スタートダッシュに失敗した鹿島が抱える課題を整理する

開幕から4試合が経過した鹿島アントラーズ。消化試合の数がチームごとに異なる状況ではあるものの、現在は勝点4の14位。開幕からのスタートダッシュには失敗してしまった。

終わってしまった試合の結果は変わらないのだけれど、今一度私なりに今の鹿島の課題点を整理してみたい。

チャレンジのプレーと外国人選手

まずは真っ先に浮かぶ課題はここだ。

今の鹿島アントラーズは「チャレンジのプレー」を外国人選手に頼ってしまっている部分がある。

チャレンジのプレーとは、縦に差し込むパスであったり、1対1で相手に仕掛けていくプレーであったり、相手のタイミングを外すフェイントだったり、強引にでもシュートを打ちにいくプレー。守備面では苛烈なプレスをかけてボールを奪いにいくプレー。

鹿島は、チャレンジのプレーをエヴェラウド・アラーノ・レオシルバに頼ってしまっている部分がある。もちろん日本人選手がチャレンジのプレーを全くしていないのかと言うとそうではないのだが、実際に”怖いプレー”をするのは外国人選手の比重が高い。

今年のこれまでの鹿島は、外国人選手が昨シーズンほど好調ではない。そこでチャレンジのプレーの回数やクオリティが下がってしまっている。

そんな中でも荒木遼太郎がチャレンジの動きを繰り返して結果を残している事や広瀬がチャレンジのプレーを増やしている事が光明の1つではあるものの、まだチームとしての成果には結びついてはいないのが現実である。

ここで書きたいのは「外国人選手が復調すれば良い」という事ではない。「外国人選手にチャレンジのプレーを頼ってしまっている」という状況こそが課題だ。

恐らく鹿島の選手(特に2列目の選手)の多くは「コンビネーションで崩す」という事を得意としているのだと思う。できれば短い距離感でパス交換をして崩したい。しかし、ハッキリ言ってしまうとその質はJリーグチャンピオンになれるレベルではない。全員が遠藤康くらい技術とインテリジェンスがあれば良いのだが、そんな事は無いので最終的にはエヴェラウドに頼る事になってしまう。

だからこそ優勝するためには外国人選手以外にもチャレンジのプレーが必要であり、相手に勝負していくメンタリティが必要なのだ。

具体的に言えばルヴァンカップ・サガン鳥栖戦で和泉のゴールのようなプレーだ。

ゴールを守る相手を迂回した先には「エヴェラウドと綺世よろしく」の着地点しか見いだせない。どこかで相手に向かっていくプレーやチャレンジのパスが求められる。鹿島の選手、特に2列目や3列目の選手には外国人選手に頼らない怖さを持ち合わせてほしい。

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クオリティのコントロール

2つ目の課題はクオリティのコントロール。そもそも”プレーの質が低い”という事が今シーズンは散見される。

開幕のエスパルス戦も、広島戦も、そもそものプレークオリティに問題があった。

「そんなパスミスする?」と思ってしまうような、ちょっと信じられないプレーが続いてしまった。

ボールを保持する事の多い鹿島が、このクオリティでは勝ちを拾えない。と思ってしまうようなシーンが多いのだ。

ここで問題なのは「プレーの質を上げろ!!」という話ではない。長いシーズンを考えれば、ある試合ではコンディションが悪い選手もいるだろうし、特定の試合で上手くいかない選手もいる。

だからこそ監督は「クオリティのコントロール」をしなければならない。これはザーゴに頑張ってほしい問題だ。

「クオリティのコントロール」とは、ターンオーバーの使い方であり、コンディションの見極めであり、交代枠の使い方の事。

ザーゴにとっても未知の過密日程なのかもしれないが、「クオリティのコントロール」を何とかしていかなければ、今年のシーズンは勝ち星を拾うのが難しい。

ザーゴは「時間で交代(あらかじめある程度決めていた交代)」をする傾向にあるのだが、ピッチの状況を見てプランを柔軟に変更する事は得意としていないように見える。広島戦で効いてなかったアラーノを残し続け、得点を取った好調の荒木を下げてしまった事などは分かりやすい例だろう。

あらゆる方法を駆使して、ピッチ内のプレークオリティを維持していくようなチームマネジメントをしてほしい。

プレッシングの精度と強度

ある意味、今の鹿島の生命線とも言えるのが前線からのプレッシング。

それが今シーズンはイマイチハマらない場面が多い。

ボールの取りどころであるボランチの三竿のパフォーマンスが上がりきっていない事が要因の1つではあるとは思うが、それ以上にチームとしての連動が昨年終盤よりも甘い場面が多いように思う。

