2019年4月5日、首位の名古屋グランパスとの試合を迎える。今最もJリーグで結果を残しているチームについて、マッチプレビュー的に考察してみたい。
戦略的に強いチームを作ろうとしている名古屋グランパス
以前のブログにも書いたが、サッカーチームが勝利を目指す上で最も手っ取り早い方法は「良い選手を集めること」だ。これは、戦術を極めることより、素晴らしい監督を連れてくることより、勝利への影響力が強い。
過去のブログはこちらを参照↓
名古屋グランパスは、「良い選手を集めること」を戦略的にやっている数少ないJリーグのチームだ。
ランゲラックとガブリエル・シャビエルを獲得し、ジョーを獲得し、中谷・丸山・吉田豊、そしてシミッチを獲得した。
個々の選手のクオリティは今の鹿島アントラーズを上回るだろう。それは認めなければいけない。
これだけのタレントを揃えているクラブは、他にはヴィッセル神戸しかない。ヴィッセル神戸よりも「旬」な選手が多い分、名古屋の方が厄介だというのが私の認識だ。
恐るべき攻撃性能を備えるジョアン・シミッチ
名古屋の中でも特筆すべきタレントは3名いる。フィニッシャーのジョー、チャンスメイカーのシャビエル、ゲームメイカーのシミッチだ。この3名だけは、他の名古屋の選手と「格」が違う。
中でも最も厄介なのがシミッチだ。
ボランチの位置でゲームを作るシミッチは、恐るべき攻撃性能と技術を持つ。私はサッカーにおける「技術」を以下のように分解するが、シミッチはこの全てのレベルが高い。それも抜群に高い。
- 状況の把握:ボールを次に動かす目的地(ルート)を定められる。
- ポジショニング:ボールを貰う適切なポジションを取れる。
- 止める&蹴る:正確にボールを蹴れる。正確に蹴るために正確に止められる。
- スピードのコントロール:1~3の一連の動作を最適なスピードでプレーできる。
シミッチはトメルケール教の教祖と言ってもいいかもしれない。彼の攻撃性能は(イニエスタを除けば)Jリーグトップだ。
鹿島としては、彼をどのようにゲームから排除していくか、というのをゲームプランに入れなければいけないだろう。彼を放っておくと、真綿で首を絞められるようなゲーム展開になっていくのが目に見えている。
シミッチ対策として、配置を完全に4-5-1にしてトップ下の選手(土居など)にシミッチへのマークのタスクを担わせるのが良いかもしれない。
困ったときのジョー
そしてもう1人、ジョーもやはり注意しなければいけない。
名古屋は基本的にはショートパスを繋いでいくスタイルも持つチームではあるが、「ジョーへの1発ロングボール」というオプションを持っているのも厄介だ(対戦相手としては、むしろジョーに単純にボールを集められる方が嫌だったりするのだが…)。
鹿島としては、CBの力量が試される試合になるだろう。もしジョーを抑えられれば、他のJリーグのFWは怖くない。ACLでもジョーのレベルは稀有だ。
名古屋の弱点
これまで書いたとおり、名古屋は強敵だ。とはいえ、弱点と言えそうなポイントもいくつか見える。
中央をお留守にする両ボランチ
今年の名古屋の試合を見る限り、名古屋の両ボランチは「中央をお留守」にする場面が散見される。名古屋の両ボランチである米本とシミッチは「スペースを守る」という意識が低いように見える。
まず米本は基本的にボールを奪いに行く。この動き方は鹿島に来たばかりの頃の永木のプレーを思い出してみると分かりやすいかもしれない。ボール奪取のために、前にサイドに動き回るため、DFラインの前はシミッチ1人になる事が多い。
しかしそのシミッチも守備時の立ち位置はそこまで良くないように見える。フラフラとサイドに流れてしまう場面も散見され、攻撃性能抜群のシミッチではあるが、守備はインテンシティも低く、少し課題を持っている選手のようだ。
鹿島としては、サイドにボランチを誘い込んでバイタルエリアを一気に攻めるような戦いも見せたいところ。
ボールを持たせる選手
名古屋は圧倒的な技術を持つ選手がいる一方、ボールロストをしやすい選手もいる。決して「下手」というレベルではないのだが、シミッチやシャビエルらと比較すると何段か落ちる選手がいる。
それが米本、丸山、中谷、長谷川、赤崎らだ。彼らにボールを誘導していくと、いくらかカウンターのチャンスも増えるだろう。
特に米本にはボールを持たせたい。彼が技術的なミスでボールを失う確率は、シミッチより相当高いはずだ。
DFラインの裏
名古屋DFラインは裏に対するケアが甘めに見えるので、DFラインの裏は何度も狙っていきたい。伊藤翔はこの動きが得意なので、裏抜けからのゴールを期待したい。
ロングボールから抜け目なく裏を狙って蹴れる内田篤人がいないのは痛手ではあるが……。
自信を手にする1戦に出来るか
鹿島アントラーズにとって、4/5の名古屋戦は、今後のリーグの流れを左右する試合になる。
名古屋はタレント力と攻撃力はリーグ随一、そしてJリーグナンバーワンFWのいるチームだ。彼らを抑えて勝利を手にする事が出来るならば、鹿島のDFラインにはこの上ない自信になるだろう。
リーグ優勝に向け、勝点的にも視界が開けてくる。
キーマンは安西幸輝
鹿島のキーマンは安西になりそうだ。
対峙するのは要注意のチャンスメイカー・シャビエル。守備時にはシャビエルに決定的な仕事をさせず、いつも通りの攻撃参加を見せられるか。
シャビエルは守備時に「スペースを守る」という動きではなく、プレッシングでボールを奪いに来る事が多いため、そのプレスさえ剥がせれば、左サイドでは2対1の状況を作れるだろう。
安西の躍動に期待したい。