【2018Jリーグ第33節ベガルタ仙台戦試合分析】アジアを制した鹿島の「球際」

2018年Jリーグ第33節 ベガルタ仙台VS鹿島アントラーズ マッチレビュー

スタメン

鹿島のスターティングメンバーは以下の通り。

GK クォンスンテ

DF 西大伍 犬飼智也 昌子源 山本脩斗

MF 永木亮太 レオシルバ 遠藤康 安部裕葵

FW セルジーニョ 鈴木優磨

この試合は代表招集されていた三竿健斗とスンヒョンがお休み。おそらくコンディションの問題などもあるだろう。代表ウィーク明けの試合で代表選手を起用するかについては現場の監督にしか判断できない所なので大岩監督を信じるしかない(スンヒョンはそもそも外国人枠の問題でベンチ入り出来ないが)。

鹿島は10月以降のターンオーバーで結果を残しているため、永木・犬飼でも全く問題ないという判断でもあるだろう。

メンバー構成は、「ベストメンバーから代表選手を抜いた」というのが表現としては近いかもしれない。注目ポイントは怪我明けの優磨と、天皇杯から中2日で先発連戦の西・昌子・犬飼・遠藤・安部・永木あたりのコンディション。仙台の選手の方が状態としては良いというのは容易に想像できる。運動量で上回る相手に、どのように優位性を確保するのか。このあたりは注目したい。

ad

試合分析

早速試合を分析していこう。

ベガルタ仙台の基本形

フォーメーションは3-3-2-2。もう少し具体的に書くと、守備時は5-1-2-2、攻撃時は3-1-4-2に近い形。両ウィングバック(以下WB)が大外のレーンを上がったり下がったりすることで形が変わる。

スタイルはポゼッションを志向するチーム。WBが常に大外のレーンに位置し、中のセンターハーフとアンカーを中心に三角形を作っていく。縦に速い攻撃というよりは、横にボールを動かす中で相手の隙をついていくスタイルだ。

ad
ad

ベガルタ仙台の要注意選手

選手ベースでは、ベガルタ仙台のストロングポイントは2トップ。石原・阿部は派手な選手ではないが、2人とも守備のタスクを怠らないし、ボールの収まりも良い選手だ。阿部は突進力があり、石原は得点感覚に優れる。また、2人ともチームが後ろに引いた時にはボランチに対してプレスバックもする。

鹿島はフォーメーションのかみ合わせ上、この2人に対してCBの2人がそのままマッチアップする場面が増える。簡単にボールを収めさせたり、自由にボールを持たれるようだと、ゲームは不利に進んでしまう。また、ボランチの2人は仙台2トップからのプレスバックには気を付けなければいけない。

ウィングバックへの対応

これまでの鹿島はWBを張るチームへの対応をやや苦手としているチームだった。守備時に相手WBへボールが渡る時、「サイドハーフが行くのか、サイドバックが行くのか」がハッキリしない場面が多く、そこからズレが生まれて崩されるシーンは少なくない。

この試合は、まさにWBを張る仙台との対戦。私は苦戦を予想していたが、そうはならなかった。要因は以下の3つだったと考える。

  1. 鹿島の両サイドハーフの守備時のポジショニングが良かった
  2. 仙台のWBの攻撃時の位置取りがそもそも低かった
  3. 仙台のWBに対して、鹿島のサイドバックは質的優位だった

まず「1」。安部と遠藤の守備時のポジショニングがハッキリしており、また帰陣も速かった。西と山本は相手WBの脅威を感じることなくプレーできたはずだ。安部は今シーズン序盤の試合では、まだ守備時のポジショニングに迷いがあったように思うが、試合を重ねることで大きく成長した。

「2」は仙台の問題だ。仙台のWBは位置取りが低く、鹿島のサイドバックやサイドハーフが最後列にピン止めされるようなことは無かった。山本も西も、位置取りに困る事なく守備を出来た。
※「ピン止め」とは、対面の相手がサイドで高い位置を保持することで、こちらのサイドバックが低い位置から動けないこと。

