記憶が新しいうちに、鹿島アントラーズの2019年Jリーグをトピックスと共に振り返る(後半戦)。
前半戦はこちら↓
第18節ホームジュビロ磐田戦
○2-0
J1通算500勝を飾った試合。
1点目はセットプレーを小池が蹴ってオウンゴールを誘発、2点目は左サイドを駆け上がった小池が左足でスーパーゴールを突き刺した。
シーズン途中に加入した小池裕太は、前節の広島戦の弾丸ミドル、天皇杯北陸大学戦でのクロス、そして今節のスーパーゴールと、左SBとしての能力を存分に発揮してくれた。
攻撃の主軸を担っていた安西のポルトガル移籍が確定的な中、不安を持っていたサポーターも小池のプレーぶりには納得だった事だろう。
試合全体を振り返ると、鹿島がキッチリブロックを作って守備をしながらも、攻撃では土居聖真を抑えられてしまい、これまでのような攻撃の型を作る事は出来なかった。
セービングが安定していたスンテ、攻撃で際立った小池の活躍で勝利をもぎ取った。
実況・下田さんの「小池走る、小池打つ、うぉおおおおーーーーーーー決まったぁ!!!!」という名実況も生まれた。
試合後、小池は「(シュートではなく)正直クロスでした」と素直に話してしまう所に彼の人間性が表れた。「狙いました」と言ってしまえばいいのに、と私は思った。
第19節アウェイベガルタ仙台戦
○4-0
仙台のシュミット・ダニエルが仙台でのラストマッチとなった試合。
鹿島は前節と同じメンバー↓
GK:スンテ
DF:永木・犬飼・町田・小池
MF:三竿・レオ・レアンドロ・白崎
FW:セルジーニョ・土居
セルジーニョ2発と白崎・土居のゴールで完勝した。特にセルジーニョは4点全てに絡む活躍でチームを牽引した。
このゲームでは土居とセルジーニョが非常に良い距離感でプレーしており、多くの決定機を演出した。
小池も前節に続き活躍をみせ、1点目は高速クロスを送り込んでアシストを記録した。
ベガルタ仙台に対して個の能力で完全に上回っていた鹿島は、盤石の勝利を見せることが出来た。
犬飼も守備・攻撃の両面で充実したプレーぶりを見せ、確実に成長している事を証明した。このゲームあたりから犬飼のプレーに自信のようなものが見えるようになってきた。
第20節ホームサガン鳥栖戦
○2-1
鹿島アントラーズの元10番、金崎夢生とカシマスタジアムで相まみえたゲーム。
鳥栖との前半戦のアウェイゲームではロスタイムに決勝点を決められる悔しい試合をしているだけに、このゲームでは絶対に勝利を掴みたい。金崎夢生に負けるのも嫌だ。
スタメンには、前節のメンバーからレオと土居が外れ、名古と伊藤翔が入った。名古は完全に戦力の一人として認められた感がある。
試合はレアンドロのPKと白崎のゴールで勝利した。しかし、金崎夢生には「金崎らしい」ゴールを決められてしまった。金崎のゴールは完全にオフサイドだったので誤審だった訳だが、やはり怖い選手だと再確認した。
レアンドロは1G1Aの大活躍 で、彼の持つ不思議なリズムのドリブルは鳥栖のDFを困惑させた。
この試合は白崎の持つ献身性が際立ったゲームでもある。決勝点は正にその献身性が実ったゴールと言える。スタメン定着以降、ずっとチームのために走り続けた男と掴んだ勝利だ。
第21節アウェイ湘南ベルマーレ戦
●2-3
このゲームの3日前、ミッドウィークには灼熱の埼玉スタジアムで試合を行い、そこから中二日で夏のナイトゲームを迎えた。
BMWスタジアムは埼玉スタジアムより幾分涼しかった記憶はあるものの、夏の連戦はキツい。
スタメンには町田ではなくスンヒョンが入り、好調の名古もスタメン入り。
前半から苛烈なプレスをかけてくる湘南は、体力的に厳しい鹿島にとっては最悪の組合わせだった。この試合もアウェイ鳥栖戦と同じく、後半ロスタイムで決勝ゴールを決められてしまった。
シーズンが終わった今、改めて振り返ってみると、この湘南戦や鳥栖戦で負ったダメージは大きかった。
