カシマスタジアムで見せられた昌子源のリーダーシップ

2020年8月23日、鹿島アントラーズ×ガンバ大阪。内田篤人の現役最後のプレーの他に、素晴らしいプレーをした選手がいた。

今シーズンからガンバ大阪に加入した昌子源だ。今回は23日の昌子源のプレーについて書きたい。

スタジアムに響いた声

久しぶりに生で見た昌子源は、やっぱり昌子源だった。

観客が応援を制限された状態での試合だっただけに、より昌子源の声はカシマスタジアムに響いた。

「パト(パトリック)!流れて」

「貴史、ナイス」

「ヨングォン、もう少しだけ内側」

「そこは(ドリブルで)勝負しろ!」

「もう(前半)終わるから、このままいこう」

「蹴らせろ!蹴らせればOK」

「あと2分だぞ!」

「最後前でキープしろ」

3バックの中央に入った昌子源は、ガンバ大阪の多くの選手に要所で声をかけ、1-0で先制したゲームをコントロールしようとした。

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強烈なリーダーシップ

昌子源の声の何が凄いか。

それはピッチの外にいる私にさえ「ガンバが向くべきプレーの方向性」が伝わってきたという事だ。

今は引いて我慢する時間なんだな。

今はプレスかけに行くんだな。

このボールは◯◯が処理するんだな。

ここはドリブルで勝負するんだな。

ガンバ大阪の方向性が、観客の私にさえ伝わってきた。言わずもがな、ピッチに立ってる選手や宮本監督にも伝わっていただろう。

サッカーは11人の意思を統一して擦り合わせなければいけない難しいチームスポーツである。

一人でも違う方向を向いているならば、チームは機能しない。

それを擦り合わせるように、1つ1つの細かいプレーに昌子源は声を張った。

結果的に鹿島がガンバから得点を取って引き分けに終わったが、試合を観る限りはガンバが”昌子源のイメージ通り”に逃げ切ってもおかしくはない展開だった。

結果が付いてくるか来ないかは、勝負だから分からない。しかし昌子源がリーダーシップを発揮してチームの方向性を纏めていた事実は残る。彼が取ったリーダーシップは、チームの勝利の確率を上げるものだ。

残念ながら、鹿島アントラーズに昌子源のようなリーダーシップは存在しなかった。

選手のメンタルさえも乗せる声掛け

DFは時に、攻撃の選手に対して守備を要求しなければならない。

昌子源は、些細なプレスバックであったりプレッシャーに「ナイス」と声をかけて、守備の苦手な選手を乗せていた。たとえその守備が上手くハマらなかったとしても、守備をしようとした攻撃の選手たちを昌子源は讃えた。

そのような些細なメンタルケアさえも、勝利の確率を上げるためには必要な事だ。

ピッチの中にメンタルをコントロール出来る選手がいれば、監督はサッカーにフォーカスした指示が出来る。

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関川郁万の怒りと昌子源のリーダーシップ

試合中、アラーやレオが軽いプレーを見せた時に、関川郁万が声を荒げて怒った。

CBとして許容出来なかったのだろう。気持ちは分かるし、私も怒って良いと感じた。

しかし、その怒りの「声」は昌子源が上げた「声」とは次元が違う。

昌子源の声は、味方を動かす声であり、役割をはっきりさせる声であり、チームが今取るべきプレーを方向づける声だった。時には味方を褒めたり、励ましたりする声もあった。自分の感情ベースではなく、チームを導く事や勝利の確率が高くなる事をイメージしていた声だった。

関川郁万の声はどうだろう。

味方に怒るのは良い。けれど関川郁万には「怒り」を超えたリーダーシップを発揮してほしい。チームの勝利の確率を上げるような声を出してほしい。CBはそれをしなければならないポジションだ。

例えば全体を見渡し、相手の狙いを感じながら味方選手を動かして配置する事。

特に今年の鹿島は前線からプレスをかける機会も多いので、DFが全体をコントロールしないと致命的なピンチを招きやすい。

関川郁万に限らず、今年の鹿島のDFライン(CB)の課題の1つと言えるだろう。

誰がリーダーシップを発揮するのか

小笠原満男・内田篤人が引退し、鹿島は「誰がリーダーシップを発揮するのか」という問題に直面する。

チームを纏め、試合中に方向性を示し、他の選手のメンタルに火を付け、自分がリーダーシップを発揮する事で勝利の確率を1%でも上げる。

優勝をするようなチームには、必ず優秀なリーダーがいる。

Jリーグのレベルであれば特に、リーダーの有無は勝ち点に大きく響いてくるだろう。ましてや今の鹿島は結果も出ておらず、精神面から崩れていってしまってもおかしくない状況だ。

若くたって構わない。この状況でチームを引っ張る、次世代の新たなリーダーの出現に期待したい。

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