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クォン・スンテの頭突き未遂を肯定して良いのか?の話

昨日の2018年ACL準決勝水原戦で、クォン・スンテにガッカリしたシーンがあった。予め断っておくが、私はクォン・スンテという選手が大好きだ。大好きで、JリーグNo.1、東アジアNo.1のGKと思ってる。そんな選手だからこそ、敢えてこのプレーを記事化したい。

例の「蹴り未遂・頭突き未遂」である。YouTubeで現地の映像をUPしてくれた方がいるので引用させていただこう。

問題のシーン

鹿島がゴール前でピンチを招いたシーンだ。水原の11番(鹿島が終始苦しめられた選手)がスンテの進路を妨害した後に、スンテがヒートアップする。

まず蹴りを入れる素振りを見せて、反応してきた11番に更に頭突きの素振りを見せる。どちらも相手にヒットしたようには見えないが、水原の選手が猛抗議するのも理解できるプレーだ。

鹿島サポーターの中では、逆転に向けた奮発材料として好意的に受け止められている意見も多いように感じたが、私はそうは感じなかった。

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スンテは何を意図していたのか

この時の鹿島のシチュエーションは、「1st legのホームで前半1-2のビハインドの状況」だ。決して「2nd leg後半45分、5-0で勝っていた」という訳ではない。なぜスンテはこのリスクのある行動を取ったのか。日刊スポーツの記事でスンテはこのように話したと書いてある。

「やってはいけないことだと分かっていたが、スイッチが必要だと思った」

https://www.nikkansports.com/soccer/news/201810040000109.html

どうやら「怒りが抑えきれずに」あの行動を取ったわけではないということらしい。内田も

「スンテのおかげでスイッチが入った。あれでチームが『やらなきゃ』って」

このように語っており、一見「悪くないプレーだった」という印象を与えるが、そんなことはないはずだ。ビハインドの状況でのあのプレーはリスクが大きすぎたのではないか。

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キック未遂・頭突き未遂はイエローが妥当なのか

私はこれを見た時、「あ~イエローで済んで良かったな」と思った。

このジャッジの妥当性を検証するために、まず、日本サッカー協会が公開してる競技規則を確認してみよう。

退場となる反則(一部抜粋)

◦ 著しく不正なプレーを犯す。
◦ 乱暴な行為を犯す。
◦ 攻撃的な、侮辱的な、または下品な発言や身振りをする。

スンテの行為は、これらに抵触する可能性が高い。

また、PKに該当する可能性については

ファウルと不正行為(一部抜粋)

◦ ける、またはけろうとする。

こちらにも抵触する可能性があったようだ。

つまり、1-2のビハインドの状況で「退場」あるいは「PK」となる可能性のある行動を取ってしまったのだ。これは見返りに対するリスクがあまりに大きすぎる行為で、私は到底肯定できない。もちろん私は「フェアプレー第一」というような考えではない。これが鹿島が勝つために取られた最も有効な行動であれば、他のチームに批判されようとも肯定したい。比較対象として、記憶に新しい2017年1月1日の天皇杯決勝。小笠原が中村憲剛にキレてゲームを中断させたシーンがある。

 

スンテが今回やりたかったことは、この小笠原と同じで、「ピリッとしないチームに気持ちを伝える。流れを変える」ということだろう。しかし、小笠原は「ルールに抵触しないやり方で表現」し、スンテは「ルールに抵触するやり方で表現」してしまった。この2つのプレー、狙いは同じでもアウトプットに大きな違いがある。

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フェアプレーは時として、最も合理的な判断に繋がる

このスンテのプレーは、いわゆるフェアプレーではなかっただろう。私は、「ビハインドの状況下ではフェアプレーが最も合理的」という意見を持っている。

サッカーはランニングタイムで行われるスポーツだ。つまり負けているチームにとって「時間」を失うことは、負けに近づくことにも結びつく。ではスンテのプレーはどうだったか。蹴る振りをして、頭突きをする振りをして、相手はどのような行動をとると予想できるだろうか?あるいは審判はどのようなジャッジをすると予想できるだろうか?

相手はもちろん痛がって時間を使う。頭突き未遂をしたスンテを退場させたいので当然だ。

審判はプレーを止める。スンテのプレーがルールに抵触している以上、見過ごすわけにはいかない。

これらを考慮した上で、負けているチームがとるべき行為は「相手を無視してプレーを続ける(=フェアプレー)」だと考える。サッカーがランニングタイムではないスポーツなら話は違うが、ランニングタイムである以上、相手に時間を使わせる可能性のあるプレーは極力避けるべきだ。それが最も合理的であり、勝利に近い選択だ。

ましてや退場の可能性もあるプレーであれば、なおさら選択するべきではない。前半終了間際のあの瞬間に、鹿島のACL制覇の夢が消えかかってしまうかもしれなかったのだ。

私はスンテが大好きで、プレーの姿勢もキックも判断も性格も笑顔も大好きだ。これからも鹿島の守護神として君臨してもらいたいからこそ、敢えて厳しく言おう。

あの行為は猛省してほしいと。

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