これらの試合であと数プレー、あと数分耐えて引き分けに持ち込んでいれば、シーズンの結果も変わっていたかもしれない。
そんなゲームではあるが、途中出場の山本脩斗が久しぶりに好プレーを見せてくれた。このチームにはまだまだ山本脩斗の力が必要だ。
第22節ホーム横浜F・マリノス戦
○2-1
前節を落としており、更に相手は優勝を争う事が予想されるマリノス。絶対に負けられないゲームで、新加入の小泉と、ここに来てチームの最終兵器としての活躍が期待されるブエノが先発に名を連ねた。
スコアはすぐに動く。
DFラインとGKからボールをつなぐマリノスに鹿島が襲いかかり、セルジーニョが見事なコントロールシュートを決めた。
聖真の幻の2点目はオフサイドの判定で取り消し、その後には仲川に同点ゴールを決められるなど、悪い流れの中だったが途中出場した上田綺世が決勝点を決めて勝利をもぎ取った。
新加入の小泉が一定水準以上のプレーをしたこと、ブエノのパフォーマンスが素晴らしかったこと、綺世が決勝ゴールを奪った事など、ポジティブな要素の多いゲームだった。土居も気持ちの入ったプレーを見せたし、三竿も圧倒的な存在感でチームを牽引した。
この勝利で、鹿島の優勝への道が少し見えてきたと感じたサポーターも多いことだろう。それくらい、好調マリノスへの勝利は大きなものだった。
第23節アウェイ大分トリニータ戦
○1-0
このゲームは天皇杯から中2日での体力的に厳しいアウェイゲーム。
前節に続き、小泉とブエノの起用、名古と伊藤翔を起用し、セルジーニョを右サイドに回した。
右サイドで起用された相馬は、間延びしたゲーム展開の中で右からカットインして左足一閃。鹿島移籍後の初ゴールを決めた。開幕戦で「してやられた」ゲーム展開とは異なり、相手に食いつかず我慢を繰り返す中で、後半にジョーカーを繰り出して勝利を掴んだ。
ブエノのプレーぶりはこの日も出色の出来。攻撃面でもスンヒョンには無い積極性を見せ、チームを後ろから活性化した。
しかし、このあたりのゲームでリアクション主体のサッカーで結果が出ていた事が、シーズン終盤に攻撃面での課題を残す事に繋がってしまったのかもしれない。
第24節ホームガンバ大阪戦
△2-2
このゲームも名古が先発。レオを欠く試合が続く。
ガンバ大阪にロングボールを中心にチャンスを作られたゲーム。前線のパトリック・アデミウソンは空中の競り合いに長けており、1失点目の場面ではブエノがアデミウソンに上手く身体をぶつけられてしまった。2失点目もロングボールから小泉が目測を誤ってPKを献上してしまった。
鹿島の1点目は土居聖真とセルジーニョのコンビで奪った。このセルジーニョの右足のゴールはセルジーニョらしさを存分に感じた。彼は「どちらの足が蹴りやすいか」ではなく、「どちらの足で蹴るべきか」で蹴り足を判断出来る選手だ。
左利きにも関わらず、右足でニア上を撃ち抜けるのはセルジーニョのスペシャルな所でもある。素晴らしいゴールだった。プレスバックでボールを奪い、ゴール前まで運んでゴールをお膳立てした土居聖真も見事なプレーだった。
第25節アウェイ清水エスパルス戦
○4-0
アウェイで完勝したゲーム。このゲームで鹿島は4戦負けなし。
ミッドウィークにACLを戦っていた事もあり、先発は入れ替えた。この日の先発に入ったのは綺世、遠藤、レアンドロ、伊東など。チームの総力が問われたゲームできっちり結果を出せた事は素晴らしかった。
特に、先制点を上げて4点目のアシストも記録した遠藤康のプレーは白眉だった。先制点の場面でのチームメイトたちのリアクションを見ても、彼の人望の厚さが見て取れる。守備も献身的にこなした。
そして綺世だ。この日は2点目のPK奪取、3点目と4点目の得点と大車輪の活躍。PKを自分で蹴っていればハットトリックだった。
常に背後を狙おうとする動きは清水を混乱に陥れ、また要所を突く動きをしてくれる遠藤との相性も良かった。
第26節ホームFC東京戦
○2-0
