2019年Jリーグ第10節、鹿島アントラーズVS清水エスパルス戦。マッチレビュー。
スタメン
鹿島のスターティングメンバーは以下の通り。
GK クォン・スンテ
DF 永木亮太 犬飼智也 町田浩樹 安西幸輝
MF 三竿健斗 レオシルバ 白崎凌兵 レアンドロ
FW 土居聖真 伊藤翔
本当はGW期間は勉強のためにブログ更新を控えようと思っていたが、(戦術的に)どうしても書いておいた方が良さそうだと思ったのでブログを書いている。ブログ更新の制限時間は30分一本勝負。
いつもより文字数は少なくなるかも知れないがご了承いただきたい。私は今物凄い勢いで勝利の美酒を味わいながらタイピングしている。文字数は少なくても熱量は本気だ。頑張る。
さてこの試合、どうなることかと思っていた。前節があまりにもショッキングな負け方だったので、この試合も引きずってしまうのではないかと。そう思っていた。
相手は清水エスパルス。鹿島と配置もポジションも近いので、与しやすいだろうなとは思っていた。与しやすいだけに、ここにも負けるようだと鹿島は相当深刻だ。そしてリーグ優勝を狙うならば10試合を終えた時点での勝点14はありえない(勝点17でも全然足りないが……)。
この試合の重要ポイントを振り返ろう。
あまりに大きい誤審
まずこの試合におけるターニングポイントとして、誤審に触れないわけにはいかないだろう。
中村のFKはゴールだった。もうこれは言い争う余地もないだろう。審判のミスだ。審判のミスだが、ボールスピードもあり、難しいジャッジであったことも確かだと思う。審判はカメラのリプレイを見ながらレフェリングしているわけではない。
この件について言える唯一のことは、「Jリーグにはゴールラインテクノロジーの導入してほしいな」という、それだけだ。あれが失点だったならば、ゲームの流れは大きく大きく変わっていたことだろう。
鹿島のビルドアップの進化
今回私がブログを書こうと思った理由は鹿島のビルドアップの進化を見たからだ。それを今回のブログのメインセンテンスにする。
三竿のCB落ち
この試合では、三竿がCBの間、あるいはDFラインに入ってビルドアップする場面が見られた。これが清水相手には抜群にハマった。
三竿がCB間に落ちる、いわゆるCB落ち=「サリーダ・ラボルピアーナ」は、これまでも何回も見られた形だ。この試合独自のものではない。
※これを「ボランチ落ち」という人もいるが、私は「CB落ち」の方が腑に落ちるので「CB落ち」と言う。
ただ、この日の清水には効いた。鹿島は三竿がCB間に落ちるというただそれだけで、苦労せずにハーフウェイラインまでボールを確実に運ぶことが出来た。
なぜ清水に効いたのか?そのメカニズムを遠回りに説明したい。
土居のボランチ落ち
今日の鹿島が見せたのは、三竿のCB落ちと連動して、土居聖真がボランチの位置まで落ちた。これは今までの鹿島に見られないビルドアップの型だ。
鹿島は4-4-2のフリをして、攻撃時に3-4-3へと可変していた。
分かりにくいかもしれないので、図で確認いただく。
▼これが基本形(赤が鹿島)
▼これが鹿島のビルドアップ時に見られた型(だいたいのイメージ)
三竿が落ちて土居も落ちて、それと連動してSBとSHが一列上がって3-4-3!みたいな形のビルドアップが見られた。
これは選手たちの判断でこうなっていたのか、仕込んでいたのかは私には分からない。分からないが、三竿のCB落ちと土居のボランチ落ちは連動していたように見えたので、仕込んでいた説が濃厚。
そしてこれを仕込んでいるならば、土居聖真のトップ下スタメン起用は合理的だ。この仕事は土居か中村充孝にしか出来ない。
このビルドアップの型は機能した。なぜ機能したのか?
