評価の難しい選手、ファンアラーノのプレーを改めてポジネガ分析する

鹿島アントラーズとコンサドーレ札幌のトレーニングマッチ。

このゲームを見て改めて、アラーノのプレーに思いを巡らせた。ザーゴはどうやらアラーノをチームの軸に据えたいように見えるし、そうであれば自ずと今年の鹿島のキーマンになる選手になるのは間違いない。

今回はアラーノのプレーについて、これまで見てきた印象をポジティブな面とネガティブな面に分けて記載したい。

評価が難しい選手

まず最初に書いておきたいのが、アラーノは評価が難しい選手である。

セルジーニョのように「誰が監督でも重宝される」というタイプではなく、好き嫌いが分かれそうなタイプの選手だ。それは「ネガティブな面に目を向けるかポジティブな面に目を向けるか」によると私は考える。

そのため、改めて彼のポジティブな要素とネガティブな要素を分析したい。

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ポジティブな面

まずはポジティブな面から。センテンスに分けて説明したい。

トランジションの速度

まず私は、アラーノはトランジションの速度が速い選手という印象を持った。数試合を見た後の今も印象は変わっていない。

サッカーを4局面に分けるならば、「攻撃・攻撃から守備・守備・守備から攻撃」となるのだが、その「攻撃から守備・守備から攻撃」の2局面(つまりトランジションの局面)において、アラーノが鹿島の選手の誰よりも速くアクションを起こしている場面は多い。

「ボールを取りそう」あるいは「ボールを取られそう」という状況でもアラーノの身体が動いてる事は多い。実際にはトランジションが起きず、アラーノの予備動作が役に立ってない事も多いのだが、私はそのアクションの良さは彼の一番の武器に見える。

札幌戦の1本目の8分に右サイドから裏抜けをした場面などは、彼のトランジションの速さが生み出したチャンスと言えるだろう。鹿島がボールを奪った瞬間に札幌の裏のスペース目掛けて動き出し、一気にゴール前へ迫った。

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ボールへのリアクション

ボールへのリアクションも彼の長所だ。これはトランジションの速さとセットで考えたい。

彼は常にボールに向けてリアクションをする選手と言える。トランジションが起きる時に、アラーノは高い確率でボールに向けてリアクションを起こす。

札幌のゲームの1本目に荒木が見せた2つのインターセプトと比較すると分かりやすい。荒木が見せたインターセプトはボールに向かっていったわけではなく、「味方と相手を見て危険なスペース(パスが来そうな場所)を埋める」という動きでパスカットに成功した。

アラーノはおそらくそのような動きは得意ではない。常にボールへのリアクションを繰り返しているイメージだ。

事実、その動きのおかげでこぼれ球を拾えてる場面は多いし、鹿島が瞬間的に数的優位を作れている場面は生まれている。いわゆるゲーゲンプレス的な動きが求められる局面においては、彼のプレースタイルはハマりやすいように見える。

ザーゴがアラーノをチームの軸として使いたい最も大きな理由は、この2つに起因しているのではないかと推測する。

広範囲の動きと運動量

これは長所でもあり短所でもある所だが、アラーノは広範囲に動く。

特にボールサイドに動きたがる傾向は強い。

札幌戦のようにトップ下で起用された場合は、ボールサイドに動いて数的優位を作ってくれるのは悪くないと思う。CFが常に中央、アラーノがボールサイドという役割は分かりやすい。しかし公式戦の前3試合のようにSHで起用された時に逆サイドまで顔を出す動きはチームにカオスを生む。

アラーノの動きが広範囲ゆえに相手は捕まえにくいのは確かだが、その分味方にも混乱を生んでは意味がない。

彼の作り出すカオスが、味方を混乱させずに相手だけ混乱させるものであれば、それは勝利に結びつく動きとなるだろう。

また、広範囲に動ける(=運動量が多い)という事は良い要素だと思う。札幌戦でも他の選手には見られない裏抜けの動きを何本も見せてくれた。

ネガティブな面(ボールを受けた後の動き)

ネガティブな面にも言及したい。

アラーノのネガティブな面は、「ボールを受けた後の動き」に集約される。その「ボールを受けた後の動き」について、要素を分解したい。

見えてる景色の狭さ

アラーノはボールを受ける際に、見えている景色が狭いように見える。

例えば右サイドの広瀬がボールを持っている時にアラーノが引いて受ける。このようなシーンは何度もあったが、アラーノが見えている景色は「同サイドの前方の荒木」か「広瀬へのリターン」か、その2択しかなかった。

首を振って逆サイドに身体を向ける動きは見られなかったし、ターンするような動きも少ない。

視野が360度ではなく、120度くらいでプレーしているような、そんな動きだ。

当然アラーノの次のパスは読みやすい。相手のプレスの速度は速まり、リターンを受ける広瀬はアラーノにボールを出す前よりも更に状況が悪くなる。こんな状況はピッチ内で頻繁に起きており、鹿島のパス回しの停滞を感じる要素の1つでもある。

プレーの選択の素直さ

また、ボールを持ってる時のプレーの選択の素直さも課題に思える。

彼は自分が見えている前方の選択肢へのパスをそのまま選択する事が多く、更にパスのタイミングや正確性は相手DFの予想を上回っていない事が多い。

ゆえにボールがDFに引っかかる場面は多く、アラーノのボールロストの多さにも繋がっている。

前項で述べた通りに選択肢が少ない上に、プレーの選択も素直。

ボールサイドに寄ってボールを受けたがるものの、いざボールを受けた後のプレーは凡庸なのだ。

レアンドロのように奇妙なリズムのドリブルや深い切り返しで相手DFの裏をかく場面は少なく、またセルジーニョのようなボールコントロールの正確性も無い。これらの要素が重なって、アタッキングサードで違いを生み出すには物足りなさを感じる。

オフザボールが長所でオンザボールが短所

以上を踏まえて、アラーノの特徴を端的に言うならば「オフザボールが長所でオンザボールが短所」である。

前線の選手にはオンザボールの正確性や技術の高さを求めた大岩監督ならば、アラーノは難しい立場だったかもしれない。

彼のような特徴を持つ選手を活かすには、監督の技量が問われる事になる。ザーゴスタイルの成熟、そしてアラーノの動きとの化学反応に期待したい。

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