首位FC東京とのシックスポインター。このゲームを落とすかモノにするかで、シーズンの行方が間違いなく変わる大一番だった。
試合開始早々、ピンチから始まったが、犬飼が冷静に守備をしてゴールを守り、ブエノの先制点に繋げた。地道にではあるが、確実に実力をつけてきている犬飼の成長を大きく感じたゲームだった。
ディエゴ・オリヴェイラと永井という強力2トップをブエノ・犬飼コンビできっちり抑え、中盤では三竿と土居がゲームを支配し、完勝といえるゲームに持ち込んだ。セルジーニョのミドルシュートも見事だった。
シックスポインターを制したことで首位FC東京との勝ち点差は1に。
いよいよ優勝に向けて視界が開けてきた。と思っていた。
しかし、思い返せばこの試合で負った三竿健斗の負傷が長引き、ここからのACLやルヴァン、Jリーグを三竿無しで戦わなければならなくなったのは大きすぎる代償だった。
三竿が抜けた後の鹿島は、安定感とインテンシティ、そしてボランチと右SBのやり繰りに課題を抱える事となる。
第27節ホームコンサドーレ札幌戦
△1-1
三竿が怪我で離脱し、小泉・レオのコンビで挑んだ試合。また、内田篤人が久しぶりにリーグ戦で先発に入った。
小泉は懸命に頑張っていたが、やはり三竿と比べるとボランチとしての動きの質が低く、三竿離脱の影響は少なくなかった。
三竿がいないことで守備の距離感が悪く、結果的に守備の時間が長くなってしまう。前半に落ち着いて試合に入りつつ試合終盤に攻撃のブーストをかける大岩監督の鹿島にとって、「試合終盤になっても守備の時間が長い」というのは大きな問題だった。
セルジーニョがリーグ戦4試合連続ゴールを決め、好調を維持していたのはポジティブだったが、ゲームを通してペースを握っていたのは札幌だった。
6戦負けなしではあるものの、FC東京に勝利してこれから勝点を重ねたい鹿島にとっては痛い引き分けとなった。
第28節アウェイセレッソ大阪戦
○1-0
町田が左SBで起用、中村充孝がSHで先発、白崎がボランチで永木と組んだ。
試合開始早々に永木のCKから町田が折り返し、犬飼が飛び込んで先制点をゲット。ここまでDFラインを引っ張ってくれたDFリーダーが報われるゴールは私も嬉しかった。
試合はスンテがことごとくシュートストップを繰り返し、セレッソの意欲を削いでいった。
ボランチに入った白崎は上々のパフォーマンスを見せてくれたし、町田もエアバトルを中心に勝利に貢献し、7戦負けなしとなった。
そしてこの時点で鹿島アントラーズは今シーズン初の首位浮上。
守備の場面も多いゲームだったが、鹿島サポにとって「セットプレーからのウノゼロ」は良いイメージを持っており、ここからJリーグ終盤戦に向け、連勝を重ねていきたい。ところだった……
第29節アウェイ松本山雅FC戦
△1-1
ルヴァンカップで川崎に敗退した直後のアウェイゲーム。ルヴァンカップは敗退しただけでなく、犬飼の負傷という痛いアクシデントもあった。
この試合では内田篤人とスンヒョンがDFラインに入り、小泉と名古のボランチ、遠藤が右SH、綺世がFWに入った。夏に連勝を重ねたチームとはかなり異なったラインナップでの試合となる。
このゲームは立ち上がりに失点をしてしまい、苦しい試合運びとなる。先制以降の松本山雅は5バックのブロックを敷いて、藤田息吹を中心に強固な守りを見せた。鹿島はブロックを崩すポジショニングやアイディアを持ち合わせておらず、綺世のPKで追いつくのがやっとだった。
小泉のボランチ起用はバシッとハマらず、やはり彼はSBで起用してほしいなぁと思う気持ちが強かった。
前節に首位に浮上したものの、ルヴァンカップ敗退からの悪い流れを引きずってしまう試合となった。
第30節ホーム浦和レッズ戦
○1-0
このゲームの先発は、左SBに町田、右SBに永木が入り、そしてボランチには久々に三竿とレオがコンビを組んだ。
三竿が復帰し、圧巻のパフォーマンスを見せた。ミスはほとんど無く、チャンスメイクから相手DF裏への配給、ボール奪取まで、浦和レッズを相手にピカイチの存在感を見せつけた。
