2019年Jリーグ第19節、ベガルタ仙台VS鹿島アントラーズ。マッチレビュー。
試合結果
4-0
【得点】
16分 セルジーニョ
45分+1 セルジーニョ
67分 白崎 凌兵
75分 土居 聖真
スタメン
鹿島のスターティングメンバーは以下の通り。
GK クォン・スンテ
DF 永木亮太 町田浩樹 犬飼智也 小池裕太
MF 三竿健斗 レオ・シルバ レアンドロ 白崎凌兵
FW 土居聖真 セルジーニョ
ハイライト
見どころ
このゲームは、主力である安部と安西が欧州へ移籍して初めてのゲームだ。
鹿島の攻撃にアクセントをつけてくれていた2人の不在を感じさせないような攻撃を見せてほしい。
「誰が出ても鹿島は鹿島」という名波さんのありがたい言葉を体現するように、内田や優磨が出ていなくても、安西や安部がいなくても、あくまで勝利に拘る姿勢を見せてほしい。
試合レビュー
早速試合を振り返っていこう。
ポジション
▼鹿島を赤紺、仙台を白で表現
ポジションは両チームともに4-4-2。
開始20分で分かった局地戦での優位性
試合開始から20分で、鹿島は多くの局地戦で勝利することに成功した。これを見て私は、「このゲームでは、よほどの事が起きない限り勝てるだろう」というイメージを持つ事が出来た。
これは恐らく、ピッチ上の選手も近い事を感じたのではないだろうか。
鹿島のFWは相手のCBに対してボールをキープ出来るし、鹿島のCBやボランチがマッチアップの相手からボールを奪う事も容易かった。仙台の守備も連動が甘い。
局地戦での優位性から、鹿島の選手には余裕を感じられ、非常に落ち着いた状態で攻撃も守備も構築することが出来た。
そうなれば恐れることは「グループ戦術」でやられないかどうか、という事だけだ。
サッカーというスポーツは、一人一人の選手がマッチアップの相手を上回れば、後はグループ戦術で大きな差をつけられない限りは基本的には試合を優位に運べる。
このゲームは互いのフォーメーションが4-4-2のミラーだったので、その要素は更に強まる。
取りどころを作れない仙台の守り方
鹿島の選手がそれぞれのマッチアップで優位であることを確認できたならば、心配なのは仙台のグループ戦術だ。
しかしこのゲームにおいては心配するほどの事は起きなかった。
むしろ仙台は守備に大きな問題を抱えていた。
仙台の守備時(鹿島の攻撃時)、仙台の選手は守備の基本である「ゴールとボールを結ぶ線上に立ち位置を取る」という事は出来ていたが、コースを限定できていなかった。つまり鹿島の攻撃を誘導する事が全く出来ていなかった。
いわば攻撃のための守備ではなく、守備のための守備。
仙台の守備は「ボールを奪う場所」をイメージ出来ておらず、逆に鹿島はコースを限定されないのでどんどんパスコースを作れる。
鹿島は常にパスコースを2つ~3つ確保しながら攻撃を構築できていた。必然的に、仙台のアプローチは常に1テンポないし2テンポ遅れる。
仙台の守備は「鹿島の選手にボールが渡ってから」というタイミングになる。それは鹿島の攻撃を「予測」出来ないからだ。「予測」が出来ないのは、「コースの限定(誘導)」が出来ていないからだ。
鹿島はいつもよりラクに攻撃を構築出来たことだろう。
三竿・白崎・レオを中心に作る守備の密集
仙台とは逆に、鹿島は「ボールの奪いどころ」をところどころに作り、守備の密集を作ることに成功していた。
その中心は三竿・白崎・レオ。仙台のボール保持者がモタつくやいなや、すぐに密集(数的優位)を作りボールを奪取する。
今年の鹿島は、「1人目のDFが相手の動きを止める⇒2人目が襲いかかる」というボールの奪い方が非常に多い。
恐らく大岩監督が「ボールを狩ること」を具体的にチームに落とし込んでいるのだろう。
特に三竿と白崎の運動量と勘の良さによって、これらの守備は担保されている場面が多い。
セルジーニョの空中戦の上手さ
また、仙台の守り方の課題は他にもあった。
仙台は鹿島のゴールキック時にビルドアップをさせず、スンテにロングボールを蹴らせた。
