2019年Jリーグ第17節、鹿島アントラーズVSサンフレッチェ広島。マッチレビュー。
試合結果
2-2
【得点】
1分 レアンドロ
27分 柏 好文
74分 町田 浩樹
90分+4 柏 好文
スタメン
鹿島のスターティングメンバーは以下の通り。
GK クォン・スンテ
DF 永木亮太 町田浩樹 犬飼智也 小池裕太
MF 三竿健斗 レオ・シルバ レアンドロ 山口一真
FW 土居聖真 伊藤翔
見どころ
またサンフレッチェ広島との試合だ。まるでタイムリープしているかのような感覚に陥る。3連戦の3戦目。
ACLは勝ち抜けたとはいえ、鹿島としては薄氷の勝利だった。鹿島が野戦病棟の状態とはいえ、広島との実力差はほとんどないと言って良いだろう。
前日にFC東京が勝利していたことを踏まえると、このゲームは必ず勝利を収めたい。彼らに食らいついていかないと、今シーズンの優勝はあり得ない。
どんなに無様なゲームでもいいから、勝点3が欲しいゲームだ。
試合レビュー
早速試合を振り返っていこう。
フォーメーション
まず、念の為両チームのフォーメーションを確認しておこう。
▼鹿島を赤黒、広島を白で表現
鹿島は4-4-2、広島は3-4-2-1だった。この辺りは前の2試合と変わりないので割愛する。
ハイネルのポジションのズレを突いた立ち上がり
鹿島は良い立ち上がりを見せた。
鹿島が突いたのは広島の右WBハイネルと右CB野上の中間ポジション。この2名は立ち上がりに距離感が悪く、鹿島は山口や土居が「ハイネルの裏、野上の前」に空いたスペースを有効に使い、広島ゴールに迫った。
鹿島の先制点も、その流れから生むことが出来た。
狙いがハマった20分まで
鹿島としては、試合開始20分~25分くらいまでは狙いがハマっていた。守備がしっかり機能していた。
図解するとこんな感じ↓
これは左サイドで示しているが、右サイドでも同様に、プレッシングから守備の連動を行う事が出来ていた。
- 狙うのは広島の右CBor左CBに入った瞬間
- ボールが入ったら対面の鹿島SHがプレス
- SHがプレスに入ると、同サイドのSBが広島のWBを見る
- SBが1列上がると、SBの裏を広島シャドーに狙われるので、ボランチが埋める
おおよそこの流れで相手をきっちり捕まえる事が出来ており、大きく崩される場面は少なかった。
これは事前にプランニングしていたものだろう。鹿島は良い立ち上がりをした。
町田のビルドアップを狙う川辺駿の守備
しかし広島の川辺駿の守備によって少しずつ流れは変わっていく。
川辺駿が狙ったのは町田のビルドアップ。
町田がボールを持つと、ハイネルが小池に付いて来ている事を確認しながらプレッシャーをかけた。
町田はプレッシャーを受けると犬飼への横パスか、スンテへのバックパスに逃げてしまう。
このゲームではスンテのミドルパス~ロングパスの精度が乱れており、川辺が町田にプレスをかけると高確率で鹿島はボールを失った。
この鹿島のボールロストの仕方を見るやいなや広島は「このパターンだ」と言わんばかりに、鹿島CBにプレスをかけ続けてくる。
このプレッシングをきっかけに広島はチーム全体を押し上げる事に成功し、ジリジリと鹿島ゴールに迫っていける事になる。
犬飼サイドでも同様のプレッシング(広島・森島のプレス)は起きていたが、犬飼はボランチを使ったり永木を使ったり、対角線のロングボールを蹴ったりして相手のプレスをかいくぐろうと試みた。町田には残念ながらそのような工夫は見られなかった。
町田には、相手を見ての状況判断を向上してもらいたい。
川辺とハイネルがプレスに来ているならば、山口は野上と1vs1の状況になっているはずだし、そこに伊藤翔を絡めれば相手最終ラインで1vs1や2vs2の状況が作れるはずだ。FWや山口がボールを収められなくても、前掛かりになっている相手の中盤には必ずスペースが空くので、そこを利用してこぼれ球を回収できる。
下手にスンテに下げるのではなく、相手の矢印が自分に向いているうちにロングボールを蹴ってしまえば良いのだ。スンテにバックパスをしている間に相手は陣形を整えてしまう。
CBである自分にプレスが来ている時は、相手の中盤のスペースか相手の最終ラインは鹿島にとって有利な状況になっている事が多い。そこを突けるようにならなければ、鹿島の攻撃は始まらない。
勿論、小池とパス交換をして更に相手を食いつかせた後にロングボールや対角線のボールを蹴れれば最高だが、まずは相手の状況を見て攻撃の選択をするところから始めてほしい。
今日のビルドアップのレベルでは、J1を優勝することなど出来ない。
軽微なコミュニケーションのズレから生まれた失点
ゲームは鹿島ペースから、広島シャドーの鹿島CBへのプレッシングによって徐々に広島ペースへと変わっていった。
