鹿島アントラーズが、スペースを消した相手に得点を奪えない。今日のJ1リーグ第6節でもスペースを消され、ゴールを奪えなかった。
私なりに、今の鹿島がゴールを奪えていない理由について考察をしてみる。
ザーゴのコメント
試合後、ザーゴ監督はこのようにコメントした。
監督の仕事はボールを後ろから前に運ぶというのを徹底的にやって、そういった部分は出来てるし、あとはファイナルサードの所でチャンスは作っているんだけど、なかなか決めきる事が出来ない。どうしてもチームの結果が伴っていないという事で、前目の選手には焦りがあったり力んでしまったりという所がある。そこをもう少し落ち着いて出来るようになればなと。最後のゴールというのは個人の部分なので、練習しているんだけど実際の試合だと中々決まらない。
(一部抜粋)
「最後のゴールというのは個人の部分」という言葉が私には引っかかる。
ザーゴの事は応援しているが、この言葉にはどうしても引っかかってしまう。
今の鹿島の「スペースを消された相手に得点を奪えない状態」を個人の問題にしてしまっては、問題が解決しないままシーズンが終わってしまうように感じるからだ。
今回は「スペースを消された相手に得点を奪えない」という鹿島の現状の最も問題だと考えている所を文章にしたい。
クロスからのフィニッシュという型
ザーゴ監督はクロスからのフィニッシュを攻撃のメインの型にしたいのだと思う。
ボールを奪えば相手のSBの裏(あるいはWBの裏)、つまり相手PAの横を取る事を優先し、そこからクロスを上げて中で勝負。このような型は何度も見られる。
型を持っている事は悪くない。むしろチームの意識が揃っているならばそのままで良いと思う。型に持っていくまでのボール運びも、ザーゴ監督が言っているようにスムーズになっているのも事実だ。
相手ブロックの外からの攻撃
問題は、鹿島のアタッキングサードでの攻撃の多くが相手ブロックの外からのチャレンジに終始してしまっている事だ。
端的に言えば、相手を外せていない。ズラせていない。
ブロックの外からクロスを上げ続けるなら、エヴェラウドや綺世の身体能力に期待をするか、永戸や広瀬や杉岡が絶品のクロスを上げるか、事故が起きるか、に期待をするしかない。ブロックの中にボールを放り込むだけで得点を奪えるほど、サッカーは簡単なゲームではない。
対戦相手も、屈強でヘディングが強い選手をCBに揃えている。このままの攻撃で得点を奪う難易度が高いのは当然のことだろう。
相手を見るということ
鹿島アントラーズがこの型で得点を奪うには、選手個人の技量ではなく「相手を見る事」にヒントがあるのではないかと思う。
今の鹿島は、スペースを消されブロックを作られた状態の相手に対して、相手を外せていない状態で、普通のタイミングでクロスを上げている事が多い。
例えば、湘南戦の77分。杉岡がアウトサイドレーンの深い位置まで侵入してクロスを上げ、クロスを跳ね返されたシーン。
杉岡は相手のWBを完全には外せておらず、タイミングも教科書通りのタイミングでクロスを上げた。
これ、守りやすいのだ。相手からすれば。
このようなシーンは杉岡だけではなく、永戸にも、広瀬にも、和泉にもある。つまり個人の問題ではなく、チームの課題だ。
アウトサイドレーンの深い位置までボールを運ぶ。その先のビジョンに、”相手”がいない。
おそらく鹿島の選手は練習通りのタイミングでクロスを上げているんだろうと思う。そのタイミングは味方も合わせやすいタイミングかもしれないが、相手も守りやすいタイミングだ。
相手は「来そうだな」というタイミングで、「来そうだな」という場所にクロスが来る。相手DFの想定を上回る事が出来ていない。
おそらくこれが、スペースを消された相手に対する得点力不足のボトルネックなのではないかと思う。
このままの状態でスムーズに得点を取るには、相手の想定を上回る能力を持つドウグラスのようなFWが必要だ。という話になってしまう(そしてそれは本質的な解決にはならない)。
もう1つ相手のブロックを崩すこと
では鹿島アントラーズは何をする必要があるのだろうか。
そのヒントとなりそうなシーンが湘南戦に1つあった。
52分に永木が広瀬と右サイドを崩して、ゴール前に低いクロスを供給。町田が飛び込んだシーンだ。
この攻撃は、他のサイド攻撃よりも1つだけ「相手ブロックの内側」に侵入してからクロスを上げた。
サッカーとは面白いもので、サイドの選手が対面の相手を剥がしてからラストパスを供給すれば、得点の確率は上がる。相手のCBがドフリーのサイドアタッカーに対してアテンションが向き、迷いが生じ、結果的に相手ゴール前のマークやブロックに”ズレ”が生まれるからだ。
グアルディオラがサイドにアイソレーションの強い選手を置いているのは、「中央のDFを動かして得点の確率を上げるため」だと私は認識している。
将棋で言うならば、相手の金将を動かさないと王将は取れない。今の鹿島は金将を動かせていない。
ブロックを崩す選手
鹿島には昔、本山雅志という「ブロックを崩す天才」がいた。
ただのサイド攻撃に本山がアクセントを加えて、ブロックを1つ崩して相手守備の崩壊、そして得点に繋げていた。
今の鹿島に本山雅志はいないが、今の鹿島の攻撃を1つ飛躍させる鍵は本山雅志のプレーにあると思う。カイオのようにアイソレーションの強い選手がいない今の鹿島は、そこに解決策を見出すのが常套手段ではないだろうか。
そして本山のやっていたようなプレーを実行出来るキープレーヤーが、遠藤康であり、土居聖真であり、白崎凌兵だと、私は思う。
今よりもブロックを1つ崩す。中央のDFのアテンションを動かしてからラストパスを供給する。アテンションが動かないならそのまま侵入してフィニッシュしてしまう。
ザーゴが頭を悩ませる「アタッキングサード(ファイナルサード)」を崩すためのピースは、鹿島には揃っているはずだ。