今日は言わずとしれた日本を代表するサイドバックの内田篤人と、日本代表に選出された安西幸輝について書きたい。私は彼ら2人のサイドバックコンビは、鹿島史上最強のサイドバックコンビになれるのではないかと期待している。
ちなみに今日は内田篤人の誕生日なので急いでこのコラムを書いている。あと2時間半で内田篤人の誕生日が終わる。なんとか24時までにUPしたい。急げロニー。頑張れロニー。
内田篤人のプレーの変化
内田・安西のコンビについて語る前に、ドイツから帰ってきた内田篤人のプレースタイルについて書いておきたい。
内田はドイツに行く前と比較して、明らかにプレースタイルが変わった。
ドイツに渡る前の内田は、激しく上下動を繰り返し、持ち前のスピードでオーバーラップを仕掛け、クロスを供給。守備には課題があったものの、それを補う攻撃性と軽やかな身のこなしでピッチを駆け回る。そんな選手だった(もちろんそれを実現するには頼れるCBやボランチの存在もあった)。
しかし昨年、シャルケでの経験を経て鹿島アントラーズに復帰した内田篤人のプレースタイルは明らかに変わっていた。
どちらかと言えば守備に重きを置くのが帰ってきてからのスタイル。相手のスペースを侵略するよりも、自分のスペースを相手に攻略されないことを第一に考えているようなポジショニングが印象的だ。
そして軽やかなプレーを生んでいた華奢な体は、「ズッシリと芯の通った闘う身体」に変化していた。
もちろん1対1のデュエルで負けるような事は滅多にない。可愛さや軽やかさが印象的だった内田は、質実剛健な闘う男になって帰ってきた。少なくとも私には、そう見えた。
全てを打開する内田篤人の右足ロングフィード
今年の内田の印象的なプレーが右足のロングフィードだ。
最も顕著に現れたのが川崎フロンターレ戦だろう。伊藤翔のゴールを生んだタッチダウンパスはもちろんのこと、この試合では安部への対角線のロングフィード(サイドチェンジ)を2本成功させた。
内田自身もこのプレーは意識しているようで、川崎戦後に以下のように語っている。
「コンパクトに守ってくるのが現代サッカー。タッチラインからタッチラインまで(の距離を)蹴れれば守備も何もない。」
引用元:ゲキサカ
https://web.gekisaka.jp/news/detail/?267510-267510-fl
川崎戦ではこんなサイドチェンジ↓も。
昨日の内田篤人の凄まじかったプレー。
テキトーじゃないんです。狙ってコレが出来る。
こういうプレーが出た時は、サポーターがどデカい拍手をしてあげたいです。
実況・解説もちゃんと拾ってあげてほしい。凄いプレーなんだから。 pic.twitter.com/HZzFsNgWNH— ロニー (@ronnie_antlers) March 2, 2019
現代サッカーの「コンパクトさ」を逆手に取る
内田自身が語っているように、現代のサッカーの守備は「コンパクト」に守るのが鉄則だ。
それは守備の場面で相手からボールを「奪う」には、数的優位を作るのが有効だからだ。
3人の攻撃者がいるスペースを4人や5人で守れば、ボールを奪いやすくなるのは想像に難しくないだろう。それをピッチ内に作り込むのがいわゆる「コンパクトな守備」というやつだ。
もちろん、守備側がピッチ内のどこかに数的優位を作るということは、ピッチ内のどこかに「数的不利」、あるいは「捨てる選手(マークしない選手)」を作るということと同義である。
多くの場合、「捨てる選手」は逆サイドの選手になる。川崎が鹿島の右サイド(内田サイド)に数的優位を作るならば、鹿島の左サイド(安部のサイド)は手薄になる。
サッカーは11人対11人のスポーツなので、この構造になるのは必然だ。
この「コンパクトさ」を逆手に取れるのが内田篤人のロングフィードだ。
相手は内田の近くに密集を作り、数的優位を確立し、ボールを奪おうと思ったところでサイドを一発で変えられてしまう。あるいは裏を取られてGKと1対1を作られてしまう。
ロングフィードのリスクと難しさ
もちろんこのプレーは誰にでも出来る事ではない。比較するようで申し訳ないが、安西も、山本脩斗も、平戸も、小田も、内田のような対角線のロングフィードはあまりチャレンジしない。
