鹿島アントラーズに、小泉慶に続きこの夏2人目の新加入選手が発表された。名古屋グランパスから、相馬勇紀が期限付き移籍で加入することとなった。
相馬選手が期限付き移籍で加入鹿島アントラーズオフィシャルサイト
今回は、相馬の加入がもたらす影響について考察していきたい。
相馬獲得の意図
まず、なぜ鹿島が相馬を獲得したか。その意図を考察したい。
その大きな要因は安部の移籍だろう。安部の戦力の穴埋めは、鹿島としては必ずしなければならなかった。
鹿島のサイドハーフの戦力を改めて考えてみよう。サイドハーフのポジションを、シーズン開始当初は以下のような戦力で戦おうとしていた。
左サイドハーフ | 両サイド可能 | 右サイドハーフ |
白崎凌兵
山口一真 |
安部裕葵
中村充孝 |
レアンドロ
遠藤康 |
しかしシーズンが進むにつれ、以下のような状況になっていった。
- 安部裕葵は移籍
- 中村充孝は慢性的に怪我がち
- レアンドロは好不調の波がある
- 遠藤のパフォーマンスは全盛期より落ち気味
つまり、サイドハーフは6名体制ではなく、「白崎・レアンドロ」を1stチョイス、そして「遠藤・山口」が控えるという4名体制が続いた。シーズン開始当初は「両サイド」で稼働してもらうはずだった安部と中村充孝は両名とも戦力として考えられなくなってしまった。鹿島として誤算だろう。
「白崎・レアンドロ-遠藤・山口」の4名体制に、私は限界を感じていた。
限界を感じているといっても、彼らをディスりたいわけではない。特に白崎は素晴らしいプレーを見せてくれている。今の鹿島は、白崎やセルジーニョ、三竿の献身性に支えられている。
しかし、先日の湘南戦や浦和戦などを見ても、消耗の激しいゲームで「サイドの攻撃を活性化させる駒」を鹿島が持っていなかったのも、まぎれもない事実だ。
浦和も湘南も、消耗の激しいゲームで、サイドの選手を変えてチーム全体の運動量を担保しようとした。一方の鹿島はFWで動き回っていたセルジーニョを一列下げて右SHで使った。大岩監督にはそれしか選択肢が無かったのだ。
疲弊したレアンドロに替わって攻撃を活性化させられる選手、それが鹿島にはいない。だからFWを入れてセルジーニョを一列下げるしかないのだ。
今回の相馬の獲得は、まさに「サイドの攻撃の活性化」を担ってもらうためのものだろう。
相馬はサイドの一対一から縦への突破、あるいはカットインからのシュートなど、個の力で局面を打開出来る貴重な選手だ。しかもその力はJリーグでも屈指のものがある。
相馬は左サイド?右サイド?
さて、相馬はどちらのサイドで起用されるだろうか。
私はおそらく、左サイドでの起用が多くなるだろうと思っている。
私が頭の中で描いた”今の鹿島”のサイドハーフの役割はこんなイメージ
左サイドハーフ | 両サイド可能 | 右サイドハーフ |
相馬勇紀
山口一真 |
白崎凌兵
(中村充孝) |
レアンドロ
遠藤康 |
おそらく当面は、現在の「白崎-レアンドロ」(あるいはセルジーニョの右SH起用)を続けながら、レアンドロに替えて相馬を途中から使う形が増えると思う。
その時は、「相馬を左に、白崎を右に」ポジションを変えるのではないかと予想している(もちろん相手や状況によるとは思うが)。
相馬は、一応右サイドは出来る。右サイドも出来るが、左サイドでのプレーを明らかに得意としているタイプ。白崎は器用なので両サイドでプレー出来るし、右サイドでもクオリティを落とさずプレー出来るだろう。個人的には、白崎-相馬の組み合わせになった時は「相馬を左に、白崎を右に」がオススメだ。
相馬が縦に突破してクロス、逆サイドから白崎が飛び込んでくるパターンなどは存外に良さそうだ。
相馬としては、途中出場から存在感を示し、レアンドロや白崎からポジションを奪うべくアピールしていく事になる。そのようなチームでの立ち位置になると思う。
鹿島にジョーはいない
相馬の獲得にあたって、少しだけ心配なことがある。鹿島にジョーはいないという事だ。
相馬は「縦への突破から左足のクロス、それをジョーが合わせる」というパターンで、名古屋では得点に絡んでいる事が多かった。
しかし鹿島にはジョーがいない。おそらく、土居とセルジーニョがピッチに立っている事が多いだろう。
「縦に突破して、FWめがけてクロス」のプレーは、鹿島ではゴールに繋がりにくい可能性がある。
これまでは「線で合わせる」でアシストになったものが、「点で合わせる」という作業が必要になる可能性は高いのではないかと思う。
一方、鹿島のFWにジョーはいないが、伊藤翔と上田綺世のボックスストライカーがいる。彼らと相馬は相性が良さそうだ。特に上田綺世はアバウトなボールに飛び込むプレーを得意としているので、このコンビからのゴールは期待したい。
山口一真が少し心配になる
これは私だけではないだろうが、相馬の獲得によって同じポジションの山口一真が少し心配だ。
山口と相馬はタイプが異なるとは言え、両者共に白崎-レアンドロとは異なる特徴を持つ。山口は前述の「サイドを活性化させる駒」として、自分をもっと積極的に使ってほしいという気持ちがあるだろう。
また、山口としては同じポジションに、自分より若く、そしてオリンピック世代の期待の若手をチームが獲得した事は面白くない気持ちもあるかもしれない。
それでも、私は今シーズンのタイトル獲得に、山口一真の力が必ず必要になると思っている。
ACL、天皇杯、ルヴァン、Jリーグ。すべてのコンペティションを勝ち抜くには、白崎だけの力では絶対に足りないし、相馬がいても足りない。山口も、遠藤も、全員の力が必要だ。
山口一真には、腐らず、真摯に、懸命に、出場機会を掴むべく努力してほしい。