鹿島式のハイプレス&ゲーゲンプレスが姿を見せる瞬間

8月に入って、鹿島のサッカーに変化が起き始めている。ザーゴがルーツとしているラングニック的なプレースタイルが「ある条件」のもとで頻繁に見られるようになってきた。

兆候はルヴァンカップの川崎戦

鹿島式の「ハイプレス」「ゲーゲンプレス」がピッチの上で頻繁に見え始めたのはルヴァンカップの川崎戦。

2-3で負けたゲームだ。

このゲームを見た後、私はこんなブログを書いた。

反撃の2点を生んだゲーゲンプレスは偶然の産物か?

途中出場でピッチに立った「白崎・荒木・永木・小泉」のプレーが三竿のプレーと共鳴し、川崎に対して苛烈なプレッシングと、ボールを失った瞬間のゲーゲンプレスにスイッチが入った。

この試合を観た時は「このゲーゲンプレスは偶然か?」と、試合の状況や選手の相性によるものである可能性を否定できなかった。

しかしどうやら偶然ではない。途中出場の選手が川崎戦と同様の振る舞いを見せた神戸戦を見て、そう確信した。

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ゲーゲンプレスとは?

ゲーゲンプレスの事がよく分からない人は、この動画を見ていただければと思う。↓

神戸戦でも同様の現象

ヴィッセル神戸とのゲームにおいても、鹿島はビハインドの状況で「アラーノ・染野・荒木・永木」を同時投入し、プレッシングとゲーゲンプレスの強度を一気に上げた。

実は1節前のJリーグサガン鳥栖戦でも、後半に「三竿・和泉・荒木」を同時投入し、プレッシングとゲーゲンプレスの強度を一気に上げていた。

川崎戦・鳥栖戦・神戸戦。3試合で同じような選手交代をして、同じような現象をピッチで起こした。

これは偶然とは呼べないだろう。これが(今の所の)鹿島式のハイプレス&ゲーゲンプレスといえる。

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攻撃の局面重視から切り替えの局面重視へ

荒木やアラーノや永木(あるいは三竿)を同時に途中投入する事で、ピッチの上でどのような変化が生まれるか。それを説明したい。

現在、ザーゴが先発のメンバーとして起用している前線のユニットは、「攻撃の局面」を重視したユニットと言える。

ボールを大切に扱える遠藤や土居聖真が、その代表だ。

先発のメンバーの中でも、特に遠藤は攻撃の局面で大きな活躍を見せており、彼を先発で起用してから鹿島は徐々に結果が付いてきている。

一方で彼らは、ラングニック的なサッカーの特徴である「トランジションの局面」「守備の局面」において、際立ったプレーを見せる選手ではない。

逆に彼らと交代で入ってくる選手(荒木やアラーノら)は、「トランジション」「守備の局面」において、抜群のスピード感を見せてくれる。

アラーノは「攻撃の局面」においてはボールタッチが荒かったり、パスが合わなかったりするのだが、奪われた後のトランジションのスピードが他の選手を凌駕する。荒木も同様にトランジションのスピードが非凡だ。

荒木やアラーノ(それに三竿や永木や小泉を加えたメンバー)が同時にピッチに立つ事で、鹿島のサッカーは一気にストーミング的な様相を呈す。

例えばルヴァンカップの染野のゴールシーンでは、アラーノと荒木が「守備⇒攻撃」の局面で縦に早いプレーを仕掛け、ゴールをお膳立てした。

直近の鹿島を言葉で説明するならば、「攻撃の局面重視のメンバー」で試合に入り、負けている時は「トランジションの局面重視のメンバー」でピッチにストームを起こし、逆転を狙う。そんなサッカーになっていると言える。

ザーゴはトランジションの局面で動ける選手を起用したい

これは私の憶測になるので、話半分に読んでいただきたい。

おそらくザーゴは本来、「トランジションの局面」「守備の局面」でスピード感を出せる選手を積極的に起用したいのではないかと思う。

それはシーズン開始当初に、アラーノと和泉を重宝して起用していた事から伺える。また、公式の試合コメント(ハーフタイムコメント)でも「プレッシング」について毎試合言及している事からも分かる。

彼ら(アラーノと和泉)の武器はボール保持時にあるのではなく、プレッシングやゲーゲンプレス、守⇒攻の場面での動き出しや思考の速さにある。

ザーゴのサッカーのスタイルを表現してくれる選手(あるいは表現しようとしてくれる)は、アラーノや和泉だったのだ。

しかしそのユニットでは結果が出ず、より「攻撃の局面」が得意な選手(遠藤や土居)を先発に起用したら、結果が付いてきた。

ここ最近では、遠藤や土居を先発起用してゲームを始め、負けている状況や勝ち越したい状況の後半には「トランジションの局面」「守備の局面」でスピード感を出せる選手を投入し、ピッチの上に躍動感を与えている。

相手が疲労してきた時間に苛烈なプレスやゲーゲンプレスをかける選手を投入するので、より際立って鹿島に流れがやってくる。

最近の途中交代の選手たちがピッチで見せている現象に、ザーゴは一定の満足をしているのではないかと推測する(実際に途中交代の選手を褒めるコメントも多い)。

今、鹿島がピッチの上で部分的に見せる鹿島式のハイプレス&ゲーゲンプレスは、このような経緯の中で少しずつ洗練されてきている。

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全ての局面で優秀な選手、荒木遼太郎

文章で伝わりにくいので、あえて各選手の得意な局面を分けて書いたが、実は全ての局面で優秀な選手がいる。

荒木遼太郎だ。

荒木はボールを保持している局面も、守備の局面も、トランジションの局面も、全てにおいて非凡な実力を見せつけている。思考のスピードも早い。

既にサポーターの心をガッチリ掴んでる選手だが、ここ最近の出番の増え方を見ると、ザーゴの信頼も勝ち取り始めている。

これからは間違いなく出番が増えるし、先発の座を掴む日も近いだろう。

また、和泉竜司も荒木と近い。「全ての局面」で優秀なタイプの選手だと思う。

荒木と和泉を軸に、遠藤や土居を組み合わせれば「攻撃の局面」が得意な鹿島に。アラーノや白崎を組み合わせれば「トランジション」が得意な鹿島に。シーズン途中での選手の大幅な入れ替えが出来ない以上は、今年の鹿島はそのようなユニットの構成をしていくのではないかと思う。

選手交代の枠が5つもある今年だからこそ、ピッチで起こすサッカーの風合いをガラリと変える事は可能だ。今の鹿島はその様相を呈している。

今後の鹿島がピッチの上でどのようなサッカーを見せるのか。ザーゴがどのようなユニットを”いつ”使っていくのか。注視しながら応援したい。

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