【2018Jリーグ第31節セレッソ大阪戦】試合分析と采配分析

2018年Jリーグ第30節 浦和レッズVS鹿島アントラーズ戦マッチレビュー

スタメン

鹿島のスターティングメンバーは以下の通り。

GK クォンスンテ

DF 小田逸稀 犬飼智也 昌子源 町田浩樹

MF 永木亮太 小笠原満男 久保田和音 田中稔也

FW 山口一真 金森健志

まずはスタメンから。登録のポジションでは上記の形だが、実態としては4-2-3-1だった。金森を1トップとして、トップ下に久保田。左に山口・右に田中。選手の特性に合わせて柔軟にフォーメーションを変えた点は評価に値する。

このゲームでは大きなターンオーバーを行った。この点についても賛成だ。3日後にはクラブの悲願をかけた大一番が待ってる上、来週のミッドウィークにもJリーグが行われる。この2週間の優先度を「ACL決勝>Jリーグ」とし、メンバー構成を考えるのは当然。仮にこのセレッソ戦を落としたとしても、このターンオーバーは批判されるものではない。

このセレッソ戦のスターティングメンバーが、基本的にはそのまま柏レイソル戦のスターティングメンバーとなるだろう。しかし、完全なターンオーバーを行うとはいえ、目の前の試合をすべて勝ちに行くのが鹿島の流儀。メンバーを変えても勝利を目指す姿勢は貫いてほしい。このゲームの出来不出来がACLに与える影響もあるだろう。また、普段出場機会の少ない久保田・田中・小田・山口のプレーぶりには期待だ。優しくも厳しい目で見守ろう。

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試合分析

早速試合を分析していこう。

セレッソ大阪の基本形

セレッソ大阪は4-4-2のフォーメーションを敷いた。特徴的な攻撃を仕掛けてくる相手ではなかったため、鹿島としては比較的与しやすい相手だった。マリノスのようなポジショナルプレーを行うわけでもなく、レッズのように特殊なポジションを敷いてくるわけでもない。

基本的にセレッソはSH・FW・ボランチが短い距離のコンビネーションでバイタルを崩していくスタイルを得意としており、実際にそれで何度かゴールを脅かされた。主に柿谷が得意とするプレーだ。しかし、犬飼・昌子は対面の守備において勝率が高く、ゴールに飛ぶシュートはスンテが見事に処理していたために大きな問題にはならなかった。

コンビネーション以外で顕著だったセレッソの攻撃は、左サイド(鹿島の右サイド)の崩しだった。この攻撃の主な担い手がSHの高木俊幸とSBの丸橋。

高木が内側に絞り、外のレーンを丸橋が使う。シンプルな連携ではあるが、鹿島の右サイド小田と田中が守備においては連携が取れておらず、何度かピンチを招くこととなった。具体的には小田が対面の高木の動きに釣られて空けてしまったスペースを丸橋に使われるというパターンだ。

小田はこの試合でゴールを決め勝利に貢献したが、守備面においては課題を残した。丸橋・高木にやられてしまうようでは、まだ鹿島のスタメンは任せられない。ポテンシャルがある選手だけに、成長に期待をしたい。

また、同サイドのCBを担当した犬飼はよくカバーリング出来ていたように思うが、小田が裏を取られる点についてはコーチングで助けてあげてほしかったところでもある。

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鹿島の小笠原、セレッソのソウザ

このゲームにおける最大の見どころは、小笠原VSソウザだった。

セレッソの攻守の心臓はソウザだ。これは素人目にも明らかなほど、セレッソはソウザへの依存度が高いチームだ。彼を自由にプレーさせると、セレッソ得意のショートパスでのコンビネーションに加えてサイドチェンジ・ロングシュートのバリエーションが増える。

それが分かっていたのだろう。小笠原はソウザへのチェックの意識を途切らせない。ある程度後ろからのゲームコントロールは許容するが、アタッキングサードへの侵入は許さないという小笠原のプレーが続き、ソウザの攻撃が得点に直結するようなことはなかった。小笠原の流石のプレーぶりだった。

鹿島の攻撃時にも厄介な存在になるのはソウザだ。猛犬のようにボールを狩りに来るソウザのプレーは、1対1で相手をするには難しい。しかし、「鹿島の攻撃時におけるソウザの守備」を迷わせる要素が鹿島にはあった。それが久保田和音のプレーだった。

久保田和音の間受け

「鹿島の攻撃時におけるソウザの守備」を迷わせる要素、それが久保田のプレーに隠されていた。

例えばこんなシーン。

永木がボールを持った時にソウザ-丸橋-山下の三角形の間に久保田が位置を取る。ソウザは本来、永木のところにボールを狩りにいきたいところだが、久保田が中途半端な位置にいるので前には行けない。

実際に久保田がボールを受ける。ソウザはチェックに行くがすぐに久保田はボールを右サイドにはたく。

この「中間ポジション(間受け)」の動きによって、ソウザのプレッシャーが鹿島のボランチに向けられることは少なく、比較的自由に小笠原と永木はボールをコントロールできた。もしもセレッソのFWがアトレティコのFWのように猛烈なプレスバックをするならば話は別だが、そうではないために鹿島のボランチは自由だった。

