湘南ベルマーレのイヤーDVDに、サッカーとJリーグの厳しさが詰まっていた話

話題の湘南ベルマーレの2018年イヤーDVD「NONSTOP FOOTBALL(ノンストップフットボール)の真実 第5章-2018-覚悟」を購入して見てみた。湘南ベルマーレのロッカールームのカメラを公開している、貴重なDVDだ。

いつもこのブログは鹿島アントラーズ関連のことしか書かないのだが、湘南ベルマーレのDVDを見て、どうしても書いてみたいと思ったのでこのブログに書いている。

なお、DVDの詳細な内容を書いてしまうとネタバレ的な感じになってしまうので、なるべく「このDVDを見て(鹿島サポの)私が何を感じたか」という視点で書いてみたい。

曺貴裁の言葉

私は曺貴裁(チョウ・キジェ)という監督が好きだ。鹿島サポーターだが、彼の言葉の力や信念、モチベーションやサッカースタイルを、いちサッカーフリークとしてリスペクトしている。

その曺貴裁がロッカールームでどんな言葉を使っているのか。どんな姿勢を見せるのか。

これは、監督をやっている人間としても参考になる。監督をやっていないとしても、会社員で管理職の立場にいる人間などは見ておいて損はないと思う。

猛烈にモチベートしろ!自分を!!

湘南ベルマーレのイヤーDVDは、激昂する曺貴裁のこんな言葉から始まった。私はこの言葉が頭から離れない。

私はこんな言葉をかけられた事があるだろうか。こんな言葉を誰かにかけた事があるだろうか。あるいは、日々の仕事で自分自身を猛烈にモチベート出来ているだろうか。

湘南ベルマーレのイヤーDVDを見てから、自分への問いかけを何日も繰り返した。

毎日の仕事を全力のモチベーションで続けることは簡単なことではない。そんな時に、自分の引き出しの中にこの曺貴裁の言葉があるというのは、宝物だと私は思う。湘南の選手は宝物のような言葉をいくつも胸に持っているのではないか、という事は容易に想像できた。

鹿島アントラーズにいる永木亮太が、決死の覚悟でいつも走っている理由が、夢中になってプレーしている理由が、少しだけ分かる気がした。

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味方のプレーを指摘する勇気

湘南ベルマーレのイヤーDVDを見て、まず思ったのが「良いチームだな」という事。

DVDの中には選手間で衝突するシーンがある。SNSでも話題になっている、秋元と梅崎のやり取りなどだ。選手間で衝突しながら、お互いのプレーを指摘し合う。

サッカーをやった事がある人間なら分かるかもしれない。1人のサッカー選手が味方のプレーを指摘することは、かなりエネルギーのいる事だ。

「じゃあお前はどうなんだ?」と言われる事は間違いないし、完璧なプレーをしている選手なんかこの世界に1人もいないのでそれに対する完璧な答えも持ち合わせていない。サッカーがチームプレーである以上、そして選手全員が平等な立場である以上、敗戦の責任は自分にだってある事を選手全員が本能的に理解している。だからこそ、味方のプレーを指摘するのはエネルギーが必要になる。

それでも味方のプレーを指摘する事は必要になる。それをやらない限り、チームは好転しないからだ。カウンターで自分が批判されることは承知の上で、人に要求しないと勝利を手繰り寄せることは出来ない。

その「他人への指摘」をしっかり行っていたのが、DVDに映る湘南ベルマーレというチームだった。

これは他のJリーグチームだってやっている当たり前のことなのかもしれない。しかし、その映像を公開しているチームは湘南ベルマーレだけだ。

相対的にベルマーレがどうなのか、は私には分からないが、少なくとも湘南ベルマーレは激しく指摘し合っていた。良いチームだと思った。

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30歳から成長できるということ

このDVDで梅崎司が年下のチームメイトから指摘されるシーンを見て、これは羨ましいことだなと私は思った。彼のインタビューを聞く限り、それまで彼はこんな環境に置かれたことが無かったのではないかと。

年齢が上がれば上がるほど、人から指摘してもらうチャンスは少なくなっていく。それはサッカー選手に限らない話だ。

「もうこの人に話してもダメだ」「この人には指摘しづらい」「指摘してもしょうがない」

周りにそう思われた時、人の成長は一気に鈍化する。自らの過ちに気付けなくなるからだ。

梅崎は良いチームに行ったんだな。と思った。

サッカー選手として下り坂と言われがちな30歳からでも、環境次第で人は成長できる。

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剥き出しの感情はエンタメになる

湘南ベルマーレのDVDの一つの魅力は、「剥き出しの感情」だ。

どんどん自分の気持ちを押し殺して、社会に順応していくことを強いられる私のような一般の人間にとって、「感情の爆発」はドキドキするコンテンツだ。

キレる曺貴裁。ぶつかり合う梅崎、秋元。この感情の昂ぶりを公開することは、ひとつのエンターテイメントになる。

仕事に追われ、感情を失いそうになる自分の中に眠る、野生の気持ちというか、パワフルなエネルギーを分けてもらえる。

自分を解放できるという事は、サッカーやスポーツの中にある素晴らしい一面だと思う。

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こんなチームが残留争いをしていたという事実

もう一つ、忘れてはならない視点がある。

この良いチームが、曺貴裁の戦う姿勢を体現するチームが、2018年のJ1リーグ最終節まで残留争いをしていたというのがJリーグの現状だ。

どんなに厳しい世界なのだろう。

我々Jリーグのサポーターは、敗戦の時に簡単に選手を批判する。私も批判する事が良くある(批判する事が悪い事だとは思わない)。

しかし、私が簡単にチームを批判したその裏では、想像を絶する相手チームのモチベーションがあり、敗戦後のロッカールームでの衝突があるのかもしれない。当たり前だが、私が「負けて悔しい」と思った以上に、選手や監督は悔しいと思っているのであろうという事を、このDVDの映像を見ることで想像出来る。

その「想像力」こそがサポーターには大事だと私は思っている。

サポーターは批判もOKだし、文句も言えばいいと思う。しかしその矛先となる選手や監督は決死の思いで戦っている。そんな当たり前の事を具体的にイメージしながら批判するという事は大切だ。

鹿島との試合でのロッカールーム

最後に、幸運にも鹿島と試合をする前の湘南ベルマーレのロッカールームが映されていたので、その話を。

この日の試合前のロッカールームでも曺貴裁節が炸裂していた。その中の一文だけを紹介させていただこう。

いちいち試合中に自分たちが強いとか弱いとか、自分で自分を評価するな!夢中になってやれ!

鹿島アントラーズは、こんなに無我夢中の相手と戦っていたのかと。

私が応援している選手たちは、こんなに必死な相手と毎週戦っているのかと。

その現実を知れただけでも、このDVDを見る価値はあった。これからのJリーグ観戦に、さらなる深みを与えてくれる映像だった。

やっぱりJリーグは面白い。

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