「3」は説明不要だろう。この試合において、鹿島がサイドを制圧されることは無かった。鹿島自慢のサイドバックに対して優位性を保つには、「異常な何か(スピードやテクニックやフィジカル)」が必要だ。仙台のWBはそうではなかった。

後半に入ると仙台は前に重心をかけ始め、WBの裏のスペースが空きはじめた。そこをレオやセルジーニョや優磨が上手く使って好機を演出した。特に2点目のゴールシーンは、カウンターで仙台の右WBの裏のスペースを抜け目なく使ったレオが生み出した。この辺の嗅覚の鋭さは勝負を分ける。素晴らしいゴールだった。

ad

アジアを制した鹿島の「球際」

この試合で顕著だったのは鹿島の「球際」の勝率だ。ツヴァイカンプともデュエルとも言う。

昌子と石原・ジャーメイン。レオ・永木と奥埜・野津田。山本と関根・蜂須賀。優磨・セルジーニョと大岩・平塚。

多くの「球際」の場面で鹿島が圧勝した。仙台の選手では、板倉だけが鹿島に「球際」で対抗できる唯一の選手だった(それでも後半には疲れからか、何度も優磨とレオに負けていたが)。もしも鹿島が誇る球際最強男の三竿健斗も試合に出ていたら、その構図はより顕著になっただろう。

この試合においては、ハンドの見逃しこそあったものの、球際の争いで正しいレフェリングをした中村主審も称えたい。

球際の強さこそが、この試合で鹿島に流れを引き寄せた大きな要因だろう。これほどの球際の強さは、今シーズン前半の鹿島アントラーズには無かったものだ。決して鹿島は「球際の強い選手を集めた」というチームではない。

この強さは、秋の過密日程を乗り越え、すべてのタイトルを本気で狙ったチームだから身についたもの。韓国や中国の強豪に競り勝つためには、この「強さ」が必要不可欠だ。今年の鹿島の選手たちは、お金では手に入らない宝物を身に付けた。そう思える試合だった。

采配はどうだった?

遠藤→安西

良い交代だった。遠藤は天皇杯にもスタメン出場していたため、この交代は大岩監督の頭の中で既定のものだったのだろう。交代で入った安西は長距離を走って、貴重なチームの2点目をマークした。

安部→レアンドロ

これも良い交代だった。この交代は3点目が入ったことを確認しての交代だった。長期間の怪我明けであるレアンドロを起用するには良いシチュエーションだ。

レアンドロはゴツさが増して軽やかさが無くなっているような気がするが、まぁコンディションはこれからだろう。寒い時期の復帰は難しさもある。来シーズンは全快のレアンドロが見たい。

西→内田

こちらも嬉しい怪我からの復帰。内田の復帰を心待ちにしていたサポーターは多い。3-0というシチュエーションを作ってくれた先発の選手たちに、内田とレアンドロは感謝すべきだろう。残る公式戦はリーグ戦1試合と天皇杯2試合とクラブW杯。これらのゲームを勝ち抜くには内田の力は不可欠だ。

采配総括

大岩監督の采配は、秋以降はかなり落ち着いたものであるように感じる。場数を踏んでタイトルを獲得することで何かを掴んだか。このまま2018年の残り試合も、落ち着いた采配で勝利を掴み取ってほしい。

MVP

昌子源!1点目はFW顔負けの落ち着きを見せてくれた。守備では石原・ジャーメインなどに圧勝し、クオリティの高さを見せつけた。

また、これは私の憶測に過ぎないのだが、昌子の得点後のチームメイトや大岩監督のリアクションを見ると、もしかすると昌子の今冬の欧州移籍はほぼ確定しており、チーム内で共有されているのかもしれない。

昌子が求めるレベルの対戦相手はJリーグには恐らくジョー・ポドルスキ・パトリック程度だろう。昌子は鹿島アントラーズの選手として求められるクオリティを持った選手だが、それはJリーグの対戦相手では満足できない事も意味してしまう。

憶測で多くを語るのはあまり意味が無いのでこの辺で終わりにするが、私は「鹿島の昌子源」を応援できる喜びを忘れずに今年のシーズンを終わりたい。

 

ロニーのつぶやきをチェック!