他のシーンも紹介しよう。

町田がボールを持ったシーン。山口の背後に位置を取る久保田。ここでもソウザと山口は久保田の動きが気になってプレーが制限されている。本来矢印が向くべきである永木に対して矢印が向いていないことが分かる。

久保田はゲームを通じてこの動きを繰り返しており、解説の柱谷氏も褒めていたプレーだった。

このプレーを繰り返すというのは、実は想像以上に体力を消耗する。ボールがサイドチェンジするたびに自分も横ズレをしていかなければいけないため、ピッチの横幅をシャトルランし続けるようなイメージだ。その時に、相手の横移動よりも素早く横ズレできた時には、数的優位を生むプレーにもなり得る。

このゲームにおける走行距離で、久保田は全選手中4位だったが、それは「横ズレ」を絶えず繰り返していた証拠だろう。

ただし、久保田も良いプレーばかりだったわけではなく、カウンターの場面でボールを持った際に常に第一選択肢が「パス」であった点は課題だ。例えば後半のショートカウンターで2VS2 の場面。右サイドで ボールを受けた久保田がゴール前の金森へのラストパスを失敗したシーン。

パスを失敗したことが問題なのではなく、初めからパスしか考えていなかった点が問題だ。相手DFとGKの対応を楽にさせてしまった。攻撃やパスを特徴とする選手ならば、「相手を迷わせる」ことは必要な要素だ。

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躍動した若手たち

久保田のプレーを細かく紹介してしまったので、他の若手選手のプレーも紹介しよう。

田中稔也の独特のリズム

個人的に、このゲームに出場した若手の中で最も将来の可能性を感じたのは田中稔也だった。機を見て相手の間をドリブルで入っていくプレー。独特のリズムで相手の逆を突くプレーは、今の鹿島の選手には無いものだ。本山雅志のプレーを彷彿とさせるようなリズムとも言える。久保田との短いパス交換で相手を崩すプレーは、鹿島の未来を感じさせてくれた。このようなプレーを得意とする杉本太郎とも共演させてみたい存在だ。

田中稔也の課題はフィジカルだろう。いや、正確にはフィジカルは強くなくてもいいのだが、ドリブル突破していく間に身体のバランスが崩れてしまう点は非常に勿体ない。ムキムキになる必要はないが、最後までプレーをやり抜けるバランス感覚を鍛えてほしいと思う。

シュート連発山口一真

山口は実に10本ものシュートを打った。この積極性は評価したい。シュートセンスの高さはチームメイトの優磨も認めるところなので、これからもシュートをガンガン打ってほしい。身近なところでは、柏のクリスチアーノのプレーなども参考にすると良いのではないだろうか。

山口の課題は、「自分の右側にボールを置いてしまう」という点だ。右足でボールを蹴りたいのは分かるが、ほとんどすべてのプレーで「右側にボールを持ち替えてから」アクションが始まっている。相手は山口の右足側だけケアすればオッケーなので、自分のシュートコースやパスコースを自分で消していることになる。

以前の西大伍に関するコラムで書いたが、ボールは常に身体の正面に置いてプレーしてほしい。プレーのスピードがグンと上がるはずだ。チームメイトでは、小笠原満男がこの「基本」を最も忠実に実現している選手なので、彼が健在のうちに勉強してほしい。

左サイドバック町田

左サイドバック町田も、オプションとしてはアリだと感じた。サイドバックが空中戦に強いというのは大きなメリットであることは山本修斗が証明してくれている。単に守備面で貢献できるだけでなく、右SBが西や内田だったら、逆サイドのサイドバックに高性能のクロスが来る場面は容易に想像できる。そこでも左SB町田の高さは武器になるだろう。また、昌子が町田の裏のスペースをカバーリングした際、昌子のスペースを埋める動きもスムーズだった。

年齢的にも山本修斗をこれまでのように酷使するのは難しく、今シーズンのように怪我人続出でスクランブルになった際は、このオプションがチームに大きなメリットをもたらしてくれるかもしれない。

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采配はどうだった?

田中→安西

良い交代だった。これはセレッソのストロングポイントとして機能していた左サイドの丸橋を抑える目的だったことが明白であった。走力に自信のある安西はうってつけだろう。より勝利の確率を高めることを考えれば、もう少し早く手を打ってもよかったかもしれない。

山口→土居

これも良い交代だった。セレッソは間延びしまくっていたため、MFとDFラインの間でボールを受けるのが得意な土居への交代は、相手を混乱させるには適任だろう。マイボールの時間を長くする意味でも土居はピッタリの特性を持った選手だ。

久保田→三竿健斗

これはほとんど時間稼ぎの意味しか持たない交代ではあったが、良い交代だった。万が一のピンチの芽を摘むならば三竿健斗は適任だ。

この試合ではスタメン選定から交代まで、大岩監督は素晴らしい采配を振るった。

MVP

小笠原とクォン・スンテ!

スンテは今日もビッグセーブで無失点に大きく貢献してくれた。小笠原は終始ゲームをコントロールし、若いチームを牽引してくれた。パス本数においてもチームトップを記録し、相手の山口・ソウザをも上回った。このプレークオリティが小笠原満男だ。

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