サッカーにおける有利なバグ・不利なバグと鹿島のCBの話

一昨日に犬飼智也について記事を書いて、更にもう少し私の問題意識を深堀りして考えてみた。テーマは「サッカーにおけるバグと戦力・戦術の関係性」だ。

犬飼智也と対人の話

先日書いた記事はこちら。

2020年の犬飼智也の進化とこれからの課題

この記事に書いたように私は「CBの対人能力」というものを強く意識している。それが鹿島が強くなるために必要な要素だとも思っている。

なぜか、っていう事をこれからなるべく言葉にしてみたい。

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サッカーにおけるバグ

”そもそも”の話になるけれど、サッカーというゲームは「ゴールに近い場所に高くて強い選手がいれば有利になりやすい」という特性を持つゲームだ。この特性は、もはやサッカーのバグと言ってもいい。バスケットボールにも近しいバグが発生する。両チームは平等じゃない状況からゲームを始める。

ハイボールを前線に送って、そこに強烈なFWがいればボールを収めて、チャンスを作ってしまう。このパターンをハメ技のように繰り返しても構わない。サッカーはそれが許されるゲームだ。

現在の鹿島アントラーズは、ゲームが(有利に)バグってる状態から試合を始められる事が多い。それはエヴェラウドという選手の存在による。エヴェラウドはほとんどのJリーグのDFたちよりも高くて強い。

普通に考えれば、エヴェラウドがいるチームの方が有利になる。

それゆえ多くのチームは、CBに「高くて強い選手」を置きたがる。ゲームにおけるバグを解消する最もシンプルな方法は、相手のカードを何とか抑え込める強さのカードを保持する事だ。

この辺が、私自身が「CBの対人能力」を常に第一優先に置いている理由の1つ。わざわざ不利なバグが起きている状況から試合を始めたくはない。どんなに守備組織を整えても、CBには必ず競り合いの場面が訪れる。

バグと戦術の関係性

賢い人はもうお気付きだと思うが、サッカーはこのようなゲーム性なので「(FWでもCBでも)高くて強い選手」というのは市場で奪い合いが始まる。

必然、お金が潤沢なチームは有利なバグを起こしやすくなり、貧乏なチームは不利なバグを抱えたままに試合を始める事が多くなる。

しかしそんな原理は全員承知の上でサッカーというゲームを楽しんでいるので「これバグってんじゃねーか!不具合不具合!!」と不満を言った所でチームは救われない。ゲームには勝てない。

だから多くのチームは、少しでも不利なバグを解消するためにいわゆる「戦術」と呼ばれるアレコレを駆使してゲームに勝とうとする。

逆に市場で強いチーム、つまり強烈な選手たちを集められるチームっていうのはそれだけでサッカーというゲームをほとんど攻略しているようなものなので、残り3割くらいのディテール(コンディションとかモチベーションとか)を整えれば相当な確率で勝てる。

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現在のJリーグの状況

これらの原理を踏まえた上で、現在のJリーグの状況、そして鹿島アントラーズの立ち位置を考えてみよう。

実はJリーグにはマネーゲームの勝者はいない。日本にバイエルン・ミュンヘンやレアル・マドリーはいない。各チームが独自の戦略を用いて、戦力が拮抗する状況が何年も続いている。

それゆえなのか、バグに耐性のないチームも多い。戦術・オルンガ、戦術・エヴェラウドで勝ててしまうゲームが存外に多い。

バグを少しでも解消すべく「高くて強いDF」に投資を始めているチーム(川崎やF・マリノス)もあるが、鹿島はまだそこに投資をしていない。

鹿島は強化部の成果もあってエヴェラウドという武器を持っているものの、相手によって起こされる不利なバグにはまだ弱い。ハッキリ言ってしまえばCBがまだ弱い。

バグを解消しようとしたネルシーニョとバグを気にしないザーゴ

今やJリーグの2大FWと言えるオルンガとエヴェラウド。その2選手を抱えた鹿島×柏レイソルの試合は非常に興味深いものだった。

結果は1-4で柏の快勝。鹿島の惨敗だった。

このゲームで明らかになった事は、ネルシーニョは「対鹿島(対エヴェラウド)」の守り方を徹底し、エヴェラウドの癖や弱みを徹底的に突いてきた事。守備の配置も対鹿島用に整えた。柏にとって不利なバグを極力解消しようと試みたのである。

一方のザーゴは、オルンガが発生させるバグに対してあまり手段を講じなかった。

結果的にオルンガに対して鹿島は為す術なく、「これバグってるじゃねーか!」と言いたくなる内容で試合が終了してしまった。

このゲームを見て、私は鹿島の未来が少しだけ心配になった。チャンピオンを狙うチームが不利なバグを放置する事はあってはならない。このバグが起きることは試合前から分かっていたのに、対抗する姿勢を見せられなかった。相手のネルシーニョは対抗してきたというのに、だ。

今後の鹿島が、これからも発生しうるであろう不利なバグにどう対処しようとするのか。来年優勝するためにはポイントの1つになる。

犬飼や関川・町田の成長に期待するのか、高くて強いDFを獲得するのか(あるいは戻すのか)、組織のオーガナイズを洗練させてバグる局面すら作らせないのか。

いずれの選択肢にせよ、お金の投資か時間の投資は必要になるだろう。少し気が早いが、今オフのチームの動きにも注目したい。優勝を目指すチームを作るならば、何かしらの成長か、変化は必要になるだろう。

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