2019年ACLグループリーグ第6節、鹿島アントラーズVS山東魯能戦。マッチレビュー。
試合結果
2-1
【得点】
11分 マルアン フェライニ
68分 伊藤 翔
70分 伊藤 翔
スタメン
鹿島のスターティングメンバーは以下の通り。
GK クォン・スンテ
DF 永木亮太 チョンスンヒョン 犬飼智也 町田浩樹
MF 三竿健斗 レオシルバ 白崎凌兵 中村充孝
FW 土居聖真 セルジーニョ
ここ数試合好調が続く鹿島。このゲームを落とせばACLの敗退が濃厚だ。鹿島にとっては非常に重要なゲームとなる。ターンオーバーをしてる場合ではない。好調の原動力になっていた「安西・レアンドロの不在」がどう響くだろうか。
また、対戦相手の山東にも注目だ。この試合、彼らにとっては消化試合だったはず。試合前から山東の1位通過は確定しており、メンバーを落としてくるものだと思った。しかし、蓋を開けてみればペッレやフェライニ、ジウはスタメンに名を連ねた。
山東の意図は分かりかねるが、「ここでアジアチャンピオンである鹿島を潰しておく」という狙いがもしかしたらあったのかもしれない。山東はここで鹿島を殺せたら御の字だったのだろう。
この相手をしっかり跳ね返し、最低でも引き分けを奪い取るのがこの試合のミッションとなった。
試合レビュー
試合を振り返ろう。
基本配置
両チームの基本配置はこのような形だった。
※赤紺を鹿島、白を山東で表現
ほぼミラーに近い配置だった。
前半11分の失点
試合のターニングポイントの1つは前半11分の早すぎた失点だった。
この失点は鹿島にとってゲームを難しくした。
この失点をきっかけに、山東は無理に攻めることなく自陣でコンパクトに守備を敷く形を取った。鹿島が能動的にアクションを起こさなければ得点を奪えない(=敗退してしまう)ようなシチュエーションになってしまった。
コンパクトな守備を崩せない理由
鹿島は前半、山東の守備のバランスを崩し切ることが出来なかった。
その要因を2つ挙げよう。
- バイタルエリア圧縮の山東の守備
- サイドでの質的優位を作れない鹿島(安西の不在)
まずは山東の守備について。彼らは前半、DFラインを低く設置、ボランチもDFラインと距離を空けない形で低い位置を取り、合わせてFWも自陣の低い位置で守備に回る、という陣形を組んだ。
イメージはこんな感じ
山東は11人全員が自陣の守備に入り、それぞれが近い距離感で動いていた。
特に、鹿島が攻撃の糸口としたいバイタルエリア(DFラインとボランチの間のスペース)が圧縮されていて、なかなか良い形を作ることが出来なかった。
相手が中央にコンパクトな密集を作っている守備隊形なので、鹿島としてはサイドを中心に攻撃を仕掛けたい。
ここで痛恨だったのは安西の不在。
いつも鹿島の左サイドで、攻撃時の優位性を作ってくれる安西幸輝がこの試合は不在だった。
安西がいれば、中央を圧縮する相手を、外からエグるような攻撃が出来ただろう。ただし注意してほしいのは、決して町田に問題があったわけではない。安西以外の他のSBでも同様の現象になっていただろう。
それくらい安西は今の鹿島にとって不可欠な存在だ。
コンパクトな守備を崩す方法
前半の山東のコンパクトな守備を、鹿島はどのように攻略すべきだったのだろうか?