しかしロングボールを蹴った先で、セルジーニョがCBに空中戦に勝ってくれる場面が多い。だから鹿島は別にビルドアップなんか出来なくても構わなかった。
通常であれば「ロングボールを蹴らせる=CBがエアバトルで優位」はセットで考えなければいけない。仙台はその基本的な設計を見誤っていた。
とはいえ、この現象においては仙台CBが特別悪かったわけではなく、セルジーニョの空中戦の上手さを称えるべきだろう。彼は浮いたボールの処理が本当に上手い。
このゲームに限った事象ではなく、加入以来ずっとなのだが、五分五分の状況ならセルジーニョはマイボールにしてくれる確率が高い。相手のほうが有利な状況でも五分五分まで持っていってくれる。
鹿島はこのゲームでもセルジーニョの空中戦の上手さに助けられた。
仙台SBの「食いつく守備」と土居聖真の動き
仙台のサイドの選手は、マンマーク気味に対面の鹿島の選手の動きについてくるような守備の仕方を見せた。
特に仙台左SBの永戸の、レアンドロへの食いつき方は顕著だった。
レアンドロがボールを受けに少しでも下がれば、そこにすかさず永戸も付いてくる。
一方で仙台の両CBは、永戸の「食いつく動き」に対する連動が甘く、仙台陣地の左サイドには広大なスペースが生まれている事が多かった。
その一連の動きの隙とスペースを逃さなかったのが土居聖真。
鹿島は攻撃時に
- レアンドロが足元で要求する
- 永戸がレアンドロに食いつく
- 土居は永戸が動いたスペースに走る
- 出し手はレアンドロを使わず、シンプルに土居を使う
- 仙台左CB平岡の土居へのリアクションは1テンポ遅れている
この繰り返しで、鹿島は仙台の左サイドを攻略し、試合を優位に運ぶ要因になった。
犬飼の安定感
このゲームでは、犬飼の安定した守備についても触れておく必要があるだろう。
犬飼は地道に毎試合レベルアップをしている選手の一人だ。
ビルドアップの場面ではチャレンジのパスを続けているし、昔に見られた一発で飛び込んでいくような守備も改善されつつある。
このゲームでも馬力のあるハモン・ロペスに対して粘り強い守備を見せてくれた。
ラインの統率や空中戦、味方への鼓舞においても犬飼は良いプレーが続いた。
このゲームを4-0で終わるか4-1で終わるかは大きな違いであったが、犬飼もそこはしっかり理解していたような振る舞いを見せてくれた。
三竿健斗のチャレンジ
このゲームでは、三竿のチャレンジの動きを何度か見ることが出来た。
三竿のチャレンジは端的に言えば「攻撃参加」だ。
これまではレオにある程度攻撃参加を任せ、後ろのスペースを三竿がカバーしている。そんな関係が多かった。
三竿はその関係性からの進化を図ろうとしている。
「レオは攻撃が得意で、三竿は守備が得意なんだからそのままでいいじゃないか」という声が聞こえてきそうだが、それではダメなのだ。
鹿島が連勝を重ねれば相手は対策をしてくるし、レオの攻撃が常に切れ味鋭いとは限らない。レオに駆け上がる体力が無い時だってある。
そうなった時、攻撃に厚みをもたせるのは三竿の仕事だ。
このゲームでは、実力差がある程度見えて余裕があった事も手伝ったか、三竿はいつもよりもチャレンジの回数を増やしていたように見えた。
味方選手を追い越す場面もあったし、サイドからのクロスに自ら飛び込んでいこうという場面もいつもより多く見られた。
ボールを保持する時は、より前を向けるようなターンを意識していた(これに関しては今シーズン継続的に取り組んでいる)。
今回はそれらの攻撃が実を結ぶ場面は無かったが、私は三竿にはこのチャレンジを継続してほしい。
小笠原満男のように「チームを勝たせる選手」は、攻撃も守備も出来なければいけないのだ。
この動きを繰り返していれば、きっと三竿のゴール数も増えていくはずだ。あの身長と体の強さでクロスに飛び込んでいけば、これまでになかった鹿島の武器にもなる。
そうなった時、鹿島の攻撃はもう1ランク上のレベルへ行けるはずだ。
MVP
セルジーニョ!!
残念ながら4試合連続小池の受賞ならず。
このゲームで見せたセルジーニョの「身体の強さ・技術の高さ・空中戦の上手さ」は、Jリーグ屈指のレベルの高さだった。