ブエノや永木も闘志むき出しで相手に挑んでいき、首位を維持した。
しかし、このゲームの後に三竿が再離脱となり、鹿島はベストのスカッドを組めない状態が続く。
第31節ホーム川崎フロンターレ戦
●0-2
このゲームから33節まで、内田篤人を先発で起用する。しかし、その3試合全てで鹿島は勝点3を得る事が出来なかった。
「内田篤人で勝てない問題」は大きな問題だと思っているが、この件については別途記事にしたいと思う。
鹿島は伊藤翔が前半の決定機を外し、後半にはセルジーニョが土居のお膳立てからの決定機を逸した。するとセットプレーで山村にヘディングを沈められ、最後は長谷川に追加点を奪われ万事休す。
ブエノがどんな相手にも対人で圧勝するプレーぶりを見せる中、鹿島は戦術として彼の能力を上手く使いこなせていない印象が残った。また、内田のプレーぶりもシーズン序盤よりもかなり低調なもので、チームの活動量の少なさの要因の一つになってしまった。
この敗戦で鹿島は首位から陥落し、這い上がる事は出来なかった。
ルヴァンカップの敗戦、そしてリーグ戦での敗戦。
やはり鹿島が本当の強さを取り戻すために、川崎フロンターレからは勝利を奪わなければならない。川崎が鹿島のタイトル獲得への大きな壁となった。
第32節アウェイサンフレッチェ広島戦
△0-0
晴天の中で迎えたアウェイゲーム。
首位から陥落した鹿島はラスト3節を必勝しなければならなかったが、結果的にこのゲームは引き分けに終わった。
広島が良いプレーをしていたというよりは、鹿島のプレーが勝利に値しなかったゲームだった。
三竿がいなければ攻守に距離感が悪く、内田をSBに入れるとダイナミズムに欠ける。左サイドでは本職ではない町田が奮闘を続けるものの、白崎とのコンビネーションはチャンピオンを狙うレベルには無かった。鹿島の得点源となっていたセルジーニョも元気が無かった。
大岩監督の采配(ジョーカー相馬を切るタイミングなど)も思い切りが足りず、内田がフル出場出来ないのもチームとして痛恨だ。
鹿島アントラーズのJリーグ制覇は、この試合のドローで一気に遠のいた。
第33節ホームヴィッセル神戸戦
●1-3
3万4000人を超える観客がカシマスタジアムに駆けつけた試合。
シーズンを通して安定したパフォーマンスを見せる名古が左SHに入った。一方の神戸はイニエスタ・フェルマーレン・古橋・ビジャなどがスタメンから外れていた。一方の鹿島は犬飼が復帰したが、三竿とブエノを出場停止で欠いた。
このゲームでは酒井高徳に鹿島の右サイドを支配され、酒井高徳サイドを有効に使われて攻撃を展開された。また、大崎のオーバーラップに鹿島は為す術もなく振り回され、山口蛍には要所を締められた。
鹿島には神戸を上回る運動量もアイディアも気迫も無く、神戸が試合のペースを握ったまま試合はクローズしてしまった。
開幕戦で2ゴールを許した藤本に、またも1ゴール1アシストの活躍をされたのはメチャクチャ悔しい。今年の鹿島は藤本憲明に2タテを食らった気分だ。
土居聖真のゴールは、今年の彼の責任感の強さや意思の強さが表出したようなナイスゴールだったが、チームに火を付けるには至らなかった。
この敗戦で、鹿島のJリーグ制覇の目標は潰える。
第34節アウェイ名古屋グランパス戦
○1-0
Jリーグ優勝は無くなったが、まだ3位以上が確定していない鹿島はこの試合で最低引き分け以上の結果が必要だった。
しかし、ほぼ残留が確定していた名古屋との試合はテンションが高いものにはならず、ヒリヒリするような試合展開にはならなかった。
先発には三竿が復帰し、GKには曽ヶ端が入った。
右SBに入った永木のクロスから相手のオウンゴールを誘い先制に成功すると、大きなピンチを招く事もなく試合を終わらせる事に成功した。
結果的に3位は死守したが、川崎戦以降の4試合はタイトルを取れるチームの試合ぶりではなかった。