2019年天皇杯、鹿島アントラーズVS北陸大学。マッチレビュー。
試合結果
3-1
【得点】
4分 セルジーニョ
10分 山口一真
14分 金森健志
71分高橋大樹
スタメン
鹿島のスターティングメンバーは以下の通り。
GK 曽ヶ端準
DF 小田逸稀 関川郁万 町田浩樹 小池裕太
MF 平戸太貴 名古新太郎 安部裕葵 山口一真
FW 金森健志 セルジーニョ
見どころ
このゲームの見どころは、勝利は勿論のこと、普段出場機会の少ない選手たちがいかにアピールを見せてくれるかだろう。
関川や金森、平戸や名古、小田逸稀に山口、そして安部裕葵もその一人だ。
このゲームを勝つだけではなく、彼らにはレギュラー奪取を期待させるような活躍を見せてほしい。
そんなゲームだ。
ハイライト
試合レビュー
早速試合を振り返っていこう。
フォーメーション
まず、念の為両チームのフォーメーションを確認しておこう。
▼鹿島を赤黒、北陸大を白で表現
互いに4-4-2という形だった。
立ち上がりの北陸大のプレス設定ミス
北陸大は立ち上がりからミスをしてしまう。
それは「プレスをかける位置」の設定ミスだ。
北陸大はプレスをかけ始める位置を「鹿島が自陣に侵入してきた時」に設定した。これは鹿島を知る私からすると痛恨のミスだ。
北陸大が鹿島陣地にプレスに来なければ、鹿島は無条件でハーフウェイラインまでボールを運ぶことができる。相手がこの戦い方を選択してくれると、鹿島のCB・GK陣の課題である「ビルドアップ」の弱点を突かれない。
爆速の韋駄天FWがいて鹿島DFラインの裏を突きたいなら話は別だが、そうではなかったので、北陸大は後半ラスト30分のように勇気を持って高い位置にラインを敷くべきだった。
鹿島が試合を優位に運べた要因
鹿島は前半15分間で3点を奪い、試合を決めることが出来た。
なぜここまで優位に試合を運ぶ事が出来たのだろうか。
それは鹿島の左サイドの攻撃と、北陸大の右サイドの守備に要因があった。
図解しよう。
このゲームでは、このようなシーンが何度も見られた。
北陸大の右SBの選手は対面の「人」に付いてくる習性のある選手だった。山口の些細な動きに付いてくる選手だった。
山口が少し中に絞って受ける動きをすれば、北陸大の右SBの選手はそこに食いついてくる。
小池は山口を囮に使い、遠くで「北陸大の右SBの裏のスペース」に走り込む金森やセルジーニョを使う。
この繰り返しだ。
北陸大にとって痛恨なのは、この守り方と「自陣に入ってくるまでプレスをかけない」という守り方の相性がすこぶる悪かったことだ。
- 北陸大は自陣に鹿島が入ってくるまでプレスをかけないので、CBはハーフウェイラインまでボールを運べる。
- ハーフウェイラインまで運んだら、CBは左SBの小池に預ける(特に難しいボール回しは要求されない)
- 小池の対面のSHは寄せが甘いので小池は前を向ける
- 北陸大の右SBは山口に付いてくるので、山口を囮に金森がスペースを使う
- そのスペースに小池はパスを出す
この繰り返しだ。北陸大の「自陣まで相手を呼び込む」という守備が、「自陣のペナルティエリアの横まで相手を呼び込む」という事に繋がってしまっていたのだ。
鹿島は、「北陸大右SBの裏」を小池がオーバーラップして使ったり、山口がシンプルに仕掛けたり、バリエーションを交えつつ左サイドから相手を蹂躙した。
その攻撃をコントロールしていたのは小池裕太だった。
長島グローリーVS関川郁万
北陸大にとっての誤算は、長島グローリーを(前半は特に)有効に使えなかった点にもあるだろう。
北陸大は190cm87kgの長島に向けてロングボールを放って攻撃の糸口を探るが、関川が競り合いで負けなかった。
年齢・身長・体重の全てで関川より上回る相手だったので、私は「これはちょっと難しいかな」と思っていたが、関川は奮戦し北陸大の攻撃を跳ね返した。関川の跳躍力と「当て感」は凄い。
試合を優位に運ばれるきっかけは小池の交代
鹿島が試合を支配していた前半とうって変わって、後半のラスト30分は北陸大ペースとなった。
そのきっかけは小池から山本への交代にあった。
小池が突き続けていた「北陸大の右SB裏」を、山本への交代以降は有効に使えなくなった。
サッカーというのは時にシンプルなもので、相手陣地の深いところでボールを保持する時間が長ければ長いほど、試合を優位に運べる。ボールを奪われても自分のゴールまでは一番遠い場所だし、コーナーキックを得る機会も増える。
終始「攻め」に出ていた小池に対して、山本は「受け」に回ってしまった。鹿島にとってこの差は大きかった。
20番・深田の躍動
後半が北陸大のペースになった要因は小池の交代だけではない。北陸大の20番、深田の有機的な動きにも理由があった。
深田は鹿島の右サイド(小田のサイド)を、10番東出とのパス交換の中で崩しにかかった。
鹿島は、北陸大のこの2名の連携に、長島のポストプレーを加えた攻撃を抑えきることが出来なかった。
戦えることを証明した選手
このゲームでは、普段出場機会が少ない選手の中で、戦えることを証明した選手が4名いた。※セルジーニョや永木や曽ヶ端はこの枠に入らない。
まずは小池。
彼は広島戦から2試合連続で自身の価値を証明した。このゲームでも再三左サイドから相手を蹂躙し、勝利に大きく貢献した。
次に金森。
金森もこのゲームでは格が違う所を見せた。もっとゴールを奪えただろうが、何度も攻撃の起点になった動きは評価するべきだろう。土居がオーバーワーク気味なので、これから出場機会が少しずつ増えるのではないだろうか。
そして関川。
190cm87kgの長島グローリーに高さ・強さで負けなかったのはポジティブに捉えてよいだろう。彼が長島に負けていたら、このゲームはかなり苦しい展開になっていた。きっちり仕事をしたと言える。
最後は名古。
名古はもしかしたらサイドでの起用機会が増えるかもしれない。ボランチにはレオ・三竿・永木という3枚看板がいるのでチャンスは少ないが、人材難のSHであれば名古は十分勝負できるクオリティを持っている。
MVP
小池裕太。2試合連続のMVP。このゲームも彼が左サイドで優位性を作り続けた事が勝利につながった。