ロングフィードを成功させる重要な条件として、まず「見えている事」。
相手のプレッシャーがかかっている中でも、逆サイドの状況まで把握出来てなければ内田のようなフィードは蹴れない。ここをクリアするだけでも中々のハードルだ。
そして第2に「強く、正確なキックが出来る事」。
内田のロングフィードは恐ろしく正確だ。
本人は謙遜するかもしれないが、Jリーグであのキックが出来るサイドバックはほとんどいない。
しかも内田は、逆サイドに振る場合は「強め」に蹴っている事が多い。これも恐らく狙ってやっていると私は思う。
対角線へのロングフィードで1番怖いのは、パスが短い、あるいは遅くて相手の右サイドバックにカットされてしまうことだ。
その瞬間、鹿島はカウンターの餌食になる。
短くなったり弱く蹴ったりしてインターセプトされるくらいなら、安部の頭を超えて逆サイドのタッチラインをオーバーした方がマシだ。また、速いボールが通れば相手に陣形を立て直す猶予を与えない事になるので、チャンスは広がる。内田は恐らく、この辺りまで考慮して強いキックを選択している。
「内田を止めにいけば他が空く」という構図
このように書くと、「鹿島は内田を止めにいけば良いのでは?」と思われるかもしれない。だが、そう簡単にはいかないはずだ。
対戦相手が内田に過度なプレッシャーをかけるならば、それは鹿島の他の選手が「浮く」ことを意味する。レオ・シルバかもしれないし、センターバックかもしれないし、FWかもしれない。
相手が内田のフィードを恐れて過度なプレッシャーをかけるならば、鹿島は浮いた選手にボールを渡すまでだ。内田のロングフィードは封じられるかもしれないが、その替わりに違う場所を崩しやすくなる。
内田と相性抜群の安西幸輝
少し内田の話を書きすぎてしまった。ごめんよ安西。もう君の事について書く時間が僅かになってしまった。
本来は安西のスペシャルな要素も書きたかったが、今回は時間が差し迫っているので「内田とコンビを組む安西」という視点に絞って、安西のことを書きたい。
私は、安西と内田は恐ろしく相性が良いと思っている。
それは単に「攻撃性能の高い安西と、全体のバランスを取れる内田」という事も勿論あるが、それだけではない。
内田の対角線フィード×安西のハーフスペース侵攻という攻撃パターン
今年の鹿島の大きな武器の1つとなりそうなのが、「内田の対角線フィード」から「安西のハーフスペース侵攻」のコンビネーション。
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まず、例のごとく内田から対角線のアウトサイドレーンにいる安部へのフィードが通る。
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すると、相手のサイドバックは安部のマークに付く。
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そこで猛然と「安部の内側(ハーフスペース)」を駆け上がってくる安西。
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安部は簡単に安西を使う。
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安西がトップスピードでボールを受けて仕掛ける。
コンサドーレ札幌戦ではこのパターンが何回か見られた。後方から猛スピードで駆け上がる安西をケアするために、相手サイドハーフも懸命に戻るが、基本的には安西のスピードには追いつかない。
ボランチかCBがスライドして安西を止めようとするのが関の山だ。
そのように相手が動いた時、相手の「中央」は手薄になる。すると、狡猾にゴールを狙う伊藤翔の輝きが増す。
鹿島が札幌を相手に優位に試合を進められた理由の1つがこれだ。
このパターンは、チームとして狙いを持ってやっているように見えるので、恐らく今シーズン何度かお目にかかれるだろう。
この攻撃パターン、名前を付けた方が覚えやすいと思ったのだが、良いネーミングが思い浮かばなかったのでどなたか命名してください。
おっと、そんなこんなでもうUPしなければいけない時間になってしまった。
内田篤人、誕生日おめでとうございます。