を分析しているのか。分析結果をどのような戦術に落とし込み、どのように選手に伝えているのか。その全てを見たかった。
見られる戦術は一部だけ
予め断っておくが、このドキュメンタリーで見ることの出来たグアルディオラの戦術は、一部に過ぎない。それはそうだろう。現在進行系で率いているチームの戦術の全てを全世界に晒すことが難しいのは当然だ。
垣間見えたグアルディオラの考え方
それでもグアルディオラの考え方の一部は見ることができる。例えばこんなシーン。
これはとあるエピソードのハーフタイムでの一幕。グアルディオラの戦い方の基本であるポジショナルプレーにおける、CBとピボーテ(アンカー)でのボールの運び方を指示している。
相手が自陣に引きこもって中盤でパスを回せないなら、CBとピボーテでボールを運んでしまえばいい。相手が出てきたら中盤のスペースを使い、出てこないならゴールを狙ってしまえ。という指示だ。
これはチェスや将棋での考え方と同じで、「相手がどちらの行動を選ぼうが攻略できるはず」という所までロジックを突き詰めるのがグアルディオラ流だ。
モチベーターとしてのグアルディオラ
このドキュメンタリーで私が予想外だったのは、モチベーターとしてのグアルディオラの姿だ。戦術的な説明をする映像が最低限である代わりに、モチベーターとしてチームの士気を上げるシーンはふんだんに盛り込まれている。
これがすごい。
「勝ち負けじゃない歴史を作りたいんだ」
「歴史を作るんだ、これこそが我々の人生だ もはや他の人生はない」
自分たちは歴史に残るチームなんだと、選手に聞かせる。これでテンションが上がらない選手はいないだろう。また、これらの言葉は、グアルディオラが自分自身に言い聞かせているようにも見える。
歴史に残るチームを作るには、これほどの熱量が不可欠なのだろう。
バスを停めるモウリーニョ、フェラーリを飛ばすグアルディオラ
個人的に好きだったエピソードはマンチェスターユナイテッドとのダービーを描いたエピソード2だ。
ダービーを迎えるファンの声も紹介している。
ウォルター・スミスさんの
「ダービーでシティが負けると職場で1週間いじめられる」
というコメントは何とも秀逸だ。マンチェスターダービーは、「プレミアの歴史の中で君主として降臨し続けたユナイテッドVS実に40年近くタイトルに縁のなかったシティ」という構図がある。そんなダービーの熱量を垣間見えるのも面白い。
また、イギリスでは「バスを停める」という表現をされるモウリーニョの守備戦術を揶揄するようなシーンも登場する。
「グアルディオラにバスは駐車できない。フェラーリを飛ばすだけ」
という表現にも、座布団を1枚あげたい。しかし、一筋縄ではいかないのがモウリーニョ。その詳細は本編を見てご確認いただきたい。
サッカークラブの裏方
このドキュメンタリーでは、裏方にもスポットが当たっている。よく登場するのがこの人。用具係のブランドン。
コンパニのリハビリで、超寒い部屋に入って身体を動かすという治療があるのだが、それに何故か付き合わされるブランドン。コンパニと一緒に裸で寒い部屋に入る。彼の人柄の良さが伝わるエピソードだ。
このほかにも、チームの裏方を務めるスタッフもたくさん登場するのが、このドキュメンタリーの良い所。サッカークラブは、選手と監督とサポーターだけでは成立しないことを感じさせてくれる。
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ビジネスとしてのフットボールクラブの経営
『オール・オア・ナッシング ~マンチェスター・シティの進化~』には、ビジネスとしてのフットボールクラブの経営も垣間見ることが出来る。
シティが獲得を狙っていた選手や、その進捗についても描かれる。
グアルディオラは『ペップ・グアルディオラ キミにすべてを語ろう』で語ったように、大人数のチームを好まない。各ポジション2名程度のチームが最適だと考えている。そんな中で過密日程を戦うと、怪我人が重なって選手が足りなくなることもある。そこで手腕を見せるのがチキ・ベギリスタインを始めとする強化部門のメンバーだ。
感想としては、私が想定していたよりも、マンチェスターシティは資金の使い方や投資の仕方にはシビアだった。「CBが足りない。ファン・ダイクが欲しい。でも高すぎる。」となった場合に、シティはお金を使ってでもファン・ダイクを獲得するチームだと思っていた。しかし、先方の要求する金額が投資に見合わないと判断すれば、案外あっさりと交渉を打ち切っていた。
オーナーが変わって資金は潤沢なのだろうと想像できるが、投資対効果をシビアに見ており、ビジネスとしてもバランス感覚があるチームだと感じた。
サッカー好きなら見るべき
「マンチェスター・シティが嫌い」「グアルディオラの顔も見たくない」ということでない限り、この『オール・オア・ナッシング ~マンチェスター・シティの進化~』を見ることを私はオススメする。
サッカーが、サッカークラブが、より一層好きになれるはずだ。