そんな中で、鹿島としては軽微なコミュニケーションミスから失点を与えてしまった。
これも図解しよう↓
この失点は本当に軽微なコミュニケーションミスだった。
- 三竿が中央に走る川辺について「(おそらく小池に)川辺を捕まえろ」と指示する
- 小池は川辺を捕まえに行く。(空いた左サイドのスペースは町田に入れ替わって埋めてほしい)
- 小池が本来のポジションにいなくなるので、左サイドにぽっかりスペースが空く
- 一方、左SHの山口は絞っており、相手のボランチを見ている(その相手は三竿が見ているつもりの選手)
- 町田は左サイドのスペースを山口に埋めてほしい
- 結局誰も左サイドのスペースを埋められず、ハイネルはドフリー
このように、プレーに関わった三竿・小池・山口・町田がそれぞれが異なった「守備の絵」を描いてしまっており、それをコミュニケーションで解決出来ていなかった。
小池は川辺を町田に託せば良かったし、町田は小池が動いてしまったなら自分が左サイドを埋めれば良かったし、山口も気を利かせて小池が動いた瞬間にハイネルを見ればよかった。
セオリーとしては小池が動くべきではなかったが、小池が動いたとしても失点を回避する策はいくらでもあった。
これはサッカーの能力の問題ではなくコミュニケーションの問題なので、次からすぐにでも解消出来る。
だからこそ、このレベルのミスは鹿島としては無くしていきたい。普段試合に出ていないメンバーがいるからといって、許されるレベルのミスではない。
勝利にこだわれないゲームマネジメント
このゲームの1番の問題はここだった。
1点リードの後半ラスト10分で、時間稼ぎのチャンスをふいにする場面が散見された。
もっと狡猾に、無様でもいいから勝点3にしがみつく姿を見せてほしい。それが鹿島アントラーズのアイデンティティだ。
遠藤や永木あたりには、リーダーシップを取ってピッチ内での意思の統一を見せてほしかった。「ゲームを殺して勝ち切る」という意思統一だ。
そこをこだわれないから、ロスタイムのラスト1分や2分がアクチュアルプレーイングタイムとして残ってしまう。
このゲームではその時間に同点弾が生まれてしまった。
疲労の見えた土居聖真
このゲームを上手く運べなかった理由には土居聖真の疲労もあった。土居聖真は今の鹿島の生命線であり、彼が機能しなくなると鹿島は呼吸が苦しくなる。
恐らくコンディションはかなり悪かったものと見える。
いつもの土居聖真ではなかった。
鹿島がビルドアップで苦しんだのも、「土居のボランチ落ち」など、いつものプレーを見せられなかった点にもあるだろう。
高レベルのプレーを見せた小池
一方、このゲームで今シーズン2試合目の出場となる小池は素晴らしいプレーを見せた。
私が見る限り、試合を通して失点のシーン以外はほとんどミスをしていないし(SBでこれは本当に凄いこと!!)、対人の強さも見せてくれた。1点を救う間一髪のクリアも見せた。
そして2点目のキャノン砲は鹿島には無かった新たな武器になるだろう。
前半に見せたシュートもしっかりミートしており、インステップのミートが上手い選手であることをたった2振りで証明した。
それだけに1失点目の対応は勿体なかった。(失点は小池だけの問題ではないが)軽微なミスだったので、修正にはそこまで時間はかからないだろう。町田や三竿と同じ守備のイメージを共有出来るようになれば、鹿島の左SBは自ずと彼のポジションになるだろう。
安西が復帰したとしても安西を右SBで使いたいと思いたくなるほどだ。
そして小池の途中交代に関して。ブエノを投入した事は素晴らしい采配だったと思うが、交代相手が小池である必要は無かった。このゲームにおいてはウィークポイントとなってしまっていた町田をそのまま替えれば良かったはずだ。
また、もしこのゲームの左SHが白崎だったなら、小池は更に強烈なインパクトを残し、鹿島は左サイドをかなり制圧出来ていたかもしれない。
パトリック絶対潰すマン
この試合でのブエノのパフォーマンスは光明だった。怪我明けにもかかわらず、持ち前の運動神経とフィジカルで見せ場を作った。
私は前回のブログで「パトリックを1vs1で止められるDFは鹿島にはいない」と書いてしまったが、早速訂正したい。ブエノのスピードとフィジカルならパトリックを潰せる。ごめんよブエノ。
ロスタイムのスライディング2連発は金が取れるディフェンスだった。
パトリック投入と見るやいなや、ブエノ投入の判断をした大岩監督の「準備」は非常に良かったと思う(繰り返すが、交代相手は小池が最適ではなかったが……)。
これからはブエノの起用機会も多くなるのではないだろうか。
MIP
小池裕太!理由は書いたとおり。
磐田戦は死んでも勝ちたい。