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安部裕葵が語った西大伍だけが持つ”タイミング”

FREAKS2018年10月号、安部裕葵のインタビューで興味深い発言があったので記事にしたい。

興味深かった発言はこちら、引用させていただく。

大伍君の細かいステップを見ていて気づかされたんですが、判断のタイミングがいくつもあるので、直前で選択するプレーを変えられる。パスを出すにしてもいろいろなタイミングで、いろいろなところにパスが出せるんです。そこが本当にすごいと思うし、吸収したい。例えばですけど、大伍君は1秒間に4回のタイミングを持っているとしたら、僕は2回くらい。

西大伍は「細かいステップを踏むことで、多くの(パスを出せる)タイミングを持っている」というものだ。

西大伍の「タイミング」。ケーススタディ

このプレーを説明できる動画は無いかな、と探していると、素晴らしい動画をUPされてる方がいた。紹介させていただこう。

この、西大伍がボールを持った時の動きに注目してほしい。動画をコマ送りの画像で見てみよう。

まずトラップの前。相手DFとの距離を確保するために1ステップ下がっているのが分かる。西大伍独自の「間」を作るために必要なスペースを作ったのだろう。さらに、ボールの出し手である土居の動きもしっかりチェックしているように見える。もしも土居がワンツーを欲しがったなら、それはそれで対応できるような視野の良さだ。

左足でトラップ。中の状況を確認する。ここから細かいステップで「タイミング」を作っていく。

身体の正面にボールをコントロールして、いつでもパスを出せる姿勢を作る。目の前を横切ろうとするペドロは勿論のこと、ボックス内でボールを欲しがる優磨や相手DFの動きも西は見えているように見える。おそらく、この時点ではまだペドロにボールを出すと決めていない。ドリブル・クロス・パスなどの判断を複数持って、どれをチョイスするか決めかねている状況だろう。この時に細かいステップを踏んでいる。

ペドロが目の前を横切る。ペドロと対峙するDFの対応が遅れているように見える。このタイミングで西の頭の中では「ペドロへのパス」を最優先に決めたのかもしれない。ただ、相手から見れば西はまだ何をしようとしているのか分からない。事実、優磨をケアしてる相手のCB2枚はペドロではなく優磨へのパスを警戒し、そのコースへ身体が動いている。西と対峙するDFは、ようやく態勢を整えたが、西の状態が良いので飛び込めない。

画面に映っているすべてのDFが、「西が何をするのか分からない」状態。西は相手DFの動きを掌握したことになる。

見ての通り、右足アウトサイドでパスを選択するが、どのDFもこのプレーについていけていない。唯一、ボールを要求したペドロにだけ合う「タイミング」でボールを出す。

対峙してるDFは、西のパスに全く反応出来ていない。相手が動けないタイミングを図ってボールを出したのだろう。案の定、ボールは身体の横をすり抜けていくことになる。

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西大伍の「ステップ」

このプレーにおける「タイミング」以外のポイントを説明したい。1つ目は安部の言う「ステップ」だ。ボールを受ける前、受けた後、細かくステップを踏んでペドロが上がるタイミングを待ち、対峙する相手DFが動けないタイミングでパスを出している。この技術は見事という他ない。相手DFより細かくステップを踏んで、いつでもボールを蹴れる状態を作っている。そして同時にステップに対する相手DFの反応も見ている。

西大伍の「ボールを置く位置」

2つ目は「身体の正面にボールを置いている」ことだ。先日紹介したマンチェスター・シティのドキュメンタリー『オール・オア・ナッシング ~マンチェスター・シティの進化~』で、グアルディオラはトレーニング中にこんなことを話していた。

ボールは必ず体の真ん中に置け

これは基本的なことだと思われるかもしれないが、出来ていないプロの選手は意外と多い。

例えば鹿島のサイドバックで、常に体の真ん中にボールを置ける選手は西と内田だけだ。山本も安西も伊東も「常に」は出来ない。身体の正面にボールを置くことで、次のプレーの選択肢が増え、プレーのスピードが上がる。自分から見て左側に出すことも、右側に出すことも、ドリブルも可能になる。右利きの選手に多い「まず自分の右側にボールを置く、そこから持ち替える」というのは相手DFを助けるプレーになり、味方のタイミングを逃すプレーになる。

西のプレーにおいては、対峙するDFは「ボランチへの横パス(西から見て左へのパス)」の確率が高いと予測していたのではないか。

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西大伍の「視線」

西大伍はボールに目を落とさない。ボールを見ないで相手と味方の様子を見ている。これが重要だ。

サッカーをやっていた人なら経験したことがあると思うが、「顔が下がっている相手はプレッシャーをかけやすい」。プレーの選択肢を持っていないからだ。西はほとんどボールに目を落とさない。DF目線で言えば、ボールを奪いに行くとパスで簡単に外されるので不用意に飛び込めない。相手のプレーをコントロールするためにも、ボールホルダーは顔を下げてはいけない。

歳を取っても通用するプレー

最近思うのは、西のプレーは歳を取っても通用するだろうということだ。スピードやスタミナ・フィジカルに依存するわけではなく、テクニックとインテリジェンスでチャンスを創出する。むしろ歳を重ねて場数が増えるほどに円熟味が増すのではないかと期待させてくれるプレーだ。

これからも、鹿島の右サイドバックとして時間と空間を、そして試合を支配し続けてほしい。

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