もちろん、結果的に試合には勝ったし、後半に相手のバランスが崩れたように必ずしも前半に無理をして攻める必要は無い。しかし、前半のあの守備陣形をもっと有効に崩す方法はあった。
それは「CBのボールを運ぶ力」だ。鹿島にはそれが足りなかった。
具体的に説明しよう。
まず、先程の図で説明したように山東の11人は自陣にこもって守備をした。対する鹿島は両CBとGK以外の8人が中心となって攻撃をしようとした。
これで崩せるならば問題はないが、8人で10人(相手GK除く)を崩すのはなかなか難しい。
レアンドロのように目の前の相手を外してくれる選手や、安西のようにサイドをぶっちぎれる選手がいれば8vs10でもどうにかなるかもしれないが、この日のメンバーはそのようなメンバーではなかった。
この日の鹿島にはCBの更なる攻撃参加が必要だった。
▼イメージとしてはこういうこと↓
相手の守備陣形がコンパクトにディフェンシブサードに固まっているなら、鹿島のCBは相手が自分にアプローチしてくるまでドリブルでボールを運ばなければいけない。
この日の鹿島のスンヒョンと犬飼は、ボールを保持する時間が短く、低い位置(ハーフウェイラインあたり)で素早く捌いてしまっていた。
相手が引いているのにCBが素早くボールを捌いてしまうと、相手はCBにプレッシャーをかける必要がない。「パスの出し先」に狙いを定め、意識を集中しやすくなる。
そうなると、CBからボールを受ける選手は常に相手からプレッシャーを受けた状態でプレーせざるをえない。
犬飼とスンヒョンは、もっと勇気を持ってボールを運び、相手の矢印が自分に向いた瞬間にパスを出す方が良い。相手の矢印が自分に向かないのであれば、そのままゴール前までボールを運んでシュートを打ってしまえばいい。
相手がゴール前にコンパクトな守備陣形を敷いたならば、攻撃をコントロールするのはCBだ。
犬飼はいくらかボールを運ぶ姿勢を見せてくれたが、まだ効果的と呼べるものではなかった。スンヒョンはボールを運ぶプレーがあまり得意ではないようだった。ボールを運ぶ力は、これから2名の課題といえるだろう。
この辺りは、過去の鹿島の選手であれば昌子がもっとも「ボールを運ぶこと」に意識的なCBだった。日本代表を目指す犬飼にはそのレベルを意識してほしい。昌子も成長する過程で何度も失敗していたが、今やボールを運ぶ意識については日本有数のCBとなった選手だ。犬飼も積極的なチャレンジを繰り返してほしい。
三竿の攻撃参加時のリスク管理
またこの試合で目についたもう一つの懸念事項は、三竿の攻撃参加時の鹿島のバランスだった。
前述の通り、鹿島は山東の守備を攻略しきれていなかったため、三竿が攻撃参加する場面が何度も見受けられた。三竿がコーナーフラッグ付近までオーバーラップするようなシーンだ。
この時の鹿島の守備のバランスはかなり悪い。
三竿が上がった時はレオが一応中央に残ってはいるが、三竿が中央に残っている時と比べると、どうしても守備の位置取りが良くない。
攻撃から守備に切り替わった時に、「誰を1番抑えておくべきか」という判断が三竿は抜群なのに対して、レオはややフワッとしたポジションを取っている。
通常はレオが攻めに出て、三竿が後ろに残る形を取っている事が多いが、逆の役割になった時は存外にピンチになっている事が多い。この試合でも何回か見受けられた。
三竿が攻撃参加した時にレオほどのインパクトを残せていない事を考慮しても、レオ⇔三竿の役割が入れ替わった時のシチュエーションについては鹿島の課題だと言えるだろう。
結果的に今の鹿島は「三竿が前線まで攻撃参加しないこと」が、最も鹿島が攻撃を続けられるという状態になっている。
だが、タイミング的に三竿の攻撃参加が必要な時は必ずある。その時にCBとレオが「三竿が後ろにいる時のような配置」を作れれば、鹿島はもうワンランク上のチームになれることだろう。
土居と白崎の貢献度
ややネガティブな課題を書き連ねてしまったが、ポジティブなことも書いておきたい。この試合も目立ったのは土居と白崎の貢献度だった。それを最後に書き記してこのマッチレビューを締めたい。
土居聖真の貢献
まず土居聖真の貢献。
土居聖真はこの試合でもボランチに落ちたり左右に流れたり、相手の中間ポジションに意識的に入ったり、非常に有効な動きをしていた。
土居聖真の素晴らしいところは、それを試合開始から終了まで続けられることだ。
相手DFの立場から考えると、土居のあの動きに90分間ずっと対応していくのは限りなく不可能に近い。前半はきっちり抑えられても、後半に土居が浮いてしまうような場面は必ずある。特に、「DFの役割が不明瞭なスペース」が土居の好物なので、余計に土居が浮く場面は増える。
動きの質が良いこと×動きを止めないこと。
これが今の土居聖真のプレーを支えている。
白崎凌兵の貢献
この試合、どうしてもMVPは伊藤翔になってしまうが、伊藤翔を除けば白崎がMVPだったと思っている。
と、彼の貢献について書こうと思ったが、いや、彼の動きについては別途ブログを立てて書こう。乞うご期待。
MVP
伊藤翔!!!!!!!!サイコー!!!!!!!!
「伊藤翔」と書いて「きゅうせいしゅ」と読みましょう!!!!!!
— ロニー (@ronnie_antlers) May 22, 2019