天才の器。荒木遼太郎がJリーグデビューで示したポテンシャル

0-3で敗戦を喫した鹿島アントラーズの2020年のJリーグ開幕戦。断じてポジティブにはなれないスコアではあったが、鹿島アントラーズの未来を照らす強烈な光も見えた。

その光は東福岡高校から入団した高卒の荒木遼太郎。厳密には高卒ではなくまだ高校生だが。

今回のブログでは荒木遼太郎が示した光り輝くプレーについて書きたい。私の眼には彼が、天才の器であるように見えた。

荒木遼太郎のストロングポイントは何か?

改めて、私が感じた荒木遼太郎の素晴らしいポイントをセンテンスごとに整理しよう。

足元の技術があるとか、顔が格好良いとか、見れば分かる部分は省略したい。一見するだけでは分かりにくい部分からスポットを当てたい。

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「危険な2秒先」が見える

私が「天才の器」という表現を使ってまで荒木遼太郎のプレーを素晴らしいと思うのは、このセンテンスによる影響が大きい。

荒木遼太郎には「危険な2秒先」が見えている。

広島×鹿島の71分のシーンを手元のDAZNで見てもらいたい(見れない人にも分かるように文章でも説明する)。

広島のフィールドプレイヤー10人全員が自陣で守りを固めている所、荒木遼太郎が名古新太郎からバイタルエリアで縦パスを受けたシーンだ。

時計の針を2秒ほど巻き戻して止める。関川がノープレッシャーの状態でセンターサークル付近でボールを受ける。この時、荒木遼太郎と同じくピッチ中央にいたエヴェラウドと上田綺世は動いていない。

鹿島から見て左サイドにはスペースが空いており、町田がフリー。永戸もアウトサイドでボールを受けようと幅を取ろうとしている。普通の選手であれば左サイドにボールが行くと予想する所だ。

広島の選手もエヴェラウドや上田と同じく、ほとんど動いていない。全員が「(鹿島から見て)左サイドにボールが行く」と予想した事だろう。

しかし、ここで荒木だけが5-4のブロックの狭い狭いバイタルエリアに向けて動き出す。まるで2秒先に、「そこ」にボールを入れられるのを分かっているかのように。

時計の針を動かす。中央で関川からショートパスを受けた名古は、バイタルエリアに向けて動いた荒木の動きとそれに反応していない相手の動きを見逃さない。

名古から見事に縦パスを受けた荒木は、最も侵入が難しい、しかし最も怖いエリアに侵攻し、ゴールへの襲撃を試みた。

荒木の立場になってこの動きを考える。

”普通”は関川や名古から左サイドにボールが行くと考え、アラーノとポジションを入れ替えていた荒木は左サイド寄りに走り出す。サイドアタックを手助けする。繰り返すが、”普通”なら。

しかし荒木は、「2秒先にはここ(バイタルエリア)にボールを入れられるのではないか?」と考えた。正確には、「考えた」のか「本能」なのかは本人に聞いてみないと分からないが。

この動きは天才の器が為せる技だと思う。

思い出すのは本山雅志の動きだ。

彼は誰にも真似できないタイミングで、今回の荒木のような動きを繰り返していた。その動きから幾度となく鹿島アントラーズの得点を演出した。本山は技術も素晴らしかったが、この景色が唯一見える選手だったから最高だった。

私はその片鱗を、荒木遼太郎にも感じている。だからこそ、デビュー戦の時点で大げさだと思われるかもしれないが、決意を持って「天才の器」という強い表現を使いたい。

「一瞬を作る」予備動作を怠らない

荒木遼太郎の素晴らしいポイントは1つだけではない。

予備動作を怠らない事も荒木遼太郎の素晴らしいポイントだ。

対面の相手から”一瞬だけ”フリーになるための予備動作。それによって相手が動いたか動いてないか、味方の状況が変わったか、を確認する首振り。

それらの予備動作を怠らないからこそ、荒木にはタイミング良くパスが入る。

彼はボールを扱う技術にも長けているので、一瞬だけ自由を手に入れられれば違いを作れる。

モダンサッカーではスペースと時間の奪い合いが顕著になるため、アタッカーは一瞬の自由を作る技術こそ求められる。

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ステップが細かい

荒木はボールを持っている時のステップも細かい。

ステップが細かく、ボールタッチも細かいから、相手DFはボールを突付くのが難しい。

まだフィジカル的に完成されている選手ではないにも関わらず、荒木のボールロストが少ないのはステップの細かさとボールタッチの細かさ・正確さに起因しているだろう。

スタメン奪取を最も期待したい選手

この文章を読んでくれたあなたには既に伝わっていると思うが、今一番私がスタメン奪取を期待したい選手は荒木遼太郎だ。

ザーゴが試合後のコメントにおいて名指しで褒める事も多い事からも分かるように、ザーゴも荒木のプレーには期待を寄せているだろう。

本山雅志の鹿島入団から22年。もし私の見る目が正しいならば、今年の鹿島アントラーズサポーターは20年に1人の逸材を目撃する年になるかもしれない。

動画

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