昨年の終盤はある意味、プレッシングやゲーゲンプレスに振ったメンバー構成になっていったのでそのように感じるのかもしれないが、今年は2列目⇒ボランチ⇒DFラインの各ラインのプレッシングのアクションが少しずつズレているように感じる。

鹿島側のコンディションの問題なのか、あるいは相手のスカウティングで鹿島のプレッシング対策をしっかり練られているのかは私も分からないところではあるが、想定よりも無駄に走ってしまっている(あるいは走るべき所で走れていないために守備に戻らなければいけない)場面は多いように思う。

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犬飼の攻撃参加とリスク

鹿島は相手を押し込んで攻撃する際に犬飼がゲームメーカー的な仕事をする。私はこの時のリスク管理に課題があるように見える。

犬飼がアタッキングサードやアウトサイドまでポジションを変えてプレーする機会が多いものの、その見返りとリスクのバランスが取れていないように見えるのだ。

犬飼が上がっている時に、後ろには町田しかいない。あるいは三竿が気を利かせて”本来犬飼がいるはずの場所”まで下がる。大体はこの2パターンに分類できる。(三竿が下がるくらいなら犬飼が上がらない方が良いと私は思うのだが…)

広島には犬飼が上がった後ろのスペースを明確に狙われていたし、今後も狙われるだろう。それに対する明確な対策も持ち合わせているようには見えない。

これは昨年から露見していた問題でありながら、今年も変わらないのだから恐らくザーゴは問題視していないのだと思う。

しかしこれからも確実に狙われるだろう。

後ろを対策しないならば、前の圧力を強めてこの弱点を隠す、つまりボールを失った際のゲーゲンプレスを猛烈にするか。あるいは弱点を晒したままでも攻めきれる攻撃力を身につけるか。何かしらの変化は必要になると思う。

点が動いた後のマインドの統一

これが最後の課題。「リーダーシップの問題」と言い換えても良いかもしれない。

3-1で勝利した湘南戦を思い出してほしい。2-0でリードした時点でのチームのマインドが私は気になった。攻撃を続けるのか、狡猾に時間を浪費し続けるのか。

ザーゴ以前の鹿島ならば、迷わず時間を浪費する事を選んだだろう。小笠原や曽ヶ端を中心に、時間を使ってフットボールをする事を諦める。チームメイトもそれに続く。”鹿島る”とは、小笠原を中心とした勝利へのマインドの統一に本質がある。

しかしザーゴ就任以降の鹿島は、そのマインドに少しの揺らぎや判断の甘さが見える。ザーゴも守備固めの采配をするような監督ではないので、マインドや判断はピッチ内の選手たちに委ねられている。

そこで私は「リーダーシップ」が気になる。攻め続けるなら攻め続けるで良い。フットボールをやめるならやめるで良い。チームのマインドに揺らぎがある事や判断が甘い事がマズい。誰かが先頭に立ってゲームの状況を読み、チームのマインドを統一させてほしい。

一般的にはGKやCBが時間やマインドをコントロールしやすいポジションなので、沖・犬飼・町田にはそこまでのレベルを期待したいところ。

湘南戦では町田がすぐに勝ち越し点を取ってくれたから揺らぎが目立たなかったが、あの得点が無ければチームのマインドは相当揺れ動いただろう。ちなみに失点シーンでは、沖がスローイングをクイックで始めて、レオがボールを奪われたところから失点のきっかけを作ってしまった。沖の判断の甘さに課題があった。

チーム全体として前への推進力を出せる状況なのか。今は一度落ち着くタイミングなのか。攻撃的なフットボールを標榜しているからと言って常に急いでボールを動かせばいいわけではないはずだ。

リーダーシップを取れる選手が現れて、チームのマインドをコントロールしてほしい。リーダーシップに関してはザーゴがどうこう出来る問題ではなく、ピッチ内で解決しなければならない問題と言えるだろう。

まだシーズンは長いが……

まだシーズンは始まったばかりで、これからいくらでも巻き返す事は可能だろう。もしかしたらここからエヴェラウドが爆発してチームを助けてくれるかもしれない。あるいは新加入のブラジル人選手2名が劇的に状況を変えてくれるのかもしれない。

しかし今回挙げた課題は昨季から継続しているものも多い事が気になる。

加えて怪我人も増えてきた状況&上位陣が順調に勝ち星を重ねているので、早くも鹿島は2021シーズンの正念場を迎えた感すらある。中位~下位に沈むシーズンになってしまうのか、上位に食い込めるのか、ここからの数試合は重要になるだろう。

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