ここ最近、私の頭を悩ませている問題がある。
鹿島アントラーズの監督のザーゴが、控えメンバーにCBを入れないのだ。戦術的に、あるいは戦略的に、この思考を理解しようと試みるが、どうやら私の腑に落ちるようなロジックは見つからない。
結果から先に言ってしまうと「ザーゴと私ははやっぱり信念が違うんだな。」という結論に落ち着く。
ここから先に綴る話は、サッカーの話であってサッカーの話ではないかもしれない。哲学や信念の話だ。興味のある方は先に進んでいただけると幸いだ。
ちなみにザーゴをdisる意図は無い。私はザーゴの事が好きなので。
控えにCBを入れない問題
鹿島アントラーズの直近2試合(浦和戦と清水戦)において、ザーゴは登録メンバーの控えにCBを入れなかった。
▼浦和レッズ戦のスカッド
GK:沖
DF:小泉・犬飼・町田・山本
MF:三竿・レオ・アラーノ・土居
FW:エヴェラウド・綺世
リザーブ:スンテ、広瀬、永木、遠藤、荒木、松村、伊藤
▼清水エスパルス戦のスカッド
GK:沖
DF:小泉・犬飼・町田・山本
MF:三竿・レオ・アラーノ・土居
FW:エヴェラウド・綺世
リザーブ:スンテ、広瀬、永木、遠藤、荒木、松村、名古
実はこの2戦以前にも、川崎フロンターレ戦あたりから鹿島は控えにCBを入れていない。
しかしその時期は町田・関川が離脱していたという状況があった。
「控えにCBを入れない」のではない「控えにCBを入れられない」状況だった。これに関しては仕方ない。ザーゴうんぬんの話ではない。
問題は浦和戦・清水戦だ。
奈良の状況は分からないが、関川郁万は元気に練習している様子であり、メンバーに入れられない状況ではなさそうだ。
週末のホーム清水戦へ向けて!#antlers #kashima#曽ケ端準#関川郁万#町田浩樹#クォンスンテ
12日(土)のホーム清水戦は16時キックオフです!聖地カシマスタジアムでまたともに戦いましょう!
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— 鹿島アントラーズ (@atlrs_official) December 8, 2020
となると、ザーゴは意図的に「控えにCBを入れない」という選択をしているという線が濃厚だ。
※もしかしたら関川郁万が万全にプレー出来ない状態なのかもしれない。その場合はこのブログの内容は忘れてほしい。
控えにCBを入れないという選択
と、こんな感じで前2試合についてザーゴが意図的に「控えにCBを入れない」という選択をしていると仮定する。
私はこの選択の合理性にクエスチョンマークがつく。
例えば私なら
- 先発の犬飼や町田が怪我する
- 犬飼や町田が退場する
- 1点勝ってる状況で、変えようのない流れの中で相手の放り込みをあと10分耐える
こんな状況が起きる事を、メンバー選考の時点で想定する。私だけでなく、多くの人は想定すると思う。
ご存知の通りCBは特殊なポジションなので、犬飼・町田の代わりを務められるのは関川・奈良しかいない。
ザーゴはこれらのリスクに対して「三竿をCB」という最低限の対策を持っているのだと思う。
しかしそうなった場合に、中盤で鬼神のようにボールを狩る三竿を最終ラインに下げなければいけない。今の鹿島の生命線とも言えるプレッシングが機能しなくなる事は明白。CBが何らかの事情でピッチからいなくなった瞬間に鹿島は脆くなる。
私が危惧する状況が起きる可能性は、ハッキリ言って低いとは思う。10回中1回あるか無いか、くらいの確率だとは思う。
でもその1回が来てしまって仮に勝てなかったならば、私なら悔やんでも悔やみきれない。一生後悔して夢に出てくるレベルだと思う。
実力で負けるのではなく、指揮官の判断ミスで負けるようなものだから。リスクヘッジを怠って選手に満足に戦わせてあげられない自分を責めるだろう。
オマケとして、CBが控えにいない事を知った相手が犬飼や町田を狙い撃ちしてラフプレーを仕掛けてくる可能性だって出てくる。戦う前からわざわざ自分たちの弱点を作ってあげる事にも繋がる。
リスクと引き換えに享受するメリット
こんな感じに私なら考えるわけだけど、ザーゴはきっと違う。
ザーゴはCBを控えに入れない事で引き起こるリスクと、攻撃の選手を豊富にそろえておく事で享受できるメリットを天秤にかけて、メリットが大きいと考えるのだろう。というか、「CBに何かあったら仕方ない」くらいに考えてるのかも知れない。
確かに広瀬、遠藤、荒木、松村、名古といった選手をスカッドに入れられるのは魅力的ではある。
「主導権を握る」を標榜するザーゴらしいと言えばザーゴらしい。
しかし私は理解出来ない。攻撃の選手を揃えるメリットよりもリスクが上回る。※ちなみに大岩前監督もリスクを気にするタイプだった。
サッカーは思い通りにいかない。絶対に思い通りにはいかない。鹿島がどんなに強くても絶対に思い通りにはいかない。それが私の考え方だから、指揮官のリスク管理不足くらいはせめて避けたい。特に鹿島は対戦相手よりも戦力が上回ってる事が多いので、リスク管理は特に重要なファクターになる。
哲学の話
今回、CBを控えに入れない2試合で鹿島は勝った。
私はその勝利に対しても少しだけモヤモヤが心の中に残る。「もし前半で犬飼が怪我していたら…?」「町田が退場していたら…?」という具合にモヤモヤする。
しかしザーゴは違う。私のロジックとザーゴのロジックが落ち合う事はおそらく無い。
仮に想定できるアクシデントが起きて負けても、ザーゴは死にたくならないタイプなんだと思う。
だからザーゴはクソだ!と言いたいわけではない。繰り返しになるが、ザーゴは好きだし、これからも応援している。
ただし何というか、私とは違う信念で生きている人なんだとは思う。今回の「CBを控えに入れない」以外の話でもそう思う事はちょこちょこある。
そしてザーゴの信念には危うさも孕んでいると思う。
信念は強いが盲目的であり、脆い。やはりこれまでの鹿島の監督にはいなかった、全く違うタイプである。
私はこれからも、ザーゴがどのような選択をしていくのか、チーム作りをしていくのか、今回のようにグチグチと騒ぎながら楽しみに応援していきたい。
私と違う信念を持っているからこそ、これからもまだザーゴから何か新しいスタイルや哲学を学べそうな気もしている。