ファン・アラーノと土居聖真の相性ってどうなの?

週末、鹿島アントラーズが浦和レッズに完勝した。

ここ数試合の鹿島を見ながらずっと、アラーノと土居聖真の関係性について考えていた。今回はそのお話。

アラーノが見てる景色

私は以前のブログで、こんなことを書いた。

アラーノがボールを持ちながら探しているのは、「相手ゴールに近い場所に縦方向に動く選手」のように見えた。相手ゴールに近い場所と書くとややこしいかもしれない。「相手CBとGKの間やCBとSBの間に空くスペース(つまり最も危険なスペース)」と解釈してほしい。そのような動きをする選手がいればアラーノはすぐにパスを選択するが、いなければ少しモタつく。その動き方は、アラーノ自身がボールを受ける時にまず最優先に動く場所と重なる。つまりアラーノは、「自分のように(最も危険なスペースに向けて縦方向に)動いてくれる選手を探している」。それが私の見立てだ。

以前のブログ記事「「上手くない」ファン・アラーノが見ている景色と持っている意識」より

アラーノがボールを持った瞬間に探すのは「最も危険なスペース(つまり相手DFラインとGKの間)」であり、そこに味方が動かないとモタつく。

アラーノについてそんな事を書いた。この時はまだアラーノの能力が完全には開放されていない事を書きたかった。

そして2020年シーズンの終盤に差し掛かった浦和レッズ戦、ようやくアラーノの動きが開放されてきたような、そんな感覚を覚えた。

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アラーノを理解してきた鹿島の選手たち

前回のブログで書いたように、アラーノの優先順位は常にゴール前である。

ボールを奪い返したその瞬間、アラーノはいつもゴール前にパスを入れたいような仕草を見せる。

浦和レッズ戦のエヴェラウドのゴールは、まさにアラーノのタイミングとエヴェラウドのタイミング、そして狙っているスペースがリンクしたゴールだった。

アラーノがボールを奪う。同時にエヴェラウドは裏を狙う。アラーノは迷わず出す。それだけの事だが、このようなシーンがシーズン終盤に来て繰り返し見られるようになってきた。

仙台戦の上田綺世のゴールも近しい形だった。

徐々にアラーノのタイミングと鹿島の他の選手たちのタイミングが合ってきているような、そんなシーンは増えてきた。

土居聖真とアラーノ

本題に入ろう。土居聖真とアラーノについて。

アラーノとエヴェラウドの相性は良い。これは間違いないだろう。エヴェラウドは常に手っ取り早くゴール方向へ進みたいタイプだし、その志向で言えばアラーノに通ずるものがある。

一方で土居聖真とアラーノの相性について、私はずっと気になっていた。土居聖真はアラーノやエヴェラウドとは違う。どちらかといえばボールを大切にするタイプで、ゴールに迫ることよりもボールを失わない事を優先する。

それゆえ「土居聖真とアラーノの相性は良くなさそうだな」と思っていたし、今も局面によってはそう思う。

ザーゴはアラーノと土居聖真を同時に起用する事が多い。システムが4-2-3-1でも、4-3-1-2でも、2人はザーゴにとっての1stチョイスだ。

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ゲーゲンプレス

まず初めに「2人の動きがリンクしないな」と感じる局面について書く。それはゲーゲンプレスの局面。

アラーノはボールを失う事を恐れない。「相手ボール」と「マイボール」の境目が無く、どちらのボールだろうがボールに向けてスプリントをかける。

一方の土居聖真は、やはりゲーゲンプレスで足が止まる場面が目立つ。ボールを失う事に慣れていない、とでも言うべきだろうか。相手ボールになりそうな時にどうしても足が止まりやすい。

ボールを失った瞬間に土居聖真の足が止まる。アラーノは動いている。という光景は今年の鹿島では何度も見られる。

結果的にアラーノが1人でボールを追いかけ回す事になり、奪いきれない(三竿なんかはアラーノの加勢に来てくれるので、三竿が近くにいるとアラーノは輝きやすい)。

これがゲーゲンプレスの局面での2人の動きの相性の悪さだ。

アラーノが単独でボールを奪いにいくのはリスクが高くなってしまうので、アラーノが行くなら周りの選手も呼応しなければいけない。

これはサッカーの原理とでも言うべきか、とにかく1人だけボールを追いかけ回すのは良くない。アラーノが動いてしまう以上、土居聖真を始めとする周りの選手もある程度は足を動かさないとチームの距離感が悪くなる。

ボール保持

一方でボール保持の局面における2人の相性は、もしかしたら悪くないのかもしれない。と最近思い始めてきた。

ザーゴは恐らく、ボール保持の局面における土居聖真の働きを気に入っている。遠藤康も同様の評価なのだと思う。

その”働き”とは、危険な所にボールを送るチャンスメイク的な動きではなく、ボールを収めて全体を押し上げる時間を作り、マイボールの局面をしっかり作るという働きだ。言い方を変えれば、ネガティブトランジションの局面を安易には作らない働きとも言えるのかもしれない。

土居聖真はボールを守る。失わない。

それが彼のプレーの良い所でもあり、不満な所でもあると私は思っているが、ザーゴはどうやら重要視している。

アラーノは土居聖真よりも、もっとチャレンジングなドリブルやパスを選択する。で、何度もボールを失う。(彼はボールを失うのが怖くないからね!)

アラーノはリスクを取ってるから失敗も多い。土居聖真はあまりリスクを取らないから失敗も少ない。

ボール保持時の2人は反対のタイプとも言える。

しかしボール保持の局面においては土居聖真や遠藤康のようにボールを守る安定感が、アラーノの無茶苦茶さを影で支えているのかもしれない。最近はそう思う。

もしも土居聖真がアラーノのような選手だったら、鹿島の攻撃はもっと良い意味でも悪い意味でもカオスになっている事だろう。

ボール保持の局面におけるカオスと秩序のバランスを、土居聖真とアラーノで絶妙に保とうとしているのが今の鹿島だ。

相性の良い小泉慶

相性の話で言えばオマケで、アラーノのプレーを支えているのは小泉慶の働きが大きい。

何度も書くがアラーノは他の選手より安易にボールを失うしパスミスするので、後ろの小泉は不意に守備に移らなければならない事が多い。1試合で何度もアラーノのミスの後処理をしている。

それでも小泉は黙々と守備に切り替えてボールを奪いに行ってくれるので、アラーノは相当助けられている。

走力があり、守備力が高く、味方のミスにイライラしない性格。この条件が揃っているSBはそうそういない。

小泉が自らの攻撃力でチームに貢献する場面はそう多くないが、アラーノの無茶さを地道に支える事でチームの攻撃に大きく貢献していると言える。

ザーゴが広瀬復帰後も小泉を1stチョイスとして選択しているのも納得のプレーぶりだと思う。

相互理解

アラーノ⇔エヴェラウド、アラーノ⇔小泉のように、鹿島アントラーズの選手たちはシーズン当初よりも確実にお互いを理解している。

土居聖真とアラーノの連動はまだまだ向上しそうだが、それでも互いの特徴を徐々に捉えはじめている。

それは結果にも出ているし、ピッチの上でのプレーにも現れている。

2020年のリーグ戦は残り2試合。他の選手たちも含めた、鹿島のさらなる相互理解の進んだプレーを見てみたい。

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