そのポイントは
1.鹿島CB・三竿・GKで作るビルドアップの数的優位
2.三竿のボール捌きとスンテの判断
3.ブロックを崩したくない清水のジレンマ
これらによって機能したと思う。一つずつ説明しよう。
鹿島CB・三竿・GKで作るビルドアップの数的優位
まずはビルドアップの数的優位だ。清水は鹿島CB+三竿・スンテのビルドアップに対して、FWの2枚だけで対応しようとした。つまりMFより後ろの選手はプレッシングをかけに来なかった。
広いピッチで4vs2が展開される事になるので、当然プロレベルであれば4枚のボール回し側が上回る。事故が起きない限り、鹿島は後ろから安全にハーフウェイラインまでボールを運ぶ事が出来た。その気になれば相手FWのスタミナを削るべく、もて遊ぶ余裕さえ生まれた。
ビルドアップに一定の課題を持つ鹿島にとって、これは大きかった。
それっぽい配置になった瞬間の写真を取ったのでここに貼っておく↓。
三竿のボール捌きとスンテの判断
鹿島のゲーム支配を加速させたのが三竿のボールさばきとスンテの判断だった。
まずは三竿。ビルドアップの中心人物となった三竿は、ビルドアップのクオリティをまた一段上げた姿を見せた。1対1で絶対的に勝てる自信から来る落ち着きなのかもしれない。そのボールさばきとポジショニングは、鹿島に安定をもたらした。
また三竿のインテリジェンスも光った。「今日はこの型でビルドアップが上手くいく」と判断した三竿は、適宜CB間に下りていってビルドアップを助け続けた。しっかり相手を見れている証拠だ。
そしてスンテも同様のインテリジェンスを持ち合わせていた。
ビルドアップが上手くいくので、いつもよりロングキックを避けてゲームメイクをした。ビルドアップで確実にハーフウェイラインまで運べるのだから、ロングボールは蹴らない方が賢い。
スンテも三竿も、言葉を交わさずとも「前半はこれでいこう」と示し合わせたようなプレーぶりだった。
ブロックを崩したくない清水のジレンマ
清水はなぜMF以下の選手がプレッシングに来なかったのか。
三竿参加のビルドアップの数的優位を消すために、清水のボランチが1つ前に出れば解決したかもしれない。
→しかし、そうするとボランチの位置に落ちてくる土居は誰が見る?
→CBが前に出る?すると最終ラインは鹿島の疑似3トップと3対3になるが大丈夫か?そもそもそこまで形を崩すと4-4のブロックで守る基本が総崩れになるぞ?
おそらくこんなジレンマだ。清水は自分たちのバランスを崩す事は好まず、4-4のブロックを崩さなかった。鹿島を自陣に引き入れることを選択した。
清水は後半からプレッシングの位置を修正したように見えたが、FC東京のように苛烈なものではなかったので鹿島の選手はやりやすかったのではないだろうか。
おっと、もう時間だ。30分を結構過ぎてしまった。締めなければ。結局30分ではワンセンテンスしか書けない。良いゲームだったので、書きたいことは沢山あったが仕方ない。最後に箇条書きに私の感想を羅列しておく。気になる所があればコメントなりTwitterなりで質問いただければ、可能な範囲でお伝えしたいと思う。
清水戦の気になったポイント
- 「トライアングルの頂点」を作り続けた土居聖真が影のMVP
- 「人が動いた場所に入る」は練習の賜物か
- 質的優位だけではない勝利の要因は嬉しい
- 白崎のインテリジェンスが随所に光る
- レアンドロとレオのコンビネーションえぐい
- セットプレーのゴールは欲しい
- 犬飼-町田-三竿の守備の連携良き
- どんどん良くなる犬飼
- ここからスタート安部裕葵
- 3トップで脅威倍増レアンドロ
MVP
三竿健斗!
ビルドアップの成長、守備のパワー、対人の強さ、攻撃時の動きすぎない位置取り。素晴らしかった。三竿のスケールが去年よりさらに一回り大きくなっているのは間違いない。特に攻撃面の成長は白眉。
イタリアから帰ってきた小笠原がチームを優勝に導いた時のように、1人の復帰でチームに強烈なエネルギーを注入していってほしい。