最新号の『Number』に久保建英のインタビュー記事があり、非常に面白く拝見させていただいた。そこで、久保建英の発言でひとつ気になった所があった。
それは岩政大樹が著書の『FOOTBALL INTELLIGENCE 相手を見てサッカーをする』で書いた事と近い内容だった。
今回はその「久保建英と岩政大樹の2人が語ったことの共通点」について書きたい。
久保建英が語ったこと
まずは『Number』で久保建英が語ったことの一部を引用させていただく。
(高萩洋次郎などの先輩のプレーが凄いという話の流れで、そこは経験か?と問われ)
きっと観て情報を得るということにプラスして、サッカーだと大体同じような形になっていることも多いと思うんです。
『Number』979号/文藝春秋
久保が何気なく語ったであろうこの言葉だ。
これを読んで、岩政大樹が著書で書いていた事に近いなと感じた。共通点を感じた。
では、久保の発言と岩政大樹の言葉の何に共通点があったのだろうか。
岩政大樹の言葉
岩政大樹の著者『FOOTBALL INTELLIGENCE』には、このような言葉がある。
よくパスがうまい選手のことを「俯瞰してサッカーをしているようだ」と言われることがありますが、そうした選手はいつも「こうなったらここが空く」という方程式みたいなものを持っているだけに見えます。
『FOOTBALL INTELLIGENCE』岩政大樹/カンゼン
ここだ。ここで岩政が書いている事と、冒頭の久保の言葉には近いものを感じた。
(とはいえ、話を省略して引用させていただいたので、やや伝わりにくいかもしれない。)
上手い選手の頭の中
2人が語ったことの共通点は、「上手い選手が頭の中で描く絵」というものは、相手の動き次第で方程式のようにある程度パターン化されているものではないか。ということだ。
分かりにくいかもしれないので、例を上げてみたい。
▼このような場面で、レオ・シルバ(赤の4番)が土居聖真(赤の8番)にパスを出すシーン
例えばこのケースであれば、土居にアプローチしてくる可能性があるのは3選手。
- RSBの選手
- CBの選手
- CBの前にいるDMF
これらのいずれかがアップローチに来る。現実的にはDMFでは手遅れなので、RSBかCBの二択がほとんどだろう。
この時、相手のどちらの選手が動くかによって、「最終的に空きそうな選手やスペース」がある程度予測できるのではないか。つまり「詰みの場所」がある程度予測できるという事だ。※詳しくは『FOOTBALL INTELLIGENCE』を読んで下さい。
その「詰みの場所」を、レオがボールを蹴って相手DFが動いた瞬間に思い描けるのが、久保の言う「高萩洋次郎」であり、岩政の言う「上手い選手」なのではないだろうか。
そしてその「詰みの場所」を出し手も受け手も、チーム全体で感じ取れるのがおそらく強いチームだ。
ちなみに私は20年以上サッカーをやっているが、ピッチの上でその次元で「詰みの場所」を思い描けたことは殆ど無い(笑)。が、理屈的には理解しているつもりだ。
しかしプロの選手の中には、確実にピッチ上で瞬時に思い描けている選手がいる。相手と味方の動きによって「詰みの場所」が見えてくるような、そんな感覚だろう。羨ましい限りだ。
久保建英の凄さ
久保建英の凄さは高校3年の年代にして、その事に気付いていること。そして、自分で「詰みの場所」を描けるように着実に努力していることだ。
事実、今シーズンに鹿島がFC東京に完敗した試合においても、久保は常に鹿島のDF陣の動きを観て「次のプレーのビジョン」や「次に出来るであろうスペース」を思い描いているように見えた。いや、そうでないと困る(アレを何も考えずにやれたらズルすぎる笑)。
あれは確実に「自分の仕事はドリブルやカットイン」と決めつけているだけの選手のプレーでは無かった。
久保には海外移籍の噂もある。彼の将来がどんな結末になるのかは分からないが、いち鹿島サポーターとしては是が非でもリベンジしたい選手の一人だ。